女性同士が支え合うことで更年期の苦しさはぐんと軽くなる。医師・研究者、医療サイドが新たに構築する「語り合う」更年期診療とは | NewsCafe

女性同士が支え合うことで更年期の苦しさはぐんと軽くなる。医師・研究者、医療サイドが新たに構築する「語り合う」更年期診療とは

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女性同士が支え合うことで更年期の苦しさはぐんと軽くなる。医師・研究者、医療サイドが新たに構築する「語り合う」更年期診療とは

各地で医師・研究者・医療従事者が事実上のさまざまな更年期サポートサービスを立ち上げています。オンライン診療「ビバエル」もそのひとつ。更年期専門の医療従事者によるカウンセリングと、産婦人科医を組み合わせたサービスで、予約から診察までがオンラインで完結し、処方された薬は自宅まで発送してもらえます。

「ビバエル」を立ち上げたのはHerLifeLab株式会社代表取締役CEO、OIST(沖縄科学技術大学院大学)客員研究員のオリガ・エリセーバ博士。沖縄発のスタートアップとしてオリガさんが更年期カウンセリングを始めた経緯と併せて、提携クリニックとして神戸・東京の2院で女性医療を強力に推し進める沢岻美奈子先生、お二人の「更年期への寄り添い方」を伺いました。

前編記事『「自分自身が更年期障害に苦しんだとき、必要だったものを作りました」。オンライン更年期診療「ビバエル」オリガ・エリセー博士×沢岻美奈子医師が語る「更年期に本当に必要なこと」』に続く後編です。

「最初にきちんと診立てて、最短で治療から卒業してもらうのがいちばんいい」沢岻先生が考える更年期医療とは

左・オリガさん、右・産婦人科医 沢岻美奈子先生。

「ビバエル」は沖縄で開業する産婦人科医、Naoko女性クリニック院長の高宮城直子先生とオリガさんが2022年に立ち上げたのち、趣旨に賛同する全国の医師と協働しながらサービスを広げています。そのお一人が産婦人科医の沢岻(たくし)美奈子先生。オリガさんが高宮城先生に「賛同してくださるドクターを探しに行きましょう」と学会に誘われ、その席で意気投合して以来のお付き合いだそうです。

沢岻先生は沖縄生まれの沖縄育ち。2013年に神戸で「沢岻美奈子女性医療クリニック」を開院、乳がん検診を含めた地域の女性医療を担っています。昨年秋には美容皮膚科医である姪御さんと一緒に東京・恵比寿に美容皮膚科・婦人科「Takushi Clinic」を開院しました。恵比寿では完全予約制でのオーダーメイド婦人科診療を行い、更年期を総合的にチェックするドッグもスタートしました。そんな沢岻先生は、沖縄ならではの大家族で女性に囲まれて育つ中、中学生の頃にお母様が更年期で調子を崩したことから産婦人科医を志したといいます。

「更年期の不調は身体だけでなく、心にも寄り添うことが必須。患者さんが抱えている悩みを丁寧に聞くことで症状がよくなっていく例も多いのです。が、保険診療では1日100人の患者さんを診察しますので、長くて5分。また、保険診療は通っていただくことが収益源となるのですが、私は症状の根本を突き詰めて治療し、早く卒業していただくのがいちばんだと考えています。こうしたジレンマを解消するため、恵比寿では乳がん、骨密度など更年期世代がリスクをもつ項目をすべて一括で検査して、当日で診察が完了するパックも始めました」

すでに自分でも課題解決の手を打ち続けてきた沢岻先生だからこそ、全国どこからでもアクセスできて、最初でしっかり時間をかけて診立て、最短で治療にたどり着き最短で治療を終了するというオリガさんの考えに共感したそうです。

「最短で終了するためには、食事介入や運動介入もしっかりしたい、だがドクターの力だけでは足りない。何か方法がないかと模索している中で出会ったのがオリガさんでした。私は日本の女性たちがこれから人生100年時代をより幸福に生きるために、更年期が終わったその先の健康管理までを考えることが必須だと考えています。更年期に健康と生活習慣を建て直すことができれば、そのあとのシニア期も認知症、骨粗鬆症などのリスクを減らしながら元気に過ごせます。非常に重要な時期なんです」

沢岻先生は実際ビバエルでの診察を始めてみて、「たらい回し」にあっている人が想像以上に多いことに気づいたといいます。

「参加した当初は『私は更年期と診断を受けたが違うと思う、納得がいかない』という人もいましたが、ビバエルが駆け込み寺だと知られ始めてからは逆のタイプ、『違うと診断されたが、どうにも体調が悪く納得がいかない、私は更年期だと思う』という人が増えました。クリニックでストレス、自律神経の乱れなどと言われ、でもそれでは説明がつかないと思って駆け込んでくるんです。かつてオリガさんが苦しんだたらい回しが、今でも変わっていないんですね」

とはいえ改善もあるといいます。神戸での対面診察でも「自分は更年期だと思う」タイプの患者さんが増えてきたのは、更年期という時期のことが知られるようになったからでしょう。また、内科や整形外科を受診して「この科では異常がないので婦人科を受診して」と繋げてもらえるケースも増えたそう。さらに、自分から他科に「婦人科に行くべきでしょうか」と確認して転院してきた人も増えたそうです。

「更年期での受診状態が少しよくなってきている反面、更年期離職が以前よりも増えた実感があります。原因として、女性の就労率が挙がったのに会社が変わっていない点が大きいと感じます。責めるわけではなく、ただ単に『更年期の女性に会社はどう対応すればいいのか』がわかっていないのだと思います」

例えば、43歳でやや早めの更年期障害に見舞われた女性に対して、産業医が復職を許可するタイミングが判断しにくいという理由で、心療内科の診断書で休職してくれと依頼を受けたケースがあったそうです。

「実際に適応障害の症状も出ていましたし、このケースでは無事休職できたのでよかったようなものの、休職制度が持つ課題のひとつに直面しました。メンタル疾患の場合は前例もあるので復帰までの時間の見当がつきやすく、年単位になりそうなら人員補充をと業務対応も考えやすいのでしょう。しかし更年期症状の場合はいつ復帰できるか、本人にも医師にもわかりません。判断するための根拠が乏しいのです」

こうした課題にはお国柄もありそうです。沢岻先生は沖縄のつながりで日本国内で勤務する米国籍女性の診察も引き受けていますが、米国女性はもっと具体的に「更年期症状が強いためこれ以上の仕事はさせないようにという制限を示してくれ」「ドアは解放しておくのが義務の基地内のオフィスだが、ノイズが入って業務効率が著しく下がるだめ、閉めるようにという意見書を書いてくれ」と、医師の客観的意見を持って職場に要求をするのだそうです。

「日本人女性はまだまだ我慢が美徳と考えるので、会社側は女性社員が何に困っているかがわかりにくいのですね。あなたの我慢はあなたの後輩のためにならないと考えて、意見を伝えて改善していく必要があると思います。更年期症状は責任感が強くまじめな人ほど強く出る傾向がありますが、こうあるべきという役割にこだわり、オーバーワークで不調が強まる側面もあります。睡眠時間が確保できない人にはどれだけHRTを続けても効果は期待できません。やはり更年期はまず『休む・眠る』が大切な治療法。休んでいる間に状況が整理されれば大抵の方はよくなりますから、しんどいならば休みたいと口にする勇気は持ってほしいと感じます」

更年期を支えるコミュニティをコアに、ビバエルがみんなを支えていきたい

ここでもう一度オリガさんのお話に戻ります。ビバエルはスタートからまる3年が経過し、月間数百件のカウンセリング・診療を手がけるようになったそう。実際サポートの手応えはどのような感じでしょうか?

「いまでも私はカウンセリングしながら患者さんと一緒に怒っていることがあります。『どうして女性ばかりがこんな苦しい目にあわないとならないの!』って。女性たちは、医療従事者にしんどさを打ち明けてもまた否定的なことを言われるかもしれないと覚悟してビバエルにたどり着きます。毎回話すことでさまざまな課題が出てきます。このカウンセリングは、自分の歩みたい人生を歩むためのもの。100歳まで元気に生きて、できることをやりつくして世を去る、そのお手伝いをするのが私の目標です」

ビバエルを介したコミュニティを作っていきたいというのもオリガさんの思い。患者さん同士がつながってお互いを癒しあうことができたら最高だと感じるそうです。今回の取材は、そんなビバエルの初のオフ会が開催されるタイミングでお伺いしました。この日に合わせてオリガさんは沖縄から東京へ、そんなオリガさんに会うために4人の女性が会場である恵比寿のTakushi Clinicを訪問しました。

オリガさんは自宅で育てた新鮮なレモングラス、道の駅で購入したウコン、ローゼルなど、沖縄ならではのハーブを持参。ハーブドリンクを作り、振舞ってくださいました。

神奈川県のSさん(46歳)は43歳から更年期症状を自覚し始めましたが、婦人科を3軒まわってもまだ若いからと門前払いされ続けたそう。とりあえず漢方を処方してくれる医師にはたどり着きましたが、だんだんと症状が悪化したため意を決して少し離れたエリアのクリニックを受診。すると、医師は「更年期は年齢やホルモン値ではなく、あくまでも症状で判断するものです」と、すぐにホルモン補充療法(HRT)をスタートしてくれたそうです。いまはビバエルでのカウンセリングのほか、HRTとプラセンタ、漢方、サプリで補い、ゆらぎを感じつつも何とか明るく過ごせていますと教えてくれました。

同じく神奈川県のNさん(47歳)は反対に、更年期症状はまったくないと言います。ただ、周囲の友人たちから更年期にまつわるホラーストーリーをたくさん聞き、これは恐ろしい、自分がこうなったらどうするのと感じるいっぽうで、現状病院に行くほどでもなく症状もない、タイムイズマネーなのにクリニックの1分診療を受ける気もしないため、いろいろ探した結果きちんとカウンセリングしてもらえるビバエルに予約を入れました。寒いエリアに暮らしているため、しもやけになるのが人生の一番の悩みで、その対策に漢方を服用しているほか、HRTも続けていきたいと考えています。

愛知県のHさん(57歳)は、1年前にビバエルを受診した当初、認知症を疑うレベルの物忘れに苦しんでいたそうです。更年期症状といえばホットフラッシュという思いこみがあり、物忘れのほかイライラ、涙が出るなどの症状がまさか更年期だとはわからなかったといいます。ちょうどお父様の認知症が進行する最中だったので「もしや自分も認知症なのでは、このまま管理職を続けられるのかしら」と不安を抱えながら働いていました。クリニックを受診しようにも退勤は連日20時を回るため、自分のために使う時間が捻出できません。そんな中で娘さんが結婚しお孫さんが誕生と5年ほどの間に環境が激変、ますます時間も捻出できず変化にもついていけないと落ち込む中、新聞でビバエルを知り、遅い時間の対応もあるならと受診したそうです。結果的に漢方とHRTにたどり着いたことがいまの心の支えになっているそう。

茨城県のKさん(55歳)は2人の娘さんのお母様。下のお子さんは現在25歳で自閉症を持つためお世話を続けており、なかなかKさん自身の時間が取れません。歯科医であるご主人のお兄様もダウン症で今後介護が必要となるほか、コロナ禍にはご家族の死去や認知症の発症など、家族を取り巻く状況も激変したとのこと。更年期に差しかかって以降、睡眠状態の悪化とともに指の痛みが大変強く出てしまい、家事ができずに困っていたそうです。同じような手指の痛みで整形外科を受診した友人からは「サプリを飲んだけれどいまひとつ」と聞き、その流れでこれが更年期の「メノポハンド」だと気づいてクリニックを探しました。しかし医療過疎の茨城では全く見つからず、水戸市まで行っても数カ月待ちという中、ビバエルを見つけて、HRTと漢方でなんとか我慢できる程度になったそうです。

「どうして私だけこんな目に」からの脱出。更年期症状を持つ女性同士のトークが、いちばん自分たちを癒す

こうした自己紹介の後で、自分の状況を樹木に例えて描くというセッションを全員で実施。心理の臨床でも使われることがあるこのバウムテストは、無意識下の感情や心の問題を投影する手法です。オリガさんのオンラインカウンセリングでも行われるセッションなので、4人の皆さんも慣れており、自分が描いた内容を説明しながら気持ちをシェアします。

オリガさんには、こうして描かれる樹木の姿から「少しずつ元気になっていく」様子が見て取れているそうです。

「ときどきこうして大勢でのシェアを行い、自分の内面を言葉にして外に出すことで、改めて自分の気持ちに気づくこともあります。色ひとつとっても、緑だけでなく落ち着いた茶色、黄色など、さまざまな色が使われ、そのときどきの心が反映されます。セッションを繰り返すごとに樹木は少しずつ変化していき、同時に心も変わっていきます」

課題を抱えてる女性の周囲にいる敵が、実は女性であることも多いのではないか、とオリガさんは推測しているそうです。更年期症状の辛さを持たない人には何がそんなにつらいのかを理解できないため、さぼり、怠けに見えることがまだまだあり、分断が起きてしまうようだと言います。

「たまたま更年期症状の軽い集団に属していると、どうして自分だけがこんな目に、と思いがちですが、更年期症状を持っている女性同士になると不思議とオープンに話せます。友達だからといって何でも話せるわけではないのが更年期です。長い時間の間に作り上げた対外的な自分のイメージがどうしても誰にでもありますから、親しくても心の奥の弱音まで見せられる人は少ないのです。弱々しい自分を見せられ、つらいと言える場所は誰にもあったほうがいいと感じます」

更年期の養生の指導としては食事と運動と睡眠とよく言われますが、オリガさんは食事が先だと考えるそうです。

「運動はできても続かない人がいます。加工食品を控えること、腸活が大事です。ビバエルは栄養指導も行いますが、まず自分の栄養摂取が偏ってることを気づくのがスタート。ほとんどの人はたんぱく質が足りませんし、ミネラル不足は国民的な問題です。極論を言うと、朝ごはんパン1枚だった人は卵かけご飯に変えるだけで元気になる場合があります。運動ができないなら食事は気をつけてほしいです」

女性同士はいい具合に支え合えるのが何より、とオリガさん。更年期症状初心者の時にはまだ話せないかもしれませんが、やがて元気になるにつれて自分を語れるようになります。更年期症状が強い間はひたすら自分をひたすら否定して、「私は何もできていない」「私が悪かった」と口にしがちですが、いま悲観していたとしても治療につながれば必ず好転するのだと言います。

「更年期に症状が出て、治療を受けることは、つらいことかもしれませんが悪いことばかりではなく、結果的には女性の健康寿命を長くするいいきっかけになります。人間関係を整理するとか、自分らしく生きるとか、考え直すタイミングになるのです。病気は単なるきっかけに過ぎず、今後の人生をどう生きるかの提案の場所としてビバエルは機能します。統合医療をベースに、今後ともつながりや楽しみ、豊かさのヒントを発信したいですね」

ビバエル公式サイトはこちらから

Takushi Clinic 公式サイトはこちらから


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