文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は2025年12月26日、「ナイスステップな研究者2025」として、科学技術イノベーションのさまざまな分野で活躍し、日本に元気を与える研究者を発表した。筑波大学生命環境系の准教授・釜江陽一氏など10名が選定された。 科学技術・学術政策研究所では、科学技術・イノベーションのさまざまな分野において活躍し、日本に元気を与えてくれる研究者を「ナイスステップな研究者」として選定している。2005年より選定を開始し、過去には、その後ノーベル賞を受賞された山中伸弥教授や、天野浩教授も含まれている。 2025年は、今後活躍が期待される若手研究者を中心に選定。気象、材料科学、AI、ライフサイエンス、民俗学など多岐にわたる分野における、さまざまな社会的課題に関わる研究のほか、研究活動のみならず国内外へ広く成果を還元している研究者を選出している。 選定された研究者の1人、筑波大学生命環境系の准教授・釜江陽一氏は、雲と大気循環を基軸とした気候感度および極端現象の研究を行っている。実験をとおして、雲や大気循環、放射収支がさまざまな時間スケールで応答するメカニズムを明らかにした。今後は、この知見をもとに、亜熱帯域に存在する台風、偏西風など、日本の気候を左右する遠隔影響にも注目し、大雨による水害のリスクを数値化するといった災害対策のための基盤情報を整備する取組みが期待される。 また、コルバトヘルス代表取締役、慶應義塾大学病院臨床研究推進センターの特任助教・八木隆一郎氏は、AIの特性に着目し、深層学習モデルを用いて、通常は心電図からでは診断が難しい心疾患の検知・予測に取り組んでいる。研究開発と並行してスタートアップを設立しており、AIと医療ビッグデータによる予防医療のアップデートに挑戦し、予防可能な心血管疾患を防ぐことで、健康寿命を延ばす社会の実現を目指している。 「ナイスステップな研究者2025」の受賞者は、以下のとおり。詳細は、科学技術・学術政策研究所のWebサイトで確認できる。◆ナイスステップな研究者2025・釜江陽一氏(筑波大学生命環境系 准教授)「雲と大気循環を基軸とした気候感度および極端現象の研究」・川越吉晃氏(東北大学グリーン未来創造機構/グリーンクロステック研究センター 准教授)「マルチスケール解析で拓く航空機材料・設計・運用の学際研究」・塩足亮隼氏(マックスプランク協会フリッツハーバー研究所 グループリーダー)「ナノスケールを超越した極小の光による単一分子の化学」・新津藍氏(理化学研究所生命医科学研究センター チームディレクター)「タンパク質をつくり細胞膜のダイナミクスを理解する」・橋本雄太氏(国立歴史民俗博物館研究部 准教授)「みんなで翻刻:古文書資料のシチズンサイエンス」・日永田智絵氏(奈良先端科学技術大学院大学 助教)「心に寄り添うAIロボットに向けた感情モデルの開発」・姫岡優介氏(東京大学大学院理学系研究科生物普遍性研究機構 助教)「生命と非生命の差異を明らかにするための理論研究」・深見開氏(東北大学大学院工学研究科航空宇宙工学専攻 准教授)「非線形機械学習を用いて非定常航空流体解のデータ科学的ブレイクスルーを狙う」・八木隆一郎氏(コルバトヘルス 代表取締役CEO/慶應義塾大学病院臨床研究推進センター 特任助教)「心血管疾患の早期発見の革新を目指して―心電図・心エコーAIの研究開発とその実装―」・山本慎也氏(ベイラー医科大学分子人類遺伝学部 准教授)「ショウジョウバエを用いた希少未診断疾患研究」