元国税職員さんきゅう倉田です。好きな租税の原則は「中立」です。
ここでも何度も紹介しているが、東大には卒業生と会えるイベントが年に数回ある。
先日のイベントではマッキンゼー出身のOBと会った。
そのOBは上場企業の役員で事業戦略を担当している。部下はそれなりの数がいて、チームで戦略立案などを行っている。
だが、マッキンゼーのメンバーと比べると「全然違う」らしい。
具体的には、「やる気がないやつ、ダメなやつ、変なやつ」がマッキンゼーにはいない。
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▶コンサル業務は楽して儲かる!?
課題を解決するマッキンゼーの業務
コンサルティングと言っても、多様な取り組みがあり、他者からは不明瞭である。それが「何をしているか分からないのに多額の報酬をもらう人間」というイメージに繋がっているのかもしれない。
例えばこんなことをするらしい。
あるメーカーから電子レンジの電磁波を発する部分のコストカットを依頼されたコンサルタント会社は、従業員3人を担当者にし、そのうちの入社2年目のAをリーダーにした。3ヶ月で結果を出さなければいけないが、前任のチームがすでに3ヶ月取り組んで結果を出せなかった事案である。
Aは、まず当該部分の部品点数が100点であることを確認した。そして、一つひとつについてコストカットができないか検証した。同時に依頼主であるメーカーの製造部門の従業員に聞きとりを行う。しかし、現場の人々はコンサルが嫌いである。なかなか質問に答えてくれない。それでも粘り強く接触を続けた。
部品の一つにレアメタルが使われていることが分かった。使用書にはレアメタルの使用量について「過大量」と書かれている。曖昧な表現なので削減できるかもしれない。そこで具体的な使用量を担当者に聞いたが「教えられない」と言う。
▶非協力的な担当者にお願いしたこと
Aはここで諦めなかった。使用量が知りたいわけではなく、減らせる可能性があるのか検証したいのだ。現在の使用量を100とし、70、50、30で試作品を作って欲しいと依頼した。
この要望が受け入れられ、試作品を検証すると、性能はすべて変わらなかった。そこで、報告書とともにコストカットの提案書を自社とメーカーに提出し、これが採用された。
メーカーの製造責任者はどうして自社の製品の不要なコストに気づかなかったのだろうか。一つの可能性として、すでに十分な検証が行われ無駄がないと考えていること。そして、もう一つの可能性として、コストカットをしても自身の評価に影響する経営管理の手法が取られていないことが挙げられる。
無駄があるかどうかも分からないのに、自分の作業時間を削って部品のコストチェックを行う製造担当者はいないだろう。だからコンサルが必要だし、役員はコンサルが好きなのだ。
今回紹介したのは、東大生に人気のいわゆる「外資系コンサル」の事例で、BIG4と呼ばれるコンサルやそれ以外ではない。
世の中にはITコンサルとか農業コンサルなど種々のコンサルティングがあるし、事業規模も様々である。
それらは電子レンジのコストカットのような課題解決とは、課題へのアプローチも解決の方法も従業員の性質も支払われる報酬も彼らが取らなければならないリスクも全く異なるだろう。
外資系コンサルタントはなぜ東大生を惹きつけるのか。みな「コンサルティング」がしたいのだろうか。高額の報酬と厳しい環境に適応した優秀なメンバーの存在が、自己実現に繋がると考えるからではないだろうか。
■編集部より
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