首都圏で加熱する中学受験ブーム。一方で、小学生の不登校問題も、たびたびメディアで取り上げられています。
インスタグラムアカウント『yururelife』で不登校についての情報を発信しているまいこさん(仮名・48)は、小学5年生の長男A君の不登校に悩みながらも、長男本人のたっての希望で中学受験を決意したワーキングマザー。
前半では、そんな彼女が不登校になった長男を支えているうちに、長男に「行きたい私立中学」ができてしまった、という経緯を伺いました。
長男は不登校だが「学校」「勉強」に苦戦したわけではない。単に集団生活が向かないタイプだっただけ
カウンセリングの結果、「個別指導塾で受験勉強を進めつつ、集団生活の練習としてフリースクールを検討してみては」とアドバイスを受けたまいこさん親子。
「私は、長男を支えるために正社員復帰は諦め、派遣社員の時短勤務を選びました。受験に向けて長男としっかり話し合い、6年の4月から“私立中学受験計画”を始動。個別指導塾にはすんなり馴染みましたが、意外にも苦戦したのは本人が気に入って選んだフリースクールの方でした」。
まずはお試しで算数と国語だけを受講した大手個別指導塾にはすぐ馴染んだA君ですが、フリースクールでは1週間ほどで行き渋りが。
「ただ、今回は“大号泣”ではなかった。相談の余地があると感じて、夫婦と長男で先生に話を聞きに行きました」。
フリースクールの先生は、「強要はせず、とはいえ可能であれば親御さんは手を離して、本人に小さな成功体験を積ませましょう」と提案。期間限定のチャレンジとして、まずは“夏休みまでの3ヵ月通ってみよう”ということになりました。
不登校に絶望しないで!考え方を変えれば時間の余裕が「強み」にもなる。教育は選べる時代
その決断が功を奏し、A君は少しずつフリースクールに馴染んでいきました。
「ある日、得意な絵を褒められたらしく、ニコニコして帰宅。今では、フリースクールでできた友達の話を楽しそうにしてくれます」。
先日は電車が事故で止まり、友達3人とバスを乗り継いで通学したというA君。GPSを見ていたまいこさんは、「長時間立ち止まるポイント」があることに気が付き、「あの4人はなにをしているんだ?」と怪訝に思ったそう。
「後から聞いたら“虫を観察していた”とか“話に夢中だった”とか。まさに男子の冒険でした」
現在は、2科目受験で私立中に進学したフリースクール出身の先輩や、ボリュームゾーン校に進んだ妹の娘を参考に、独自の受験プランを構築中。算数・国語は塾、理科と社会と英語は通信教育というスタイルを取っています。
「学校に行けなくなったことには戸惑いましたが、気持ちを切り替えて、その時間に中学受験に特化した勉強を進める方向に舵を切りました。私自身がうつになって、何もかも手放して休んだ経験があったからこそ、“子どもにも無理をさせず、プロに早めに相談する”という選択ができたと思っています」。
「よそさまと同じ」が正解という時代ではない。プロに頼り、多様な選択肢をいっしょに探して
「私にも、長男と似たアンバランスな特性はありました。でも“人が好き”という気持ちが強い人懐っこい性格で、勉強も比較的得意だったため『少し抜けている所もあるけど仕事はできる人』として生きていけるよう必死で無理を重ねて、なんとか乗り切ってきた。だからこそ、自分の休職と子どもの不登校問題のダブルパンチは、当初“受け入れがたい大事件”でした」。
でも今は、「大事な家族に向き合い、“自分で全部やらなくていい。プロに頼る”という価値観を持てたことが何よりの財産」と話すまいこさん。
「これから更年期にさしかかる年代。余計なものを手放し、“本当に大切なこと”を見極める訓練をさせてもらったと思っています」。
前編▶「なんで私だけこんな目に…」仕事、育児、自己啓発、すべてを頑張って「燃え尽きた」ワーママを襲った「息子の不登校」
取材協力:yururelife
※本作は取材に基づいたストーリーですが、プライバシーの観点から、個人が特定されないよう随時事実内容に脚色を加えています。