もうすぐ50歳のライター、三浦ゆえさん。更年期を迎えて変化する身体や心、環境について語っていただく連載です。今回は今から4年前に小陰唇縮小術を受けた体験について。
前編『46歳、ビラビラを手術で縮めました。そしてわかったこと、余計わからなくなったこと、悩んだこととは』に続く後編です。
【私の更年期by三浦ゆえ】#2
個性があるよと言いはするものの、「そう受け止めることもできないだろうな」と感じていた
私はこれまで携わった記事や書籍で、幾度となく「外性器だって、人それぞれ」「個性があるよ!」「どれが美しくて、どれが醜いとかないよ!」と発信してきた。でも書きながら、実は読者にはあまり響かないのだろうなという気もしていた。
人それぞれだよ、といわれても、そのそれぞれを目にしたことがないから、リアリティをもって受け止められない。個性? そりゃあるんでしょう、わかってる。でもそのなかでも私のはヘンなんだろうなって気がする。いや絶対ヘンだよ、自信もてないもん。
と思う人がいたって不思議ではない。そこから小陰唇縮小術に踏み切る女性もきっといる。
体に関する選択は自己決定するものだというが、性教育もなく、外性器について知る機会も考える機会もほとんどなく、むしろそうした情報から遠ざけられながら大人になり、なのに知らずしらずのうちに「美しい性器像」を空気として吸い込み、コンプレックスが強化されてきた。
そんな状況下で、どう自己決定しろというのだろう。
先に紹介した投稿のように、医師がそのコンプレックスを煽ったり、つけ込んだりするのは、もってのほか。なにしろ、多くの女性はそんな言説から自分をプロテクトするのに十分な知識や価値観を備えていない。
もうおわかりだと思うが、私が小陰唇縮小術を受けた理由には、見た目問題も含まれている。日常的な困りごとはたしかにあったけれど、見た目にコンプレックスがまったくなければ、別の方法で解消しようと模索していたと思う。理由のうち15%ぐらいは見た目問題……いや、25%くらいかも。
特異な見た目だったわけではない。誰かから無神経なことを言われたわけでもない。「人それぞれ」であることは知っている。春画を見れば、小陰唇の細やかな描写に感心こそすれ嫌悪などしない。ビラビラを成熟の証と思うこともある。
自分以外のすべての女性には、「ビラビラしてたっていいじゃない!」と言えるのに、自分の小陰唇を受け入れるのは、なぜだかむずかしい。これから加齢による不快感が強まると、ますます受け入れがたくなる可能性は高い。
簡単な手術だとよく言われるけれど、それこそ人による。私の場合は結構な苦労でした
ということで、手術でビラビラを縮小させたのが4年前のこと。
簡単な手術、といわれるが、私の場合はそこそこ苦労した。
とにかく痛い。手術そのもより、麻酔の注射が痛かった。クリトリス付近に針が何本も刺されるのを想像してください……いえ、しなくていいです。想像だけでも厳しいものがあるでしょう。
痛さのあまり、私の下半身は釣り上げられた魚のように暴れ、それを看護師さんが両手で抑えていたのを覚えている。快感のためだけにあるといわれるクリトリス、多くの神経が詰まっているからこそなのだと、痛みでもって理解した。
術後の経過も思わしくなく、痛みと腫れがいつまでも引かない。回復には2週間ほどかかるといわれたのに、3週間経ってもパンツをまともに履けなかった。クリニックに電話をして受診すると、抜糸不用の糸が使われたのに吸収されずわずかに残っていて、その周りが炎症を起こしていたことがわかった。
処置を受けての帰り道、「こんな想いをしてまで、小さくしなきゃいけないものだったのかなぁ」と心に浮かんでは、あわてて打ち消した。コンプレックス成分が含まれていようが何だろうが、これ自分で決めたことだから。自己決定には、責任が伴う。
やっと痛みが引いてから、入浴中にさわってみた。なくなってる! 思春期以降30年ぐらいそこにあったものが、いまはない。なめらかな手ざわりに、かすかな感動と、「こんなもんか」というあっけなさと両方があった。
困りごとは、大幅に軽減された。パンツのなかに気を取られなくていい生活は快適で、QOLが何段階か上がった。そもそもそんなトラブルに最初から無縁の女性も少なからずいると考えると、不公平だなと思わなくもないけど、こうして解消する選択肢も用意されている。
人は、快適さにはあっという間になれる。いまの私はあんなに痛かった手術のことはほとんど思い出すことなく、最初から小さいビラビラでしたよ、という顔で生きている。
自分の身体を自分で選択して自分で変えた。この決定がよかったかどうかを決めるのもまた自分
縮小してよかったな、と思う。その一方で、縮小しなくてもよかったかな、とも思う。でもそれは、やったからこそいえることなのだという気もする。
この先どのくらい生きるかわからないけれど、見た目問題はそのうちフェイドアウトしていくだろうけど、不快感はどうなるかわからない。一層増していく可能性もある。そのときに、「あのときやっておけばよかったなぁ」と思いたくはない。
よかったかどうかを決められるのは自分だけなので、「よかった」ということにしておく。
最後に。私が制作に携わった『産婦人科医が教える みんなのアソコ』(高橋怜奈監修、辰巳出版、2022年)という書籍があり、そのなかにVIOの「V」を正面から見たイラストがたくさん収録されている。
脚を閉じていても小陰唇や副皮(小陰唇付近にあるひだ状の皮膚)が見えている人、見えていない人、大陰唇が厚い人、薄い人……ヘアの濃さや生えている範囲まで、一人として同じ人はいないと伝えてくれるイラスト群。
これ実は、Instagramの「The Vulva Gallery」というアカウントのオマージュです。成熟した大人の女性器を、自分のもの以外にはじっくち見たことがないという方に、おすすめです。素敵なタッチなんですよ。
つづき>>>>46歳、ビラビラを手術で縮めました。「なんでそんなことを?」「意味あるの?」「痛くなかった?」答えは…