9月27~28日に、主婦の友社のウェルネスイベント「わたしのごゆるり発見。ご自愛市2025」が、JR原宿駅前の「WITH HARAJUKU」(東京都渋谷区)で開催されました。初日に行われたワークショップ「美肌と代謝UPを両立!オメガ3とMCTオイルのメソッド」に登壇されたのが、医師の工藤あき先生と齋藤真理子先生です。医師が実践するインナービューティーメソッドを学び、アマニ油やMCTオイルを実際に試せる貴重な機会となりました。当日の様子を、詳しくレポートします。
細胞や血液の材料になる油。敬遠するのではなく、「選んで利用する」が正解!
2人の先生が登壇すると、満員の会場が大きな拍手に包まれました。MCに紹介されたあと、まずは工藤先生の解説から始まります。
「今回の大きなテーマは、皆さんの身近にある「油」です。油というのは、栄養成分でいう「脂質」のこと。実は脂質は、「タンパク質」「糖質」と並ぶ3大栄養素の1つなんです。この3つは、自分のエネルギーにするために絶対に必要な栄養素となります」
脂質は、「太るかも」「カロリーが高いのでは」といったイメージが強く、敬遠されがちかもしれません。しかし実は、体にとって次のような働きがあるといいます。
脂質の重要な役割
・全身の細胞の材料になる
・血液・ホルモンの材料になる
・脳の60%は脂質でできている
・体温を維持する
など
「脂質には、このように多種多様な働きがあります。そのため日常では、油をできるだけ避けるというより、きちんと選んで利用するという意識が大事です」と、工藤先生は強調します。実は油を減らし過ぎてしまうと、エネルギー不足で疲れやすくなる、おなかの調子が悪くなる、肌荒れが起こるといった可能性もあるそうです。
選ぶべきオイルは「オメガ3」。小さじたった1杯で1日分をカバー
工藤先生によると、「自分にとって良い油を選ぶ」ことが大事なのだとか。そこでオススメの油が、「オメガ3」「オメガ6」の2種類です。
「これらは、自分の体では作ることのできない必須脂肪酸です。食べ物から摂ることが必要ですが、オメガ6は、調味料、ドレッシング、お総菜、外食などに使われていて、知らないうちに一定以上摂れています。意識していただきたいのが、オメガ3です」(工藤先生)
オメガ3は、アマニ油、えごま油、青魚などに豊富に含まれています。中でも工藤先生のイチオシは、「アマニ油」と「えごま油」。その理由は、1日分のオメガ3を摂るのに必要な量にありました。
毎日必要なオメガ3。1日分の必要量は?
アマニ油・えごま油……小さじ1(約5g)
サバ……1切れ(80g)
アジ……3匹(120g×3)
「アジであれば、1日3匹を食べなくてはいけません。一方、アマニ油やえごま油は、たったスプーン1杯です。毎日続けるには、とても簡単ですよね」という工藤先生のコメントに、参加者は熱心にメモをとっていました。
▶「6倍」もの個人差が!肌の老化速度を遅らせる方法
肌の老化スピードは人によって違う。その差はなんと6倍!
脂質は、体の健康だけでなく肌の老化にも大きく関係しています。ニュージーランドで1,037人を対象とした健康追跡調査によると、1年間で、肌の老化が0.40歳しか進まない人がいる一方で、2.44歳も進む人がいることが分かったのです。その差は、なんと6倍に!
「肌の老化の進行が速い人ほど、見た目も老け見えだったそうです。若見えする人は、本当に体の細胞から若かったということが証明された研究です。このとき老化に影響していた要因の一つが、食生活です」(工藤先生)
食事で肌の老化を防ぐには、次の3つのポイントに注意が必要です。
ポイント1 糖化……体の焦げ
ポイント2 酸化……体のサビ
ポイント3 炎症……体の火事
工藤先生は、3つのポイントをコントロールできれば、肌の老化を防ぐことに役立つと考えています。
「「糖化」は低糖質・低GI値食品を利用することで、血糖値の急上昇を防ぐことができます。「酸化」はポリフェノールなどの抗酸化食品で、抗酸化力を補うことがオススメです。「炎症」は、オメガ3を食事にプラスすることで改善が期待できるでしょう」
最新のマウスの研究では、オメガ3を摂ったマウスは、摂っていないマウスに比べて「DEL-1」という炎症を抑えるタンパク質が増加することが分かっています。また、肌とオメガ3の研究でも、オメガ3を摂り続けた人は、乾燥時の粉ふき状態が減り、滑らかさが増したというデータもあります。
オメガ3は「めぐりの潤滑油」。血液をサラサラにし、肌の新陳代謝を促す
「美肌を維持するために重要なのは、体のめぐりを整えることです。めぐりとは、血流、腸内環境、細胞の新陳代謝のことを指します。めぐりが悪いと、目元のクマ、むくみ、冷え、便秘などにつながる可能性も。体のめぐりを整えるために、オメガ3が味方になってくれます」と、工藤先生はアドバイスします。
オメガ3は、血流をサラサラにする、腸内環境を整える、肌の新陳代謝を促すことに役立ちます。さらに重要な効果は、赤血球も柔軟にすること。細い血管の形状に合わせて、柔らかい赤血球が変形しながらスルスルと進み、体の隅々まで血液や酸素を行き渡らせてくれるのです。
「オメガ3は、美肌を下支えする『めぐりの潤滑油』といえるでしょう。私は、毎日コーヒーにアマニ油小さじ1杯を入れて飲んでいます。小さじ1杯なら、毎日続けやすいのではないでしょうか」という工藤先生。「むき卵肌ドクター」といわれる先生からのメッセージに、多くの参加者が納得した表情を見せました。
母乳にも含まれるMCTオイル。一般の油に比べて、約4倍速くエネルギーに
続いて、齋藤先生にマイクが移りました。齋藤先生のテーマは「MCTオイル」で、オメガ3と同様に注目すべき油です。
MCTオイルは、ココナッツやパームの種子など、ヤシ科の植物に含まれる天然成分「中鎖脂肪酸」のみで作られているオイルのこと。母乳などにも多く含まれています。
「MCTオイルの特徴は、分解されやすく、蓄積されにくいことです。一般的な油(LCT)は食べ物が小腸で吸収されて全身に運ばれ、貯蔵後にエネルギーとして分解されるという長い経路をたどります。ところが、MCTオイルはすぐに肝臓に運ばれてエネルギーに分解されるという最短経路をたどるので、LCTと比べると約4倍も速くエネルギーになるのです」という齋藤先生の解説に、参加者は興味津々の表情。
齋藤先生によると、MCTオイルは、ミトコンドリアを直接活性化させる「ケトン体」を増やす働きもあるといいます。ミトコンドリアは人の細胞に存在し、エネルギーを作るという重要な役割を果たす細胞小器官です。
▶先生自身も体脂肪-6!その方法は
1日わずか小さじ半分で、体の脂肪がどんどん燃える!
さらに、MCTオイルは脂肪燃焼効果も期待できます。ケトン体の働きで脂肪が減って基礎代謝が上がり、脂肪をどんどん燃やしてくれる「脂肪燃焼体質」へと変身するからです。
「1日小さじ半分(2g)で簡単に脂肪燃焼のスイッチが入るので、普段の生活が脂肪燃焼のチャンスに。掃除や洗濯といった日常の仕事で脂肪が燃えて、エネルギーが消費されるのです」と齋藤先生が語ると、参加者は驚いた表情を見せました。
MCTオイル生活を始めた齋藤先生自身も、体脂肪-6kgをキープ中
齋藤先生は、MCTオイルの効果についてあらゆる研究を重ねています。例えば、複数の参加者にMCTオイルを4週間、毎日2~4g摂取する『MCTオイルチャレンジ』を実施。内臓脂肪が25%減少、重さにして-1.3kgという結果が出た参加者もいたそうです。
「実は私もコロナ禍に太ってしまい、MCTオイル生活を始めました。すると、たった1カ月で体脂肪が-3kgになり、現在は-6kgをキープしています。見た目がスッキリしたことはもちろん、以前よりも疲れにくくなりましたね」と、自身の経験を告白。
「MCTオイルは代謝に作用して脂肪の燃焼を高めることで、なりたい自分をサポートしてくれる油です。たった小さじ半分で、日常生活の動作で燃える体になります」と語ると、経験に基づいた説得力のあるお話に、参加者の共感が伝わってきました。
アマニ油とMCTオイルを味噌汁で試食。参加者の反応は?
齋藤先生の解説のあとは、試食タイムへ。会場の参加者へ味噌汁にサーブされ、アマニ油とMCTオイルが置かれました。
「毎日オイルを取り入れるには、味噌汁が簡単です。具は、豆腐や野菜などお好みで選んでください。アマニ油は小さじ1、MCTオイルなら小さじ1/2でOK。2種類同時に入れても良いですが、油っぽくならないように気をつけて」と齋藤先生。参加者が慎重にオイルの量を調整しながら味噌汁へ入れて試食をすると、大きくうなずき、満足感そうに飲み干す様子があちこちで見られました。
オメガ3とMCTオイルを摂るときの注意点は、ともに加熱調理には向いていないこと。加熱すると、オメガ3は酸化しやすく、MCTオイルは沸点が低いので煙や泡立つことがあります。コーヒーや味噌汁といった飲み物や汁物、ヨーグルトやサラダなど、出来上がった料理にかけるだけにしましょう。どちらのオイルも無味無臭で、料理の味を損ねることはありません。
また、油に溶ける脂溶性ビタミンは、油を使って調理すると吸収力が高まる特徴があります。脂溶性ビタミンの主な種類は、ビタミンA(卵、ニンジンなどに多い)・D(キノコ、魚などに多い)・E(うなぎ、アーモンドなどに多い)・K(わかめ、納豆などに多い)です。栄養を無駄なく摂りたいときは、アマニ油やMCTオイルをかけてみてください。
1日の中で、オイルを摂るのに適しているのはいつ?
工藤先生と齋藤先生のワークショップは、いよいよ最後の質疑応答へ。質問の一部をご紹介しましょう。
Qオイルを摂るのに適したタイミングはありますか?
工藤先生:オメガ3は、朝に摂るのが習慣化しやすくオススメです。朝食と一緒に吸収されて、日中に体調や肌に効果が発揮されます。
齋藤先生:MCTオイルも、朝食時が適しています。摂取して2時間をピークに、10時間程度で分解が終わるので、朝に摂り入れると、活動が活発になる日中のエネルギー消費を支えてくれます。ただし、空腹時は避けてください。吸収が速いので胃腸を刺激し、腹痛のリスクがあるほか、気持ち悪くなることがあります。
最後のMCの呼びかけにより、参加者の大きな拍手の中でワークショップが終了しました。内側から美肌と代謝アップを両立させるには、良質な油を選び毎日続けること。それを叶えてくれるのが、オメガ3とMCTオイルということを学び、参加者はお土産をいただいて会場を後にしました。
【お話】
消化器内科医 工藤あき先生
美腸・美肌評論家。日本内科学会認定医、日本消化器学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。一般内科医として地域医療に携わりながら、腸活×菌活を活かしたダイエット・美肌・エイジングケア治療にも力を注いでいる。植物と美の関係をひもとく、日本でのインナーボタニカル研究の第一人者としても注目されている。その美肌から「むき卵肌ドクター」の愛称で親しまれ、メディア出演多数。美容や食生活に関する書籍も数多く執筆している。2児の母。
山本メディカルセンター院長 齋藤真理子先生
日本形成外科学会専門医・医学博士・分子栄養学認定医。昭和大学医学部大学院卒業。2010年に山本メディカルセンターに入職。皮膚科・形成外科を立ち上げる。2016年4月山本メディカルセンター2代目院長に就任。発達障がい児の運動療育施設や、訪問診療における緩和ケア、在宅看取りなどを積極的に行っている。
撮影/佐山裕子(主婦の友社)