元国税職員さんきゅう倉田です。好きな租税回避は「ダブルアイシリッシュサンドウィッチ」です。
東京大学経済学部の先生はほとんどが東大卒で、稀に自分が学生だった頃の話をしてくれる。
それは40歳のぼくにとっても、20歳前後の同級生にとっても貴重な情報である。
30年前と現在を比較すると東大生の就活事情にも違いがある。
バブル期に、圧倒的な人気企業だったのが日本興業銀行だった。
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▶バブル期の東大生の就職先は
バブル期の文系東大生に人気だった就職先は
東大法学部生に限ると、民間への就職は圧倒的な下位に位置付けられていた。
ほとんどの学生が司法試験を受けるか、官僚を目指しており、キャリアとして弁護士と官僚を同列とし、はるか下方に民間企業があった。
外資の銀行やコンサルタントの採用も存在はしたが、当時は人気がなかった。
50代中盤の元ボストンコンサルティングのおじさんは「人数も少なかったし、就職活動で誰も見てなかった」と言っている。
おじさんはその後独立してコンサルティング会社を設立した。
独立してからいろんなところに顔を出して話を聞いていると、「よし、君のところにお願いしてみようかな」となるそうだ。おじさんは都内の高層マンションに住んでいる。
このような時代に、圧倒的な人気企業だったのが日本興業銀行だった。
▶日本興業銀行が人気だった理由
野村證券や大和証券の収益は素晴らしかったが、コース別採用が無かったため、東大卒もリテール店(企業ではなく消費者個人に対して商品やサービスを売る店舗のこと)に配属されるリスクがあり学生から敬遠された。
コース別採用というのはとても重要である。
例え買い手市場であっても、売り手側の悩みを無視すればいつか痛い目に遭う。
東大生は大学に入っても勉強ばかりしているので、慶應や早稲田の学生と比べると対人スキルが低い。
このことを自覚している東大生は、彼らと同じ土俵で戦うことを好まない。
ある仕事の難しさが5で、慶應生の処理能力が5、東大生の処理能力が10だとしたとき、慶應生も東大生もこの仕事を遂行することができる。
しかし、慶應生の対人スキルが10で、東大生の対人スキルが5であれば、この仕事の成功過程で行われる連携や報告、連絡、相談などにおいて大きな差がつく。
慶應生や東大生が一緒くたにされる環境において、課される仕事の難度は最大で5になるはずである。
なぜならば、それ以上難しい仕事を与えると、できない人間が現れて組織全体に不利益になるからだ。
よって、このような採用方法は東大生に不利に働くと考えられ、想像力のある東大生は採用活動に参加しない。より自分の能力が発揮できるコース別採用を希望するのである。
▶現在、東大生に人気が伸びている企業とは
今や就活偏差値Sクラスの総合商社。昔は不人気だった
バブル期の象徴といえば地価高騰であるが、三井不動産と三菱地所は採用数が少なかったため東大・京大からであっても入社が困難であった。
この2社は今でも人気があるが、三井不動産から内定をもらった文学部の4年生は、就活のさらなる高みを目指すためその2ヶ月後に総合商社にエントリーすると言っていた。
特にやりたい仕事はないが、とにかく上を目指すそうだ。なお、彼は部活に精を出していたため、大学の成績は良くない。
バブル期は「商社冬の時代」で、総合商社の人気は高くなかった。実際、給与水準は野村證券、東京海上、日生に劣後していた。
最近では、楽天が東大卒の採用数を増やしていて、東大生採用数ランキングの上位に入ってきている(就活偏差値ランキングではない)。こうした情報に触れると、不思議に思う。細やかなコース別採用を行っているのだろうか。そうでなければ東大生は能力を発揮できないかもしれない。
それだけでなく、給与が高くないので友人たちと差がついてしまう。
就職活動にあたっては著名なBtoCの企業を良い会社だと認識するバイアスを取り除いて検討しなければならないだろう。
■編集部より
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