更年期のイライラ、不安、無気力。忙しくても取り入れられる「不調ケア」とは?【婦人科医が解説!原因と対策】 | NewsCafe

更年期のイライラ、不安、無気力。忙しくても取り入れられる「不調ケア」とは?【婦人科医が解説!原因と対策】

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更年期のイライラ、不安、無気力。忙しくても取り入れられる「不調ケア」とは?【婦人科医が解説!原因と対策】

更年期世代になると、「やる気が出ない」「些細なことでもイライラする」「漠然とした不安感を感じる」など、なんとなくの不調を感じることが増えがちです。

しかし、私たち世代は、仕事や子育て、家事、親の世話など、さまざまな役割を抱えています。そんななか、ついつい自分のことが後回しになり、無理を重ねてしまう人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、更年期と脳疲労の関係について研究を重ね、更年期の女性の悩みに寄り添ってきた心療内科・婦人科医の横倉恒雄先生にお話しを伺いました。

更年期の不調をがまんせず、前向きに過ごすためのケアのポイントとして、更年期の裏に隠された「脳の疲れ」と、時間をかけなくてもできる、五感を使ったセルフケアについての解説をお届けします。

更年期の不調には、精神的なものが多い?

更年期の不調の代表的なものには、動悸、ホットフラッシュ、頭痛、倦怠感、不眠などがありますが、「イライラしやすい」「気分が落ち込む」といった心の不調を訴える人も少なくありません。

「更年期症状で受診する患者さんのうち、女性ホルモンの低下による身体的な不調がある方は実は全体の約3割。のこりの7割は、気力がわかない、不安感がある、自律神経失調症含むその他の不調なんです」(横倉先生)

更年期の不調を生む要因とは?

更年期の不調は、女性ホルモンが減少することによって、自律神経が乱れて起こるというのは広く知られています。しかし実際には、ホルモンの減少だけでなく、心理的・社会的な要因も複雑に関係しているそうです。

「この年代は、“ミッドライフクライシス(中年の危機)”に陥りやすい時期でもあります。夫婦関係の悪化、子育ての悩み、職場での責任が増すなど、『これまでの生き方で良かったのか』『これから何を大事にしていくのか』と考える機会が増えますよね。それ自体は自然なことですが、その迷いや不安が強くなると、さらに気分が落ち込んだり、うつっぽくなったりすることもあります」(横倉先生)

また、社会的ストレスの他にも、その人の性格や考えも要因のひとつになっていることがあるとのこと。

「そして、几帳面・完璧主義・まじめで頑張りすぎるタイプの方ほど、自分の体調変化を受け入れにくい傾向があります。『まだ大丈夫』『気の持ちよう』と無理をしてしまうことが、かえって症状を長引かせることもあるんです」(横倉先生)

婦人科でできる更年期不調の治療

更年期に不調を感じたら、がまんせず専門医に相談することが大切ですが、婦人科ではどのような治療を受けられるのでしょうか。

「婦人科では、ホルモン補充療法(HRT)や低用量ピル、漢方、エクオールなどのサプリメント、プラセンタ注射など、さまざまな治療法があります。なかでも私がおすすめするのは、精神的な不調にも作用し、美容面の効果も期待できるプラセンタ注射です。自律神経を整える働きがあり、年齢によっては保険適用になる場合も。症状に応じて、漢方やHRTとの併用も行われています。プラセンタ注射を続けると、肌や髪のツヤが増し、疲れにくく明るくなる方が多いです。元気に前向きに過ごすためにも、更年期には有効な方法。気になる方は、医師と相談のうえ検討してみてください」(横倉先生)

更年期不調のセルフケアには「五感」への刺激が重要

横倉先生によると、“脳の疲れ”が不調の大きな要因になっているケースが最近は増えているそう。スマホやPCによる情報過多、リモートワークでのオンオフの曖昧さ、過密なスケジュールなど、脳を休めにくい環境が、更年期の不調を悪化させているケースも多いといいます。

「人間の脳は、常に情報処理をしています。メールやSNSの通知、膨大なタスク……。それらが絶えず脳を刺激し、休む暇を与えません。こうした状態が続くと、脳が疲れきってしまうんです。脳が疲れると、自律神経のバランスが崩れ、活動モード(交感神経)が優位なまま休めなくなります。
つまり、リラックスするための“脳のスイッチ”が切れなくなるのです。元気な状態であれば、副交感神経が自然に働いて緊張をゆるめられますが、脳が疲れきった状態ではその切り替えがうまくいかず、心身が常に緊張状態になってしまいます。
その切り替えを意識的に行うためには、デジタル情報から離れ、疲れた脳を五感を使ってやさしく刺激することがとても重要なんです。忙しい毎日、ほんの少しだけでいいので、自律神経のスイッチをうまく切り替えられるようになるためのセルフケア習慣をぜひ取り入れてみましょう」(横倉先生)

自律神経のスイッチを切り替える五感刺激のやり方

五感を刺激するとは、具体的にどんなことをすればいいのでしょうか。
具体的な方法は、実にシンプルで簡単です。

  • 通勤や休憩中に風や光を感じながら歩く
  • 自然の音や好きな音楽を楽しむ
  • 好きな香りを取り入れる
  • 「本当に食べたいもの」を味わって食べる
  • ペットや心地よい素材に触れてリラックスする

「五感は、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の5つです。これらの感覚は、すべて脳と直結しています。五感を通じて“心地よさ”を感じることで、副交感神経が優位になり、脳の緊張がゆるんでいくのです。また、女性ホルモンは脳からの指令で分泌されるため、脳をケアすることで心身の不調が改善したり、予防にもつながったりすることがわかっています。これは、医療に頼らず、簡単に取り入れられる大切なケア方法です」(横倉先生)

ふだんの暮らしのなかで “小さな快” を取り入れる習慣をつけることが大切とのこと。

「忙しい人ほど、五感で“感じる”ことを忘れてしまいがち。ですが、人間本来の感覚である五感を意識して取り入れながら過ごすことで、脳は確実に変わっていきます」(横倉先生)

心地よさを感じることがセルフケアの第一歩

Photo:photoAC

更年期は、誰にでも訪れる体と心の節目。女性ホルモンの変化だけでなく、実はストレスや環境の影響、情報過多による脳の疲れも関係している——そう聞くと、腑に落ちる感覚がある方も多いのではないでしょうか。

「更年期はネガティブな時期ではありません。むしろ、自分と向き合い、これからの生き方を見直すチャンス。脳が元気になる習慣をつけ、上手に発散できるようになれば、同じストレスも小さく感じられるようになります。がまんせず、自分を責めることなく、ちょっとした隙間時間でいいので、自分の心と体を大切にする時間を持ってほしいです」と横倉先生。

更年期を前向きに過ごすため、五感を使って脳をいたわるセルフケア習慣をつけてみませんか?

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お話を伺った先生

婦人科・心療内科医
横倉恒雄先生

医学博士。横倉クリニック(東京 田町)院長。慶應義塾大学医学部産婦人科入局。東京都済生会中央病院産婦人科に勤務、同病院にて日本初の「健康外来」を創設。病名がない不調を抱える患者さんにも常に寄り添った診察を心がけている。クリニックで行っている講座も好評。著書に『脳疲労に克つ』『心と体が軽くなる本物のダイエット』『今朝の院長の独り言』他がある。


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