漢方医療の第一人者は更年期対策を「35歳から始めるべき」と断言する。そんなの無理…と思った人が知っておきたい「深いワケ」 | NewsCafe

漢方医療の第一人者は更年期対策を「35歳から始めるべき」と断言する。そんなの無理…と思った人が知っておきたい「深いワケ」

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漢方医療の第一人者は更年期対策を「35歳から始めるべき」と断言する。そんなの無理…と思った人が知っておきたい「深いワケ」

先に開催された抗加齢医学会で、シニア向けの漢方のセッションを聴講しました。とてもわかりやすかったので、さっそくご登壇の先生に「更年期世代への漢方のお話をお聞かせいただけないでしょうか?」とご相談してみたところ、「いいですよ、私の外来には更年期女性もたくさんお見えです」と快諾をいただきました。

当初は「このような不調を感じる人は、まずはこんな漢方からケアをスタートして!」というような、ごく軽いアドバイスをいただいて記事にしたいな、と考えていたのですが……。

ダメ、そんな考えは大甘。違うんです、漢方とは本来は「証」を「観る」ものであって、もっともっと奥深い、人生そのものとコミットするようなお話なんです。

更年期を上手に乗り越え、その後の50年も健康に幸福に過ごすために「35歳から50歳の間に知っておいてほしいこと」、筑波大学附属病院 総合診療科 臨床教授 加藤士郎先生のお話をお届けします。

「更年期対策」の前に気づいてほしい。あなたは「冷えている」自分を知らないまま更年期に入る

‐‐更年期世代におすすめの漢方について、初歩からお話を伺えないかなと思っています。よろしくお願いします。

はい、ちょっと長い話になるけれどがんばってついてきてくださいね。まず最初に、40代や50代で不調を感じ始めた女性に対してお話したいのは「冷え」についてです。

‐‐え、冷えですか……? はい、更年期世代ならばだいたいみんな心当たりがあると思います。

その通り、更年期に限らず、20歳から50歳の女性では、程度の差はあるものの8割が冷え性です。じつは最近男性の間でも軽症の冷え性が増えていて、半数以上に冷えの傾向が見られます。

問題は、多くの方が自分が冷えているという事実に気づいていないことです。そもそも、こんなに冷え性が多いということを世間は知りません。なぜ冷えているのか、どうすればいいのか、というのが今日のお話のいちばんのポイントです。

もうひとつ、女性の更年期は当たり前のように知られていますが、「男性更年期」も深刻な問題です。40~50代ごろから顕在化する問題で、40~60代の男性のおよそ4〜5割は男性更年期症状の自覚があると言われます。これらは別の話に見えて、実は相互に関連している複合的な問題です。

‐‐男性も冷えているというのははじめて聞きました。男女どちらも加齢とともに冷えが増えていくのでしょうか…?

本来はそうなるはずなのですが、現状はそうとも言い切れません。若い人にも冷え性は見られるのです。原因は簡単、「やせすぎているせい」です。筋力が落ちている方が男女とも最近すごく増えているのです。もちろん年齢が上がるほど冷えは増えていく傾向はありますが、それだけでは説明できない部分もあるのです。

‐‐最近はFUS(女性の低体重・低栄養症候群)も危険と言われますが、男性も影響を受けているのですね。

この現象は、メタボリックシンドロームという概念が広まりすぎた功罪でもあります。単純に腹囲が太いことは悪、やせは健康的と誤解している。なぜそうなってしまうかというと、医療が全体を診ていないからです。日本の医療は臓器ごとの専門治療が中心であり、消化器の先生は消化器のことを、婦人科の先生は婦人科のことだけを診ています。

局所的な症状であれば、それでもいいのかもしれません。ただ、全身のバランスを診る必要がある場合は、相談できる医師がいるかどうかが命運を分けてしまいます。というのも、体調を整えるのに一番大事なのは、結局は食事と運動なんです。極めて基本的なことがいい加減になっているから、今のような不調が増えている。これを見抜いて助言できるかどうか。

私は現在、つくば市の筑波メディカルセンター病院と栃木県野木町の野木病院で主に診察を行っていますが、神奈川県の小田原から3時間近くかけて通われる患者さんがいます。これは自慢をしているのではなくて、わざわざ3時間かけて通わねばならないくらいに、統合的に全身を診る医師が少ないのだと思います。

更年期のケアは「35歳」から始めるべきだった。でも、誰もそれを指摘しない

‐‐なるほど、たとえば更年期には婦人科系の臓器だけでなく、皮膚のかゆみや関節痛、ブレインフォグなど全身にトラブルが発生します。

だから更年期だからといって、更年期のケアだけを考えてもダメなんです。更年期は45歳くらいから、55歳、今では60歳くらいまで続くとも言われますが、本当に大事なのはその手前の時期です。35歳から45歳くらいの間にケアを始めること。

しかも、大切なのは「35歳から」意識的に運動習慣を身に着け、体力をつけておくこと。これだけで更年期の症状はかなり軽く済みます。

‐‐いきなり核心です。私たちは運動習慣を身に着けることにとても苦労するのですが、それこそがもっとも重要な予防策であると。

そう。なのですが、現在の日本の状況では、この世代の女性は家事・育児・仕事、場合によっては介護まで重なるいちばん忙しい時期です。なかなか運動まで手が回らないですよね。時間もない、場所もない、費用もかかる。

それもわかるのですが、そこをおろそかにしたまま更年期を迎えると、その先にあるのは「老年期の乱れ」です。女性は筋肉量がもともと少ないので、そのエネルギーバランスが崩れると、老年期の不調につながりやすくなります。

更年期・老年期という区切りにしたがってそれぞれのステージ単独で考えるのではなく、「人間には連続性がある」という前提で考える必要があります。臓器もそれ1つだけではなく、トータルで人間を診る、という視点が大事なんです。

‐‐言われてみれば、閉経したからといって別の体になるわけではなく、その前の積み重ねが体調に反映されています。

でしょう? ただ、こうした医学教育は、これまでの日本ではあまり行われてきませんでした。長寿高齢化や気候の急激な変化などで自律神経が乱れる人が増えてきて、こうした考え方が必要になってきています。医学の側がなかなか追いついていないのが現状です。

以前、産業医の先生がたに漢方の講演をしたことがあります。なぜ産業医という、企業の中に入って健康を担う役割の先生方に私が呼ばれたかというと理由は単純で、働く女性が増えたからです。

そして、働く女性の悩みというのは、簡単に言うと冷え性・月経障害・更年期が中心なんです。これらを総合的に診るためには漢方の話が必要なのですね。

日本は「女性が長生き」というより「男性が早く亡くなる」国と言える

各国の男女の寿命の差 Sex gap in life expectancy, 2023 Global Change Data Lab クリックで拡大

‐‐漢方的な概念を持って全身を診ると、どのように臓器別の診察とは違っていくのでしょうか?

日本と諸外国の大きな違いのひとつに、男女の平均寿命の差があります。日本は先進国の中でも、女性に比べて男性の寿命が際立って短いんです。各国の男女の平均寿命を比較してみると、日本の男性が早く亡くなっていることがよくわかると思います。

私は、これは社会的な要因が大きいと思っています。「ロンジェビティ(longevity)」という言葉をご存じだと思いますが、これが日本の男性には足りていないのだと思います。「会社を辞めたら終わり」というようなイメージを持っている方が多く、豊かに生きるための「生きがい」のようなものを持ちにくい。

‐‐生きがい。定年退職後のお父さんが急におじいちゃんになってしまうのは理由があるということですね。

たとえば「京丹後長寿コホート研究」でも知られる京丹後エリア、百寿者が全国平均の3倍という地域の話をご存じだと思いますが、あの地域の人たちは高血圧や高脂血症、糖尿病を抱えていても寿命が長いんです。

人間が生きるうえでは生きがいというものがとても大事。これは漢方で言う「気」に近いものです。「気・血・水」というときの「気」、これは脳の働き、つまりやる気やモチベーションのことです。モチベーションが高いと自律神経がよく働き、微小循環が良くなり、各臓器の働きも良くなり、免疫やホルモンの状態も良くなります。ここまでをトータルで診るのが漢方の視点です。

‐‐確かに、京丹後の研究で有名な内藤裕二先生が、「絆」や「生きがい」は健康長寿の最重要因子だとおっしゃっていました。

WHOの健康の定義には、身体的・精神的・社会的という3つに加えて、もう一つ「スピリチュアル」という側面があります。「スピリチュアル」というと宗教的なものをイメージされがちですが、そうではなく、もっと簡単に言えば「インスピレーション」のことです。これが日本人には一番身につきにくいと言われています。

「1のインスピレーションと99の努力」という言い方がありますが、日本人は「99の努力さえすれば、インスピレーションが少々弱くてもなんとかなる」という発想になりがちです。アメリカでは逆で、「1のインスピレーションがなければ、99の努力をしても無駄だ」という考え方をします。文化としての物差しが違うんです。

‐‐健康を達成する方法というか、人生の目標みたいなものも違うのでしょうか。達成したい幸福が違う?

そうした民族差のようなものもありますし、日本では核家族化が進んだことも大きな理由だと思っています。都内は住宅価格が高すぎて、3世代4世代での暮らし方は難しくなっています。年配の方から昔ながらの生活の知恵を聞く機会が減ってしまったんです。

たとえば、冷たいものを摂りすぎるのはよくありません。中国では、子どもがアイスクリームを食べるときに一緒にお湯を飲ませるくらい、体を冷やすことを避ける習慣があります。子どもは皮膚も薄いものですぐに冷えてしまうんですね。こうしたことも不調の背景にあると思います。

「ブルーゾーン」という言葉を聞いたことがありますか? 100歳以上の長寿者が著しく多く、慢性疾患の発症率が低い地域の総称で、沖縄・コスタリカ・地中海・サンフランシスコ近郊などが該当します。しかし、こうした地域でさえも食生活の欧米化が進み、変化してきています。沖縄はずいぶん前に国内での長寿1位の座から転落し、現在は女性が16位、男性が43位。生活習慣病の発症率が高い県となりました。

つづき>>>漢方専門医が教えるプレ更年期のうちに「整えておいてほしいこと」、3位食事、2位運動。そして1位は納得の

お話/加藤士郎先生

筑波大学附属病院 総合診療科 臨床教授、野木病院 副院長。1982年獨協医科大学を卒業、同大学第一内科(現心臓・血管内科)に入局。1984年同大第一内科大学院に入学。1988年同大第一内科大学院卒業、医学博士取得、第一内科助手。1995年同第一内科(現心臓・血管)講師。2004年宇都宮東病院副院長兼任。2009年野木病院副院長、筑波大学非常勤講師、筑波大学附属病院総合診療科に漢方外来開設。2010年筑波大学附属病院臨床教授。先生から/「更年期のほか、西洋医学的治療で症状が改善しない、全身倦怠感・食欲不振・冷え性・頭痛・肩こりなどでお悩みの方は、是非外来においでください」


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