
「自律神経」って言葉、よく耳にしますよね。実は、“交感神経と副交感神経”の2種類だけではないんです。メンタルヘルスの専門家・吉里恒昭氏によると、“ポリヴェーガル理論”では自律神経を3つに分けて理解するのだそう。
吉里氏がこの3つの自律神経を赤・青・緑の3色で表現し、さらに独自の“ポリ語”を使って、体と心の調子を整える方法をわかりやすく解説した著書では、イライラ、不安、無気力、トラウマなど、さまざまな負の感情からラクになるメソッドが紹介されています。
今回はその中から、“「緑」を活性化”して、「心を安心させる」ためにすぐできる方法をご紹介します。
※本記事は書籍『イライラ、不安、無気力、トラウマ……負の感情がラクになる 「ポリヴェーガル理論」がやさしくわかる本』(吉里恒昭 :著/日本実業出版社 )から一部抜粋・編集したものです
「3つの自律神経」は、どんな働きをする?

赤=交感神経:「動く・活動する」ときに働く神経です。赤が強く働くときは危険に遭遇して「戦う・逃げる」必要があるときです。「アクセル」の神経とも呼ばれ、この神経が活発な状態は、「能動的な状態」ともいわれます。
青=背側迷走神経複合体:「止まる・休む」ときに働く神経です。青が強く働くときは命の危険に遭遇して「体が固まり、シャットダウンする必要がある」ときです。「ブレーキ」の神経とも呼ばれ、この神経が活発な状態は、「受動的な状態」ともいわれます。
緑=腹側迷走神経複合体:「安全な場所にいる・安心だと感じられる」ときに働く神経です。アクセルとブレーキの調整をする「チューニング」の神経とも呼ばれます。
タッチの効用
セルフで行なう緑の活性化の最後に、タッチについてご紹介します。緑の神経は安全や安心を感じているときに反応しているとお伝えしました。これは赤ちゃんが養育者に抱っこされて守られている感覚が原型かもしれません。「抱っこ」──つまり肌と肌が優しく触れ合っている、そこに安全を感じるのでしょう。
相手が緑になるようなタッチをポリ語では「緑の手」と呼び、相手の体が赤や青になるようなタッチを「赤の手」と呼びます。触れると相手の神経の状態がよくわかると思います。 どのような手で触れられると緑になるか、研究してみてください。
神経整体(神経にアプローチする整体)や療育整体(発達障害の子どもたちのために発展した整体)などもタッチを重視しています。 私が病院でセッションをする際に、患者さんご自身で「セルフタッチ」をしてもらうことがあります。自分の体を触りながら話してもらうのです。
すると、赤が反応する話題になるとセルフタッチしていた手が自然と急に速くなったり、逆に青が反応する話題になるとセルフタッチしていた手が止まったり、体から離れたりします。「あ、また止まってましたね」と自身で気づかれて、また自分の体に触れてなでてもらうと、緑の神経が反応し始めることもあります。
このように心療内科では、セルフタッチを大切にしているのです(なお、セルフタッチにご興味のある人は、巻末参考文献で紹介している中川れい子さんの『みんなのセルフタッチング』をお勧めします。私自身も患者さんによく勧めています)。
「触れる」といってもいろんな触れ方があるでしょう。ただそっと手を添えることもあれば、なでなでとさする感じ、手の温もりで温めようと思いながら触る感じ、覆い包む感じ、ぎゅっと握る感じ、揉む感じ、ゆする感じ、などさまざまな触れ方があるでしょう。
あるいは「タッピング」といって、ぽんぽんと軽く叩く感じも触れるに入れてもいいかもしれません。さまざまな触れ方を試してもらいたいです。「気持ちいい」「心地よい」と感じる触れ方があれば、今の自分の体に合っているのでしょう。 セルフタッチにはさまざまなものがありますが、ここでは3つ紹介します。
▶すぐできるセルフタッチ3つ
合掌
これはほとんどの人がやったことがあるタッチではないでしょうか。祈ったり成仏を願うときに行なうポーズですが、ここでは、手と手が触れている感触に意識を向けてやってほしいのです。
左手の温もりを右手で感じられるか、逆に右手の温もりを左手で感じ取れるか、そしてそれが気持ちがいいか。手の位置は胸の前が気持ちいいか、少し下げてみるとどうか、上げてみるとどうか、体と両手の位置はどの程度近づくのが気持ちいいか──など、「気持ちがいい両手の位置」を探求してみるのもいいかもしれません。
見つかったらその位置で手を合わせながら、タッチの感覚を味わってみましょう。 そして、落ち着いて穏やかな身体感覚に変化するのであれば、「緑の神経が反応している」と考えていいでしょう。あなたに合う合掌を見つけたら、食事の前後、就寝前、仕事の前後など、いろんな機会に合掌を試してみましょう。
「いい感じ」を感じられるのであれば、ぜひ日課やルーティンとして、日々の生活に取り入れてみてください。
セルフハグ
自分自身をハグしてあげるセルフハグもお勧めです。右手で左肩を触れ、左手で右肩を触れてみましょう。触れる肩の位置について、気持ちがいいところを見つけてみてください。肩の上、肩と腕の付け根、上腕、肘、鎖骨付近などを触れてみて、どこが気持ちいいか試してみましょう。
あるいは脇で手を挟むこともお勧めです。手を挟む強さもいろいろと変えてみてください。どのくらいの強さが気持ちがいいか、心地がよいか、試してみましょう。

一般的に赤の神経が反応しているときは、ハグやタッチを強めにしたほうが心地よく感じるようです。一方、青の神経が反応しているときは、そっと触れるくらいのほうが心地よく感じるようです。いろいろ試してみてください。
目を閉じたほうが「触れている感触」に意識を向けやすいのであれば、目を閉じて感じてもいいでしょう。マインドフルネスの三角形(下図)を意識して、「触れている感触」を中心対象に置いて、気が散ってもOKという気持ちで「触れている感触」に戻りながら味わってみてください。

また「バタフライハグ」という方法もあります。セルフハグはタッチが中心ですが、バタフライハグは蝶々が飛んでいるかのように肩(あるいは腕)をパタパタとタッピングしていく方法です。タッピングも指先でのタップや手のひらでのタップなどがあります。タップする場所もいろいろあるでしょう。同じ場所をタップするのもよし、タップする場所を微妙に変えていくのもよしです。
タップのスピード、強さ、リズムなどもさまざまなバリエーションを試してみて、気持ちがいいバタフライハグを見つけてみてください。 数回、数分試してみて、なんとなく穏やかで落ち着いた身体感覚を感じられたら、緑が反応してくれたということでしょう。
頭をタッチ
自律神経は脳と各臓器を結ぶ神経です。自律神経は手で直接触れることはできないのですが、少しでも近くで触ってもらいたいものです。たくさんの自律神経が集まる頭付近のタッチもいろいろ試してみてください。 いずれの部位においても、手のひらの温かさや触れている感触を味わってほしいと思います。手から温かいエネルギーが出ているイメージを連想してみてもいいかもしれません。
おでこのタッチはいかがでしょう。両手でもいいし片手でもいいです。片手だと手のひらいっぱいを使ってタッチできます。熱があるか確かめるときには、おでこをタッチしますね。あの感触を数分間味わってみるのもいいのではないでしょうか。
頭頂部のタッチはいかがでしょう。両手でする場合は、左手で直に頭部に触れて、右手は左手の上に置いて、感触を味わってみてください。手の位置が逆のほうがいい感じと感じられたら、そうしてみてください。
後頭部のタッチはいかがでしょう。こちらも両手でも片手でも構いません。両手でする場合は、頭頂部と同じように手を重ねてみてください。後頭部を両手で触れながら小さく無限大(∞)マークをなぞるように動かすと気持ちがいい、という人もいます。さらにその際、脳の疲れやくたびれがほぐれていくようなイメージで無限大(∞)の動きをすると気持ちがいい、という人もいます。
頭と首の付け根へのタッチはいかがでしょう。この部分にも神経がたくさん通っています。神経への思いやりや感謝を込めながらタッチをすると、より緑が生まれるかもしれません。
■著者略歴:吉里恒昭(よしざと・つねあき)
臨床心理士、公認心理師、医学博士。フォーチュンビレッジ代表。株式会社DMW取締役。心療内科、精神科の現場でカウンセラーとして20年以上の臨床経験を持つ。うつ病、依存症、PTSD(トラウマ)など、様々なメンタル疾患に対して「からだ・こころ・発達・対人関係」の側面からセラピーを行っている。専門的アプローチはブリーフセラピー、ナラティブアプローチ、マインドフルネス、ポリヴェーガル理論、整体など。2020年から支援者(カウンセラーなど)を対象としたオンラインスクール(DMWクラブ)を開講。最新メンタルヘルスやポリヴェーガル理論を支援者が使えるようになるための学び場を提供している。
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