漢方専門医が教えるプレ更年期のうちに「整えておいてほしいこと」、3位食事、2位運動。そして1位は納得の | NewsCafe

漢方専門医が教えるプレ更年期のうちに「整えておいてほしいこと」、3位食事、2位運動。そして1位は納得の

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漢方専門医が教えるプレ更年期のうちに「整えておいてほしいこと」、3位食事、2位運動。そして1位は納得の

更年期を上手に乗り越え、その後の50年も健康に幸福に過ごすために「35歳から50歳の間に知っておいてほしいこと」、筑波大学附属病院 総合診療科 臨床教授 加藤士郎先生のお話をお届けします。

前編記事『漢方医療の第一人者は更年期対策を「35歳から始めるべき」と断言する。そんなの無理…と思った人が知っておきたい「深いワケ」』に続く後編です。

女性の更年期には「運動」のほかにも必要なことがたくさんある

棚田が広がる京丹後市の海沿い。高齢者であっても現役で農業を続ける傾向が高く、活動強度が高い。

‐‐前編記事では女性に冷えが多いという話から始まり、その原因としての筋肉不足をご指摘いただきました。更年期の準備はとにかく食事と運動、そして冷えの対策ということですね。

はい。女性には冷えの所見が数多く見られます。「気血」の巡りが悪くなりやすい傾向があります。これは決して年齢のせいだけではなく、筋肉量の不足が大きく関わっています。

しっかりした筋肉があれば、毛細血管や自律神経も筋肉の中を通っていくので、循環がよくなります。逆に筋肉が足りないと、そうした循環がうまくいきません。それを補うのはまず食事と運動です。国際学会に行くと、海外の女性は体格がしっかりしていて、筋肉量もあり、バランスがよいことに気づきます。一方で日本の女性は、食事量そのものが少なくなっている傾向があります。

‐‐BMI20を切る体型を「美しい」とする価値観を広めてしまった責任は、私たちメディア側にもあると感じます。

高齢になってBMIが18〜19程度になると、誤嚥性肺炎などで亡くなるリスクが高まります。若いうちから痩せすぎている状態は、決して良いことではありません。

女性の生理学的な特徴は、女性ホルモン、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌に大きく関わっています。ホルモンがしっかり分泌されるためには、しっかり食べて、しっかり運動することが欠かせません。

体重が少なく体に十分な負荷がかからないと、骨に必要なカルシウムの沈着も進みにくくなります。骨粗しょう症の状態になるということです。こうした障害は、太っているやせているに関わらず筋肉が少ない、脂肪の多い女性に起きやすい傾向があります。

女性の気分の波は読みにくいと言われますが、これはホルモン分泌の変動によるところが大きく、仕方のない面があります。筋肉がしっかりしている人ほど気持ちも安定しやすいと言われます。健康な心は健康な体から生まれるということです。体がしっかりしていないと、気持ちも安定しません。筋肉があると微小循環がよくなり、代謝もよくなり、自信も生まれ、心身のバランスも整いやすくなるのです。

‐‐そのためにはどのような食事をするとよいのでしょうか?

食事については、基本的には日本食を中心とした食生活が良いとされています。肉類も、適度に摂る分には決して悪いわけではありません。こうした基本がおろそかになっているのが、現代の不調の大きな要因だと思います。夜遅くまで起きている生活習慣も、よい影響を与えません。人間は本来、光と闇のリズムに合わせて生きる生き物です。

体が冷えると免疫力が落ち、感染症にかかりやすくなったり、がんのリスクが上がったりします。体が冷えると内臓の動きも悪くなり、便秘や下痢、消化不良などにもつながります。

人間はまず食事が摂れないと生きていけません。漢方には「五臓」という考え方があり、肝・心・脾(胃腸)・肺・腎といった臓器の働きのバランスを重視します。

こんなにあるの!?「冷え性・冷え症」5つのバリエ、きっと全員どれかに当てはまる!

‐‐ひとくちに冷えをいっても、私はそんなに冷えていないかもと思います。どこからが対策すべき冷えなのでしょうか。

「ひえしょう」という言葉自体、実は漢字で2通りの書き方があります。「性」という字を使う軽いレベルのものと、「病だれ」の「症」を使う、体に障害が出ているレベルのものです。手が冷えやすい程度の軽い症状も含めれば、女性の8割程度が該当します。これがいわゆる「軽い意味での冷え性」です。一方で、体に明らかな障害が出ている「冷え症」のレベルになると、全体の3〜4割ほどになります。こちらは注意が必要なタイプです。

冷え性には大きく分けて5つのタイプがあります。

●末端型 

手足の先が冷える、あかぎれができるなど。最も軽いタイプです。

●内臓型(慢性型) 

慢性的な下痢、痩せ、皮膚が乾燥して常に冷たい状態など。本人が自覚していない「無症状の重症」であることも多く、はじめは潰瘍性大腸炎やクローン病が疑われ、最後に重症の冷え性として診断されることもあります。

●上熱下寒型(下半身型) 

足首は冷たいのにおでこは熱い、というタイプです。熱は軽いため上に上がりやすく、下半身の冷えが上に「逃げて」しまっている状態です。更年期の女性に多く見られます。

●感覚型(メンタル型、全身型)

実際には体は冷たくないのに、本人は「寒い、冷たい」と感じているタイプです。真面目な性格の方に多く、過度な負荷がかかっても弱音を吐けず、代わりに「寒い」「冷たい」という感覚として表れることがあります。

●病気による冷え

貧血、リウマチ、甲状腺疾患、心不全など、実際の病気が原因で冷えが起きている場合もあり、これはきちんと治療が必要です。

‐‐びっくりしました、冷えにこんなに細かな分類があるとは知りませんでした。

これは中医学・漢方医学では基本的な考え方です。ただ、こうしたことを丁寧に説明する医師は少ないんですよね。

‐‐私は上熱下寒型に近いのかな。あまり冷えを意識していないのは前述のとおりです。

脈の状態、肩や背中の静脈の張り具合などを見ると、上半身の血流の状態がわかります。たとえば舌の裏の静脈が太く出ている場合は、上半身の血流が悪く、肩こりが起きやすい状態です。ただ、重症になるほど自覚症状がないことも多く、本人が気づいていないケースがよくあります。

いま脈と舌を見たところ、あなたはまさに上半身は熱がこもりやすく、下半身が冷えやすい「上熱下寒型」の傾向がありますね。さらに便秘気味であること、多少の不眠傾向があることなどから、複数のタイプが混在しています。このように、タイプがいくつか混在しているというのもよくあることです。こうした冷えのタイプに応じて、いくつかの代表的な処方があります。

■当帰芍薬散

当帰・芍薬・川芎など、血の巡りを良くし、皮膚への血流を改善する生薬が中心の処方です。むくみやすく、色白でぽっちゃりした冷え性タイプの女性によく使われます。芍薬・川芎には鎮痛作用もあり、女性特有の冷えに伴う痛みに使われることが多いです。

■桂枝茯苓丸 

便秘があまり強くない場合に用いられ、逆に便秘が強い場合は桃核承気湯が選ばれる、という使い分けがあります。

■加味逍遙散 

バランス処方で、10種類ほどの生薬が配合されています。のぼせなど精神的な高ぶりを鎮め、気持ちを落ち着かせる作用があるとされ、月経前緊張症などにもよく使われます。

‐‐いわゆる女性三大処方ですね。

このほか、補うために使われる処方もあります。

■五苓散 

季節性の不調、特に梅雨時期など、余分な「水」が体に溜まりやすい時期の頭痛・肩こり・めまいなどに使われる、水分バランスを整える処方です。

■香蘇散

気分を落ち着かせる作用があり、精神安定剤的に使われる比較的マイルドな処方です。実証(体力がある人)向けとされます。

■十全大補湯・人参養栄湯・補中益気湯 

いずれも人参が主要な生薬として含まれ、体力の回復や記憶力の維持に関わるとされる処方です。補中益気湯は、後の時代に十全大補湯・人参養栄湯を改良する形で作られたとされています。

■苓姜朮甘湯 

手術後の回復期や、慢性的な冷えを伴う下半身の不調に使われることがある処方として紹介されていました。

もともと漢方は「西からやってきた感染症の緊急対策」として生み出された

傷寒論 卷6-9

‐‐漢方というと、女性三大処方か、風邪のときの葛根湯・麻黄湯くらいしか知らずに過ごしてきました。それではもったいないのですね。

漢方には本当にたくさんの引き出しがあります。ただ、それ以前に、まず食事と運動をきちんとやってほしい、というのが一番伝えたいメッセージです。そのうえで、なぜ漢方が奥深いかのお話もしましょう。

漢方の原点は中国医学にあります。日本はその昔中国で編纂された古典に学んで独自の漢方を発展させています。たとえば『傷寒論』『金匱要略』は、後漢の終わり頃、西暦220年頃の成立とされます。当時の中国は人口5000万人ほどの大国でしたが、インフルエンザのような疾患が大流行し、1800万人まで減ってしまったと言われます。

この時代は急性の感染症治療が優先された時代です。一般に漢方は使われている生薬が少ないほどシャープに効きますが、『傷寒論』の処方は使われている生薬の数が比較的少ないのが特徴で、つまり緊急性の高い治療のためのものでした。葛根湯、桂枝湯、麻黄湯などが代表格です。

‐‐そんな必然性があって葛根湯や麻黄湯ができていたのですね!

その後、宋の時代に気血双補剤、体力を回復させる十全大補湯や人参養栄湯が作られ、さらに次の金・元の時代に、これらを改良する形で補中益気湯が作られました。明の時代になると『万病回春』という書物がまとめられ、さまざまな慢性疾患に対応する処方が体系化されました。世界三大発明とされる火薬・羅針盤・紙も、宋〜明の時代に発展しており、それまで木簡に書かれていた医学書が紙に書かれるようになったのもこの頃です。

また、明の時代に中国で「1日3食」の習慣が定着したとされ、これは日本で江戸時代に3食の習慣が定着したのと同様の変化だとされています。漢方薬を食前や食間に服用する習慣も、この頃に定着していったと考えられます。

まずはシルクロードの発展に伴って広がった結核などの感染症に対応する処方が作られ、のちには高齢化、人口増加・老年医学に関わる処方が、それぞれ時代とともに整備されていきました。

‐‐なるほど、そうした時代経過とともに薬が研究されていく経緯をまったく考えたことがありませんでした。

結局のところ、漢方薬は魔法の薬ではありません。まず食事と運動をしっかりやること、そこが一番大事なメッセージです。漢方はあくまで「仕上げ」であって、できるだけ薬に頼らずに済む生活を整えることが基本です。楽をして健康になる方法はありません。健康は努力の結晶です。皆さん、それを忘れがちなんです。

漢方が「とりあえず出しておけば納得してもらえる」というような使われ方をしているケースも多いですが、それは本来の姿ではありません。処方する側にも、症状を丁寧に聞き取り、体質を見極める知識と経験が求められます。

運動、食事のほか、「好きなこと」をする、つまり「絆」「生きがい」も意識を

‐‐先生ご自身は、日々の生活の中で、どんなことがご健康の秘訣なのでしょうか。

好きなことをいろいろやっていることだと思います。刑事ドラマが好きでよく見ますし、コーヒーを淹れるのも好きです。子どもと話したり、仕事をすることも、決して嫌なことではありません。嫌いなものが少ない、というのは大事なことだと思います。人と同じような生活をしてこなかったからかもしれません。

人と同じであろうとすると、どうしても無理が出てきます。人と自分を比べる、という価値観自体が、日本人、特に男性に強く見られる傾向だと思います。男性は口に出さないだけで、実は内心、周囲と自分を比較して気にしていることが多いんです。逆に、そういう男性ほど「おだてる」ことが効果的だったりします。

‐‐ちょっとわかるような気がします。心がけてみます。

働くことが、日本の男性にとってアイデンティティのほぼ唯一の拠り所になりやすい、という面もあると思います。女性は仕事以外にも、家庭や様々な役割を通じて自分の価値を見出しやすい傾向がありますが、男性はその選択肢が限られがちです。

国や制度が何とかしてくれるのを待つのではなく、まず自分でできることをやる、という考え方が大事だと思います。健康のためにも、まずは筋肉と食事、それが基本です。健全な心は健全な体から生まれます。

‐‐「漢方は仕上げであって、まず運動と食事を頑張りましょう」というのが、いちばん大事なメッセージだということがよくわかりました。

そうなんです。文化や生活習慣が乱れてしまったことが根本にあるので、まずそこを立て直すことが一番大事なメッセージです。その上で、漢方のようなものをうまく活用していくと、より効果的だと思います。

お話/加藤士郎先生

筑波大学附属病院 総合診療科 臨床教授、野木病院 副院長。1982年獨協医科大学を卒業、同大学第一内科(現心臓・血管内科)に入局。1984年同大第一内科大学院に入学。1988年同大第一内科大学院卒業、医学博士取得、第一内科助手。1995年同第一内科(現心臓・血管)講師。2004年宇都宮東病院副院長兼任。2009年野木病院副院長、筑波大学非常勤講師、筑波大学附属病院総合診療科に漢方外来開設。2010年筑波大学附属病院臨床教授。先生から/「更年期のほか、西洋医学的治療で症状が改善しない、全身倦怠感・食欲不振・冷え性・頭痛・肩こりなどでお悩みの方は、是非外来においでください」


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