「借金は整理したいけれど、住宅は手放したくない」と、住宅のために債務整理に踏み出せないという方は意外に多いのではないでしょうか。
個人再生は、住宅ローンを除いた債務が5000万円までの債務者(法人を除く)が、住宅ローンの支払いを維持したまま、その他の債務を大幅に減額させる手続きです。
まさに、借金を減らしたいけど、住宅は残したいという債務者のための制度といえるでしょう。
今回は、個人再生の申立てが、住宅ローンの返済にどのような影響をもたらすのかについて、さまざまなケースから解説していきます。
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個人再生とは?
個人再生とは、債務整理手続きの1つです。自己破産のように財産を手放すことなく、任意整理より債務を減額できることが特徴です。
そして、個人再生の最大のメリットは、住宅ローンを残したまま他の債務を5分の1~10分の1程度まで圧縮できるところにあります。
個人再生は、住宅を守りたいがために自己破産をためらう債務者にとっては救済となる制度です。
しかし、申立件数は自己破産に比べて少なく、裁判所の統計でみても、個人再生は破産の約7分の1程度の件数に止まっています(令和2年司法統計年報概要版 1民事・行政編)。
圧倒的に自己再生の方が件数が多いんですね!
個人再生について詳しくは、下記記事を参考にしてください。
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個人再生と支払い中の住宅ローンの関係について
個人再生とは、住宅ローンの支払を継続したまま他の債務を整理できる、「任意整理」と「自己破産」のいいとこ取りをしたような手続きです。
しかし、その性質上「債権者平等原則」に反する手続きになるため、守るべき規則や提出すべき書類が多く、複雑な制度になっています。
以下で、少々複雑な個人再生手続きと、その中での住宅ローンの特則について解説します。
個人再生では持ち家を手放さなくても良い「住宅ローン特則」が適用される
個人再生手続きを利用する一番のメリットは、持ち家を失わずに済むことです。
個人再生では、圧縮する債務のなかから住宅ローンだけを除外できる「住宅ローン特則」が適用されます。
これは、自宅を失うことだけは避けたいので「自己破産」はできないが、「任意整理」だと債務が十分に減額できないという債務者のための制度ともいえます。
住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用するための条件
住宅資金特別条項(通称:住宅ローン特則)を利用するためには、民事再生法196条以下に規定された以下の要件を満たさなければなりません。
- 住宅貸付債権であること
- 申立人本人名義で、居住するための住宅であること
- 床面積の2分の1以上が居住スペース
- 不動産に当該住宅ローン以外のローンがついていないこと
- 保証会社の代位弁済を受けてから6ヶ月以内であること
「住宅貸付債権」とは、住宅の建設や購入のために組んだ住宅ローンで、その住宅に抵当権が設定されているものをいいます。
個人で借りている通常の住宅ローン、と言うと分かりやすいでしょう。
また、住宅は実際に居住しているもので、事務所や店舗を併設している場合にはだいたい2分の1以上を居住スペースとして使用していなければなりません。つまり、投資のための不動産やアパート経営のためのローンには適用されないということです。
対象となる住宅には、住宅ローン関係以外の担保権(抵当権、根抵当権など)がついていないことが条件となります。
さらに、住宅ローンが保証会社による代位弁済を受けていないこと、もしくは受けてから6ヶ月以内に申し立てなければなりません。
代位弁済とは、借主が何らかの理由で借金の返済ができなくなった時、間に入っている第三者(保証会社等)が、借主に代わって貸主に借金を返済することです。
住宅ローンを何度か滞納すると、保証会社が代位弁済することで、債権者や抵当権者の地位を銀行から引き継ぎます。
個人再生の住宅ローン特則は、その代位弁済が実施されてから6ヶ月以内の申立出なければ使うことができません。(民事再生法第198条2項)
個人再生手続きは申立までに時間がかかるので、代位弁済されてしまう前に弁護士や司法書士に相談するのがベストです。
個人再生で住宅ローン減額は原則不可、4つの方法で負担減
個人再生で住宅ローン債務を減額することは、基本的にはできません。しかし、支払い方法をリスケジュールすることで負担を軽減することができます。
以下で、主なリスケジュール方法4つについて解説します。
期限の利益回復型
滞納により期限の利益を失い、債権者から残金を一括請求されていたとしても、期限の利益を回復して分割払いに戻して支払を継続していく方法です。(民事再生法199条1項1号)
期限の利益とは、支払期日まで支払を待ってもらえる利益のことです。
例えば「12月31日までに10万円返す」と約束する場合、借主は12月31日まで返済しなくて済みます。
住宅ローンを滞納すると、期限の利益を失い、遅延損害金を付した額を一括で支払うよう要求されます。
しかし、過去の未払い分は再生計画の中で返済していくことで、一旦失った期限の利益を回復して住宅ローンの返済を継続していくことができます。
個人再生申立前の未払い元金、利息、遅延損害金 | 再生計画の中で他の債務と一緒に返済 |
期限が未到来の住宅ローン | 支払方法の変更なくそのまま返済 |
最終弁済期延期型
最終弁済期延期型は、住宅ローンの支払期限を住宅ローン締結時に定めた最終弁済日から、最長10年かつ債務者が70歳を超えない範囲まで延長することができます。(民事再生法199条2項)
支払期間を延長することで、毎月の返済負担を軽くすることができます。
ただし、この方法は上記の「期限の利益回復型」では再生計画が認可される見込みがない場合にのみ選択することができ、遅延損害金まで含めた債務の完済が条件となります。
元本猶予型
元本猶予型は、上記の最終弁済期延期型に加えて、再生計画による返済をしている間(3年間)は、利息分のみを返済すればよく、再生計画の債務を完済するまでは元本分の支払いを猶予される方法です。(民事再生法199条3項)。
再生計画の債務完済後に元本分の支払いが再開します。
同意型
同意型は、債権者と交渉し合意することにより、上記3つの型には当てはまらない、より柔軟で自由な支払い方法を選択する方法です(民事再生法199条4項)。
支払期限を10年以上延長してもらうことも交渉により可能になります。
個人再生で住宅ローンのみの手続きも可能
債務が住宅ローンのみでも、「住宅ローン特則」の要件を満たしていれば個人再生手続きを申し立てることができます。
住宅ローン以外に債務がなくても、個人再生を申し立てることで、既に返済が滞って期限の利益を喪失していても回復することができたり、返済期間を最長10年間延長したりすることができるメリットもあるからです。
共有名義の住宅でも手続きが可能
不動産が共有名義になっていても、個人再生手続きを申し立てることは可能です。
住宅ローン特則を適用するためには住宅を所有していることが要件となっていますが、その所有持分に制限はありません。そのため、持分割合が少なくても問題なく手続きできます。
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ペアローン契約中に個人再生をする場合
夫婦が2人ともそれぞれローンを組んで住宅を購入するペアローンは、共働き世帯の増加とともに利用されるようになりました。
ペアローンを組んで不動産を購入している場合、一方が個人再生で住宅ローン特則を利用することはできるのでしょうか。
ペアローンとは?
「ペアローン」とは、共働きの夫婦が1つの住宅購入のために別々に住宅ローンを組むことです。
ペアローンでは、基本的にお互いがお互いの住宅ローンの保証人となります。不動産はローンを組んだ金額の割合による共同所有となり、それぞれのローンに対して不動産全体に抵当権が設定されます。
ペアローンを組むメリットは、夫婦一方だけの名義でローンを組むより、多くの借り入れができることでしょう。また、2人が別々に住宅ローンを組んでいるため、両方の収入が住宅ローン減税を受けることができます。
デメリットとしては、世帯全体の借入額が大きくなりがちで、負担が重くなることや、登記費用などの手続き費用が2倍かかることなどがあげられます。
【ペアローンの例(便宜上フルローンとする)】
土地・建物:4000万円
ローン額 | ローンの種類* | 不動産持分 | 担保権 | |
---|---|---|---|---|
夫 | 3000万円 | 長期固定金利型 | 4分の3 | 不動産全体に抵当権 |
妻 | 1000万円 | 変動金利型 | 4分の1 | 不動産全体に抵当権 |
*ローンの種類は自由に選ぶことができます。
ペアローンは住宅ローン特則を利用できないのが原則
ペアローンは個人再生の住宅ローン特則を利用できないのが原則です。
対象物件に住宅ローン債権者が設定した抵当権以外の担保権があるときには、住宅ローン特則を利用することができないと規定されているからです(民事再生法198条1項ただし書き)。
つまり上記の例でいうと、夫が再生手続きで住宅ローン特則を利用しようとした際、自宅不動産に夫のローンに対する抵当権以外に妻のローンに対する抵当権も設定されているため、利用できないことになります。
夫婦が同時に個人再生を申し立てれば住宅ローン特則の利用が可能
以上のようにペアローンを組んでいる場合、法律上住宅ローン特則を利用することはできません。
しかし、夫婦同時に個人再生を申立てることで住宅ローン特則の利用を許可する運用を取る裁判所もありますので、一度弁護士もしくは自分の住所地を管轄する裁判所に確認してみるとよいでしょう。
ペアローンを返済中でも個人再生したい人は、まずは弁護士等に相談されることをお勧めします。
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アンダーローンと個人再生について
個人再生を検討している方のほとんどは、いわゆるオーバーローンに陥っているでしょう。日本の住宅は購入したとたんに値下がりし、なかなか価値を維持することが難しいからです。
では、住宅ローンの残高よりも住宅価格が高い場合、個人再生手続きにはどのような影響があるのでしょうか。
アンダーローンとは
「アンダーローン」とは、ローン残高より担保となる住宅価格の方が高い状態をいいます。
大抵の不動産は、担保にしている住宅価格よりもローン残高の方が高い「オーバーローン」状態で個人再生手続きを申し立てます。
しかし、アンダーローンの場合は返済総額より住宅価格の方が高くなります。
アンダーローンで個人再生をすると返済金額が多くなる
アンダーローンで個人再生をすると、オーバーローンで申立てた場合より返済金額が高くなります。個人再生手続きには、「清算価値保障原則」というルールがあるからです。
この場合、資産は家の価値から住宅ローン残高を差し引いた額にあたります。そのため、個人再生で返済する総額は住宅ローン残高と家の価値の差額以上でなければなりません。
以下、具体例に沿って解説します。
【アンダーローンの場合】
消費者金融等からの借り入れ総額300万円で個人再生を申立てる場合、
最低返済額は100万円
(借金総額100万円以上500万円以下の場合は最低返済額100万円)
しかし、住宅ローン残高が1000万円で、住宅が1200万円の価値がある場合、
1200万円-1000万円=200万円
この200万円が資産としてカウントされてしまうため、本来100万円の返済でよかったのが200万円返済しなければならなくなります。
オーバーローンの場合:借金300万円を100万円まで圧縮 個人再生により、借金が200万円減
アンダーローンの場合:借金300万円を200万円まで圧縮 個人再生により、借金が100万円減
以上のように、アンダーローンの場合は個人再生手続きを利用するメリットが少ないといわれています。
借金総額 | 最終弁済額 |
---|---|
100万円以上500万円以下 | 100万円 |
500万円以上1500万円以下 | 借金総額の5分の1 |
1500万円以上3000万円以下 | 300万円 |
3000万円以上5000万円未満 | 借金総額の10分の1 |
アンダーローンでも個人再生をした方が良いケース
ただし、資産に計上されてしまう住宅価格と住宅ローン残高の差額が最低弁済額より低い場合には、アンダーローンでも個人再生をする意義があります。
例)住宅価値1030万円 – 住宅ローン残高1000万円=資産価値30万円
住宅ローン以外の借入総額300万円→最低弁済額100万円
※この場合、資産価値より最低弁済額の方が高いので、再生手続きをする意味あり
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個人再生後の住宅ローンについて
個人再生では、債権者の同意を得て債務を基本3年で完済できる金額まで圧縮した「再生計画案」を作成し、それに沿って返済をすすめます。
以下で、再生計画案による返済開始を始めてからの住宅ローンの注意点についてお伝えします。
住宅ローンの新規契約は返済後10年は不可能
再生計画案による最終弁済日から10年経過しないうちは、新しく住宅ローンを契約したり、新規の借り入れをしたりすることはできません。
個人再生は金融事故として信用情報機関に報告され、その記録は10年間消えません。これはいわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。
そして金融機関が融資を行う際には、必ず信用情報機関に照会をかけて調査するため、個人再生をしたことが分かってしまうからです。
通常記録は10年程度で消えますが、個人再生で債権者だった金融機関からは10年以上経過してもローンを組めない可能性があります。
個人再生後返済中に住宅ローンの借り換えは難しい
個人再生手続きを経て再生計画案に従って返済中に、住宅ローンの借り換えを行うことは難しいでしょう。理由は先ほど解説した「ブラックリスト」にあります。
ブラックリストから事故記録が消えるのは、「個人再生手続きが終了してから」10年後です。
つまり、住宅ローン以外の再生債務を3年かけて完済した日を起点として10年経たないと、事故記録は消えません。
そして、借り換えを行う先の金融機関も審査の際当然信用情報機関に照会をかけるため、事故記録が残っているうちは融資が下りるとは考えにくいでしょう。
返済中に滞納が続いた場合は再生計画取り消しの可能性あり
再生計画に基づく返済を1度でも滞納すると、債権者から再生計画取り消しを申し立てられる可能性があります(民事再生法189条1項2号)。
ただし、再生計画取り消しの申し立てができるのは総債務額の10%以上を占める債権者に限ります。
再生計画が取り消されると、債務は減額される前の状態に戻ります。そうなると返済を続けていくことは難しく、結局「牽連破産(けんれんはさん)」となる可能性もあります。
だからこそ個人再生の申し立てには、返済を続けられる資力を証明する書類の提出が義務付けられるのです。
債務整理後の住宅ローン契約については、下記記事も参考にしてください。
個人再生でお悩みの方は弁護士・司法書士事務所へ相談がおすすめ
個人再生の手続きは非常に複雑ですので、手続きをお考えの方は弁護士・司法書士事務所に相談されることをおすすめします。
自分1人では難しい手続きも、弁護士等と一緒に進めていくことで、スムーズに再生手続きを終わらせることができます。
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費用項目 | 費用(消費税込) |
---|---|
着手金 | 22,000円 |
報酬金 | 22,000円 |
減額報酬 | 11% |
過払報酬 | 22% (訴訟の場合27.5%) |
その他諸費用 | 5,500円 |
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個人再生と住宅ローンについて良くある質問
まとめ
個人再生は、自宅を守りたいがために自己破産をためらう債務者のために、住宅ローン以外の債務を大幅に減額できる債務整理手続きです。
他の債務を5分の1程度まで圧縮できる一方、住宅ローンの減額は原則難しく、代わりにリスケジュールするなどして、支払いの負担を軽減させることができます。
個人再生は、本来守られるべき「債権者平等の原則」に反する手続きであるため、提出書類や守るべき規則が細かく定められた複雑な制度になっています。
そのため、個人再生を申立てる際には、弁護士や司法書士に手続きを依頼することが必須です。しかし、個人再生手続きは自己破産に比べて申立件数自体が少ないため、あまり扱ったことのない法律事務所も多くあります。
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