こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。取材でも高齢者にまつわること(介護のほか、終活や相続・遺言など)に関わる機会が増えてきましたが、どこか他人事でした。それがしっかり「自分事」になった途端、驚くほど冷静さを失ってしまったのです。
【アラフィフライターの介護体験記】#19
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▶「認知症?」違和感が確信に変わった
もしかして認知症? 義父が亡くなり10年なのに「もうすぐ100日」と言い張る義母
3年ほど前、脳神経外科にて「認知症」(軽度~中等度)という診断を受けたお義母さん。現在は、我が家の近くにある<サービス付き高齢者向け住宅>(※)(サ高住/食堂付き)で暮らしています。
(※)高齢者に配慮したバリアフリー構造の住宅。生活相談サービスと安否確認が必須で、食堂付きのところもある。入居条件は、「60歳以上の方」もしくは「要介護、要支援認定を受けている60歳未満の方」。認知症や感染症に関する独自の入居条件を追加している施設もある。提供されるサービスの内容は各住宅によって異なるため、必要に応じて訪問介護サービスなどを利用する(自立の方向けと要介護の方向けの住宅で、設備も大きく異なる)。
先日、久しぶりに社会福祉士の方に誘われ「介護者の集い」へ。当たり前のことですが、同じ要介護度や年齢、症状(軽度~中等度の認知症)だったとしても、家族の悩みはまったく異なり、抱える課題はそれぞれなのだなぁとしみじみ感じます。
会の後半、「母を田舎から無理やり連れて来たことで、認知症が進んだ気がする」と話した女性がいました。しばらくは在宅介護をしていたとのことですが、数ヶ月前に転倒して入院。要介護3になったことで、今は近くの特別養護老人ホームに入居しているとか。
「どうせ特養に入るなら、母はあのまま田舎にいたほうが幸せだったかなって、思うときがあるんですよね……。まぁ、今さらなんですけど」
そんな女性の話を、自分と重ねて聞いていた私。(前回の記事でもお話ししましたが)まさに我が家も、遠距離介護を検討していたことがありました。
しかし、田舎に帰るたび「もしかして認知症?」と思う言動が増えてゆき、(冷蔵庫が食材で満杯、腐ったものに気付かない、臭いが分からない、何となく怒りっぽい、忘れっぽい、常に探し物をしているなど)結果的としてお義母さんに田舎の家を引き払い、我が家の近くに来てもらうことになったのです。
中でも、私がお義母さんに抱いた違和感を「確信」だと感じた出来事があります。それは、10年以上前に亡くなったお義父さんの話題が出たときのこと。お義母さんが、「もうすぐお父さんが亡くなって100日だから、『百箇日法要』をしないとね」と言ったのです。
何かの言い間違えか、聞き間違えたと思った夫が「法要なら『十三回忌』だね」と返答すると、お義母さんは「何言ってるの! 『十三回忌』だなんて。お父さんが亡くなって100日よ。100日の法要でしょ!」と急に怒り出し……。
▶実の息子である夫は動揺を隠せない
「100日が過ぎたから肉解禁!」と急にご機嫌。義母の認知症は確定か?
そんな様子に夫は動揺しつつも、「分かった、分かった。じゃあ、法要のことは考えておくから」と言って、ひとまず話題を変えました。それでもお義母さんは、「何なのよ、もう……」としばらくは険しい顔でイライラした状態でしたが、少しすると落ち着きをみせ、「せっかくだから今夜は外食にしようよ。お寿司にする?」とご機嫌に!
さらに、「次はすき焼きにしようか? ほら、(お父さんが亡くなって)100日が過ぎるまでは、お肉を控えてたでしょ。ようやく食べられると思うと、何だか楽しみだわ!」とまで言い出したのです。
その晩、夫と私が話したのは「認知症はほぼ確定だから、ここ(田舎)から引っ越してもらったほうがいい」。さらに、「また今日のような(法事の)話題になったら、もう100日ってことでいい!」ということ。
今お義母さんの中で、“記憶の混乱”が起きていることは確かだろうけど、ちゃんと自分の中で納得したストーリーがあり、しかも「肉が食べたい」って、なんと前向きな……(笑)。
このときは、こんなふうにポジティブに考えられる余裕もあり、とりあえず腹を括って介護に挑もうとしていた夫と私。しかし近距離介護がスタートして早3年、今はポジティブどころかネガティブ思考になってしまうほど、あらゆる問題が山積みになっているのですが……。それはまた、次の機会にお話ししたいと思います。