「60年間、人の目を気にしてお財布を選んでいた」。61歳でついに手放せた「ブランドに頼る価値観」【一田憲子×大平一枝対談】 | NewsCafe

「60年間、人の目を気にしてお財布を選んでいた」。61歳でついに手放せた「ブランドに頼る価値観」【一田憲子×大平一枝対談】

女性 OTONA_SALONE/LIFESTYLE
「60年間、人の目を気にしてお財布を選んでいた」。61歳でついに手放せた「ブランドに頼る価値観」【一田憲子×大平一枝対談】

今年のとある日、西荻窪にある今野書店にて、「褒められなくても生きられるようになりましょう」の刊行を記念したトークイベントが開催。会場には30名のお客様が集まり、さらにオンラインでも多くの方がリアルタイムで視聴するなか、一田さんと、スペシャルゲストのエッセイスト・大平一枝さんとのトークセッションが繰り広げられました。

チケットは早々に完売。それだけ多くの人が、この「承認欲求」というテーマに、自分自身のこととして向き合っている(もしくは見て見ぬふりをしている)ということかもしれません。

同じ昭和39年生まれ、ともにライターとして30年以上のキャリアを持ち、同じ時代を走り続けてきた二人。まさかそうとは思えないですが、共通して「私なんか病」を抱えながら、それでも書き続け、あるとき気づいた「褒められなくても生きられる自分」へ変わるための試行錯誤とそのホンネが、会場に集まった同世代女性の共感を呼びました。

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▶61歳になり、財布をついにブランドで選ばなくなった

61歳、財布の条件がついに変わった。「人からどう見られるか」とサヨナラできた

大平: ぜひおききしたかったのですが、承認欲求について、これからはどう付き合っていきたいですか?

一田: そうですね、二拠点生活も50代初めだったらあんな遠くには引っ越せなかった。仕事で褒められたいと思ったら、そんなリスキーなことはないわけですよ。出版社の方に呼ばれてもいけない距離だし。

でもこれからの人生、仕事だけの評価だけで生きていくのではなく、それ以外の価値観を持ちたいと。二拠点生活を始めたから必ず見つかるとは限らないんだけど。でもちょっと離れたときに物差しの種類が増えていけばいいなって思っています。

大平さんはどうですか?

大平: 昨日の夜ね、ネットで新しいお財布を探していたんです、以前の私だったらブランドもので、「センスがいいね」「その財布どこの?」って言われたいみたいな条件で選んでいた。でも、chatGPT先生に相談したとき打ち込んだ条件が「軽い、小さい、カードがいっぱい入る、お札が出し入れしやすいこと、ブランドは問わない」と入れていたんですよ。

それを見たとき、「私、61歳にして初めてブランドとか、人からどう見えるかという条件を外した」って気づいたんです。毎日使うものだから、機能性で選んだんですよね。それで、私ついに「その財布どこの?」って人から聞かれたいっていう承認欲求とサヨナラできたって思ったんですよ。

一田: 自分が何を心地いいと感じるかという物差しができた、ということですよね。若い頃はそれが分からないからブランドの名前に頼ったり、人の物差しに頼ったりする。二拠点になって、毎日100均に行って家を整えているんですけど、前の私だったら「こんなもので満足はしない」という感じでした。でも今は、ニトリのカーテンでも「ここで快適に過ごせればオッケー」って思えるようになった。

大平: 私も60年間、人からどう見られるかを考えて財布を選んでいた(笑)。

一田: でも、そういう時期も必要ですよね。使ってみることでブランドの良さを学ぶ時期もある。失敗もする。でもある時期から、やっぱり自分の楽さや快適さで選べるようになる。

▶「足るを知る」という言葉の本当の意味

ミニマリストになれ、ということではない。「足るを知る」の本当の意味

ーここで、会場からの質問を募ったところ、「承認する人間が周りにいるから承認欲求が生まれるのだと思います。年を重ねて仕事を引退して、周りから人間がいなくなってしまったらどうしますか」という問いかけが寄せられました。

一田: 確かに、社会のヒエラルキーの中にいるから、「褒められる・褒められない」が出てくるんですよね。でも、他者に褒められなくても、例えば初めて草刈機を買って草刈りして、「すっきりしたな」みたいなことで満足するとか、日々の中で満足できることを一個ずつ積み上げていくこともできますよね。

おいしい一品が作れて「今日の朝ご飯おいしかった」とか、そういうことでいいような気がするんですよね。年を取る上では、それがすごく大事だと思う。

大平: 「足るを知る」という言葉が、若い頃は「物を持たなくていい」「足りなくていい」ということだと思っていたんですよ。でも最近違うなと思って。

「あるものを喜ぶ」、「今持っているものを数える」ことが、「足るを知る」ことなんだろうなって。ミニマリストになれということじゃなくて、あるものの喜びを数えることが大事ですよね。

一田: なるほど! 近所の人が草刈りを手伝いに来てくれた、そのやり取りで「助けてもらうってめっちゃいいことだよな」みたいな幸せに気づくことか、仕事でも暮らしの中でも、自分だけが見つけられる真実とか真理っていっぱいある。それを発見していくことが、生きる喜びなんだと思いますよね。

▶優等生で育ったために失敗が苦手だった

失敗を経て気づきがある。痛みや切なさ、もがいた時間も含めて、今の自分

一田: 私は両親から「いい子でいなさい」って育てられたから、めっちゃ優等生で育っていて、失敗することが許されなかったんですね。

失敗したら罰が付くみたいな思いでいたから、いかに失敗しないかということを考えて生きてきた。でも、最近やっと「失敗するから分かるんじゃん」みたいに思えてきました。

大平: 分かります。仕事でお題をもらった時に、「私なんかが、そんなこと書けません」って思うことがあるんです。でも、「この年齢なら、失敗を重ねた経験から得た気づきだったら書けるよな」って思ったとき、失敗することも悪くないなって。

いっぱいものを買っていっぱい捨てて、すてきな暮らしをしている人を取材したら家に帰って落ち込んで。そういう日々の痛みや切なさ、もがいた時間というものが、今の自分を作っている。そして「褒められなくても生きられる」というのは、「失敗してもいい」ということでもあると思うんですよね。

「この本は自分を許す本だと思った」。褒められたかった自分を受け入れる

大平: この本、最後まで読んで一番思ったのは、「自分を許す本だ」ってことでした。「褒められたかった自分も受け入れる」っていうことですよね。こんな自分でも愛する、許す。それって、年を重ねるほど難しいなって思っているんですけどね。

一田: 「褒められたい」と思うことを封じることはできないんですよね。評価はほしいし、褒められたいと思うこと自体は悪くない。

ただ、それ一個しかないと、褒められなかったときにペシャンとなっちゃう。例えば会社員で、上司にけちょんけちょんに言われた時、会社でしか世界が成り立っていなかったら、もうお先真っ暗になっちゃうじゃないですか。でも帰宅して、例えばパンを焼く趣味があったら、「上手にパンが焼けた」ということで自分を慰められる。

そういう、目盛りを一個じゃなくて増やすということが、承認欲求を手放すうえで大事なんじゃないかなって思います。

「褒められなくても生きられるようになりましょう」は、一田憲子さんが約1年をかけて、書きながら自分自身のファクトを発見していった一冊です。「褒められたい」という欲求を封じるのではなく、別の物差しを持つこと。テニスでも、バーの時間でも、早起きでも、草刈りでもいい。それは、あなただけが見つけられる「喜び」かもしれません。

書籍「褒められなくても生きられるようになりましょう」(一田憲子著)は、全国書店およびオンラインにて好評発売中。ぜひ手に取って、更年期世代の「生きづらさ」から少しでも解放されることを祈ります。

◆「褒められたい」とつい頑張りすぎてしまうあなたへ

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『褒められなくても、生きられるようになりましょう』(1,650円(税込)主婦の友社刊)

暮らしに寄り添う文章で人気を集めるエッセイスト・一田さん。
実は、若いころから「褒められる」ことが大好きだったといいます。
「人から尊敬される人になりなさい」と育てられ、期待に応えようと一生懸命に頑張ってきた日々。
けれど60歳を過ぎ、若い頃のように成果や評価を追い続け、「人にどう思われるか」に神経をすり減らす、生きづらい日々は、そろそろ卒業したい……。
でも、これからの人生で、「褒められる」以外に、自分の心を満たすものって何だろう?
右往左往しながらも、「褒められたい」という呪縛をほどくヒントを一つずつ見つけていく、正直で力強い書きおろしエッセイ集です。

誰かの評価に一喜一憂するのではなく、
自分で自分に花丸をつけられる生き方へ――。

■1章 どうして褒められたいの?
「私を見つけて欲しい」から「自分が見つけたい」へ/みんなに人気」の「みんな」って誰?/2本目、3本目の軸を用意しておく
■2章 「褒められる」を卒業するには?
「売れなかったら負け」の世界から抜ける/自分で自分の100点満点を設定する生き方に/「あなた」と「私」の境界線をぼやかし、相手の言葉をすべて「よきこと」として聞いてみる/褒められなかったときに、心の静寂を取り戻す方法を知っておく
■3章 小さく心が満たされる日々を
暮らしの中の「心地よさ」を設定すれば、自分で自分に花丸をつける日がやってくる/人生の本筋にあるものよりも、脇道にあるおいしそうな香りのほうが、ずっと大切な記憶になる
■4章 褒められなくたってへっちゃら
自分が今、尊敬できる人を思い浮かべてみたら、「みんなに褒められている」人じゃなかった!/「褒める」「褒められる」を、上質なコミュニケーションに格上げする など

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一田憲子(イチダノリコ)
1964年京都府生まれ。編集者・ライター。OL、編集プロダクション勤務を経てフリーライターとして独立し、女性向け雑誌・書籍などの取材・執筆で活躍。暮らし、おしゃれ、仕事、人間関係、年齢の重ね方などについての、日常の中の揺らぎや気づきを丁寧にすくい取る文章で、幅広い共感を集める。『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(ともに主婦と生活社)を立ち上げ、イベントも開催。『最後の答えは、きっと暮らしの中にある。』(内外出版社)、『小さなエンジンで暮らしてみたら』(大和書房)など、著書多数。自身のWebマガジン『外の音、内の香』では、さまざまなコンテンツを配信。ライター塾を主宰し、「書く暮らし」の楽しみを伝えている。

大平 一枝(オオダイラカズエ)

作家、エッセイスト。1964年、長野県生まれ。編集プロダクション宮下徳延事務所を経て、1995年、独立。市井の生活者を描くルポルタージュ、失くしたくないもの・コト・価値観をテーマにしたエッセイを執筆。​著書に『それでも食べて生きてゆく 東京の台所』『ふたたび歩き出すとき 東京の台所』(毎日新聞出版)、『男の女の台所』『ただしい暮らし、なんてなかった。』(以上、平凡社)、『注文に時間がかかるカフェ たとえば「あ行」が苦手な君に』(ポプラ社)『そこに定食屋があるかぎり』(扶桑社)「ある日、逗子へアジフライを食べに」(幻冬舎)など多数。


《OTONA SALONE》

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