日頃から「見た目で評価しない」心がけを。何気ない言葉でもボディイメージに影響を与える可能性がある | NewsCafe

日頃から「見た目で評価しない」心がけを。何気ない言葉でもボディイメージに影響を与える可能性がある

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日頃から「見た目で評価しない」心がけを。何気ない言葉でもボディイメージに影響を与える可能性がある

月経異常、骨密度低下などとの関連が注目されているのが「FUS」。女性の低体重/低栄養症候群(Female Underweight/Undernutrition Syndrome)の略称です。

この健康課題に取り組む研究者のおひとり、順天堂大学 国際教養学部 グローバルヘルスサービス領域准教授・吉澤裕世先生に、特に娘を持つ保護者はこの問題をどのように捉えればいいのか、実際とのように子どもに向き合えばよいのかを詳しく伺います。前編記事『若い女性の「やせ」に潜む健康リスクとは?子どもが正しく自分のボディイメージを捉えるために家庭でできる心がけは』に続く後編です。

「食べすぎじゃない?」という何気ない言葉が、子どものボディイメージに影響することも

なぜ日本の若い女性の間で「やせ志向」が続いているのでしょうか。その背景には、SNSやメディアの影響だけでなく、家庭内での声かけや価値観も関係していると吉澤先生は指摘します。

「私たちの研究では、子ども自身に強いやせ願望がない場合でも、親から『食べすぎじゃない?』『まだ食べるの?』といった体型に関する否定的な声かけを受けている子どもほど、ダイエット行動を行う傾向が見られました。子ども自身は体型に対して問題を感じていなくても、親の何気ない言葉がダイエット行動に影響することもあるのです」

こうした声掛けの背景には、親世代自身が持つ“やせているほうが望ましい”という価値観もあるのではないかと吉澤先生は話します。

「私たち親世代は、細いアイドルやモデルに憧れる文化の中で育ってきました。『細いことがきれい』『やせているほうが魅力的』という価値観に、知らず知らずのうちに影響を受けてきた部分があると思います。そうした感覚は、日常の何気ない言葉や態度を通して、子どもにも伝わっていきます」

また、メディアやSNSで発信される身体イメージも、若い世代の価値観に影響を与えているといいます。

「欧米諸国では、広告やメディアの中で多様な体型の人々が登場する機会も増えてきています。一方、日本では、細い体型が“理想”として扱われる場面も少なくありません。そうした環境の中で、周囲に合わせようとする気持ちや、同調圧力のようなものが働いている可能性もあると感じています」

学校やメディアなど、さまざまな場面で、外見や体型について話題にする文化が続いてきました。もちろん外見への関心そのものが悪いわけではありませんが、「見た目」だけで価値を判断する空気が強くなりすぎると、子どもたちの自己肯定感や健康意識にも影響を与えかねません。

「だからこそ、多様な体型や価値観を認める視点が大切だと思っています。そして、自分の身体を否定するのではなく、自分の身体を大切にできる力を育てていくことも重要だと考えています」

家庭でまず大切にしたい、「見た目で評価しない」という視点。そして言葉で感謝を伝えること

では親は具体的にどのようなことに気をつければいいのでしょうか。先生がまず挙げるのは、「見た目を基準に人を評価する言葉を減らしていくこと」です。

「やせている・太っているに限らず、外見だけで人を評価するような言葉は、できるだけ控えたいと思っています。たとえばテレビを見ながら、『この人太ったわね』と何気なく口にしてしまうことは、誰にでもあるかもしれません。でも、そうした言葉を子どもは意外とよく聞いています。外見に関する言葉が繰り返されることで、『見た目によって評価されるんだ』と感じたり、『やせていないと認められないのでは』と受け取ってしまうこともあります」

その積み重ねが、自己肯定感やボディイメージに影響する可能性があります。大切なのは、完璧を目指すことではなく、「どんな言葉を日常で使っているかな」と少し意識してみることだと思っているそう。

もうひとつ大切なことは、子どもの良いところを見つけて、言葉にして伝えることだと吉澤先生は話します。

「思っているだけでは、なかなか伝わりません。特に思春期の子どもには、『できた・できなかった』だけで評価するのではなく、行動そのものに目を向けて感謝を伝えることが大切だと思っています。たとえば、食後にお皿をキッチンまで運んでくれたら、『ありがとう、助かった』と声をかける。そうした小さな積み重ねが、『自分は認められている』という感覚につながっていきます。その結果として、子ども自身が『こういう生活を大切にしよう』と考えられるようになっていくのだと思います」

また、他者と比較を繰り返さないことも大切だと続けます。

「『誰々と比べてどう』という言葉が続くと、自分の価値を他者との比較で考える習慣につながってしまうことがあります。自分を大切にする感覚は、毎日の関わりの中で少しずつ育まれていくものです。思春期の子どもとのコミュニケーションは難しいことも多いですが、ネガティブな言葉を少し減らし、その代わりに良いところを言葉にして伝えていくことが大切だと思っています。そして、それはお母さんだけではなく、家族みんなで関わっていけるとよいのではないでしょうか」

反抗期の子どもと向き合うために、まず大切にしたいことは

よい親子関係は、子どもの自己肯定感やボディイメージにも影響すると考えられています。しかし、思春期の子どもとの関わりは簡単なものではありません。家庭によって状況はさまざまですが、「会話がうまく続かない」「何を言っても反発される」と悩む保護者も少なくありません。そんなとき、どう向き合えばよいのでしょうか。

「子どもが強く反発しているときは、こちらの言葉が届きにくいこともあります。そういうときは、無理に話を続けようとせず、いったん距離を置いてもよいと思っています」

常に正しい親でいようとしなくていい、そう吉澤先生は話します。

「強い言葉を返してしまいそうだな、と感じたら、その場を少し離れて、気持ちを落ち着かせてから向き合ってください。無理にその場で解決しようとしなくても大丈夫です」

もちろん、伝え方の工夫も大切ですが、それ以上に大事なことがあると思います、と続けます。

「まず大切なのは、お母さん自身が、自分のことも大切にできていることだと思っています。他人からどう見られるかだけでなく、『自分はどうありたいか』を考えながら日々の言葉を選ぶことが大切です。そうした姿勢は、子どもにも自然と伝わっていきます。子育て中は、自分のことを後回しにしてしまうお母さんが本当に多いですよね。
でも、反抗期の子どもに悩みながらも、毎日ごはんを作って、生活を支えている。それだけでも十分頑張っています。まずは、自分自身を少し認めてあげてほしいのです」

お母さん自身が、自分を大切にできること。それが、子どもにとっても安心感や自己肯定感につながっていくのだと思います。何よりまず、自分自身を大切にすることから始めてほしいと思っているそう。

「これらのことを、もっと早く知りたかった」自身の経験から伝えたいこと

吉澤先生がこれらFUSの問題に取り組む背景には、ご自身の経験もあるといいます。

「保健師として地域や生活に根差した健康支援に関わる一方、スポーツ医学を専門に、多くの人が運動に取り組みやすくなる環境づくりについて研究を続けていました。そんな中、やせているにもかかわらず糖尿病などの代謝異常を抱える女性たちと出会ったことが、このテーマに関心を持つきっかけの一つでした。そして、もう一つ大きかったのが、自分自身の骨密度低下、骨粗鬆症の疑いを経験したことです。本当にショックでした」

骨密度を測定した際、若年人平均(YAM値)と比較して低下が見られたことは、フレイル(加齢による心身の衰弱)研究に携わる吉澤先生には大きな衝撃だったようです。一方で、自身の骨の状態を客観的に知ったことは、大きな転機になったといいます。

「長くバレーボールを続けていて、若いころからやせ型の体型でした。当時は、それが健康リスクにつながるかもしれないという視点を持っていませんでした。また、出産や授乳、運動習慣、栄養状態など、骨の健康に関わる様々な要因についても、今ほど情報がある時代ではありませんでした。もし当時、今のような知識を持っていたら、妊娠中、授乳中の食事や運動など、もう少し意識して生活できたかもしれないと思うことがあります」

若いころ、「やせていていいね」と言われることが多かったという吉澤先生。当時は、それが健康リスクにつながるかもしれないという意識はほとんどなかったと振り返ります。

「『やせていていいね』と言われると、それが望ましいことなのだと思ってしまいますよね。私自身も、若いころには将来の骨の健康や転倒リスクについて深く考えることはありませんでした。だからこそ、もっと早い段階で知識を持てていたら違ったかもしれない、と感じることがあります。同じように、自分の体について十分な情報を持たないまま過ごしてしまう女性を減らしたい。それが、今こうした啓発活動を続けている理由の一つです」

その思いは、学校教育への提案にも繋がっています。現在の健康教育では、メタボリックシンドロームなど肥満に関する内容が中心となることが多い一方で、先生はやせや低栄養についても、適切に学べる機会が必要ではないかと考えています。

「大切なのは、肥満かやせかという『見た目の数値』だけで判断することではありません。一人ひとりが、自分にとって健康的で心地よい状態を考えられるようになることだと思っています。そのために、まずは教える側の大人が、やせやボディイメージについて正しい知識と視点を持つことが大切です。そうした土台を、少しずつ社会の中に作っていけたらと思っています」

やせを「きれい」と感じる社会の価値観は、すぐに変わるものではありません。それでも、家庭の中で使う言葉を少し見直していくことが、変化の第一歩になるのではないか、そう吉澤先生は話します。子どもの外見を否定する言葉を減らし、その代わりに、良いところや頑張っていることを言葉にして伝えていくこと。そうした日々の積み重ねが、子どもの自己肯定感やポジティブなボディイメージにもつながっていきます。

「子育て中のお母さんは、自分のことを後回しにしてしまう方が本当に多いと思います。だからこそ、『子どものため』と思って、まずはお母さん自身が自分を大切にしてほしいのです。子どもの反抗に悩みながら、家事や仕事に追われる毎日かもしれません。それでも、自分自身のことも大切にしながら『自分はどうありたいか』を少しずつ考えていくことが大切なのだと思います」

そうした積み重ねが、子ども自身の自己肯定感や、自分の体を大切にする感覚にもつながっていくのではないでしょうか。先生はそう最後をまとめてくださいました。

つづき>>>若い女性の「やせ」に潜む健康リスクとは?子どもが正しく自分のボディイメージを捉えるために家庭でできる心がけは

お話/吉澤裕世先生
保健師として勤務しながら教育学や健康科学を学び、筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。東京女子医科大学看護学部講師、順天堂大学大学院医学研究科健康寿命学講座特任講師などを経て、2024年より順天堂大学国際教養学部グローバルヘルスサービス領域 准教授。女性の健康、ボディイメージ、健康教育、介護予防などをテーマに、ライフコースを通じた健康と環境との関わりについて研究・教育活動を行っている。近年は、若年女性のやせや低栄養、ポジティブボディイメージに関する研究・啓発活動にも取り組む。マイウェルボディ協議会幹事。


《OTONA SALONE》

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