機能不全は「自分だけ」と悩んでいない?男性が恐れているものの「正体」とは | NewsCafe

機能不全は「自分だけ」と悩んでいない?男性が恐れているものの「正体」とは

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機能不全は「自分だけ」と悩んでいない?男性が恐れているものの「正体」とは

「性の悩みは、相談した瞬間に “弱さ” になる気がして黙ってしまう」

そんな声を、私はこれまで何度聞いてきたでしょうか。男性の性に関する悩みは、長らく「存在しないもの」として扱われてきました。「男は常に性欲がある」「男はいつでもできる」という社会的なイメージが、当事者の口を塞いできたのです。

実際には、ED(勃起障害)の潜在患者数は国内で1,000万人以上とも言われ、早漏や性欲減退に悩む男性も少なくありません。それでも多くの人が、誰にも相談できないまま一人で抱え込んでいます。

友人にも言えない。パートナーにも言えない。病院に行く勇気も出ない。夜中にスマホで検索しては、怪しいサプリの広告や不安を煽る記事に振り回される——そんな孤独な戦いを続けている男性が、この社会には数えきれないほどいます。

今回、インタビューをしたのは佐久間さん(38歳・仮名)。営業職として多忙な日々を送りながら、長く”性の不安”を抱えてきた男性です。「同じ悩みを持つ誰かの役に立てれば」と、取材に応じてくれました。家庭関係研究所の山下あつおみが、男性目線での夫婦関係インタビューをお届けします。

※本記事は一般的な情報提供であり、診断や治療の代替ではありません。強い苦痛や症状が続く場合は医療機関等へ相談してください。※個人が特定されないよう設定を変えてあります
※写真はイメージです

【無子社会を考える#31】

今回の取材相手・佐久間さんについて

佐久間さんは38歳。都内の中堅メーカーで法人営業を担当しています。妻の美穂さん(仮名・36歳)と、小学3年生の娘との3人暮らしです。

平日は朝7時前に家を出ます。都心のオフィスまで電車で1時間弱。帰宅は早くて21時、繁忙期には23時を過ぎることも珍しくありません。土日のどちらかは家族と過ごすと決めていますが、月に一度は休日出勤が入ります。

妻の美穂さんは、娘が小学校に上がったタイミングでパート勤務を再開したそうです。共働きで家事を分担しているとはいえ、平日の夜は美穂さんがほぼワンオペで回している状態です。

「結婚して10年になります」と佐久間さんは語ります。「娘が生まれてからは、夫婦二人きりの時間が減りました。それ自体は子育て中だから仕方ないと思っていたんです。でも、たまに二人の時間ができても、自分のほうが”その気になれない”ことが増えて。最初は疲れのせいだと思っていました。でも、だんだん『また失敗するかも』という不安のほうが大きくなっていたんです」

実は佐久間さんは私の記事を読んだことがあり、内容を見た瞬間、「自分のことだ」と感じたといいます。

今回のインタビューに応じた理由を、佐久間さんはこう話します。

「正直、取材を受けるのは怖かったです。でも、自分と同じように一人で抱えている人がいると思うと、話してみようと思いました。誰かの”きっかけ”になれたらと思って、山下さんに連絡したんです」

「機能不全」だけじゃない。悩みの正体は「評価への恐怖」

——最初に聞かせてください。どんな悩みを抱えていましたか?

正直に言うと、「いざというときに自信がない」という感じです。仕事で疲れがたまると、気持ちはあるのに反応がついてこないことがあって。そこから「またダメかも」と考えると、余計に緊張する。悪循環でした。30代前半まではこんなことなかったんです。でも娘が生まれて、仕事の責任も増えて、睡眠時間が削られて……。気づいたら、そういう場面で頭が真っ白になることが増えていました。

——まさに予期不安ですね。一度うまくいかなかった経験が、「次もダメかもしれない」という恐れにつながる。よくあるパターンです。

そうなんです。しかも、うまくいかないと「妻に申し訳ない」「男としてダメなんじゃないか」と自分を責めてしまって。そうすると余計にプレッシャーになります。

——その感覚、多くの男性が同じことを話してくれます。悩みの多くは、からだの問題に見えて、実は「評価される怖さ」なんですよね。「うまくできなかったらどうしよう」「相手を満足させられなかったら……」って。これ、仕事のプレッシャーと構造が同じなんです。

あ、それ、すごくわかります。営業でプレゼン前に緊張するのと似てるかもしれません。「失敗したらどうしよう」って考えると、余計に硬くなる。

——まさにそうです。性の反応って、リラックスしているときに働く副交感神経が優位なときに起こりやすいんです。つまり、「頑張ろう」「なんとかしなきゃ」と力むほど、逆効果になる構造があります。

今の自分が陥っている状況そのものです……。

「男は強くあるべき」という呪いが、相談の入口をふさぐ

——ところで、この悩み、誰かに相談しましたか?

……いえ、誰にも言えませんでした。友人には絶対無理です。男同士でそんな話、できないですよ。「俺、最近うまくいかなくて」なんて言ったら、どんな顔されるか。

——そうですよね。「男は欲望が強い」「男はいつでもできる」みたいな雑なイメージがありますから。できない日があると、男として失格みたいに感じてしまう。

まさにそれです。だから、夜中に一人でスマホで検索ばかりしていました。でも情報が多すぎて、「自分はどれに当てはまるの?」って混乱しました。

——ネットの情報は玉石混交ですからね。どんな情報に出会いましたか?

「これを飲めば解決」みたいなサプリの広告が出てきたり、逆に「こうなったらもう手遅れ」みたいな脅し記事があったり。あと、刺激の強い話題に引っ張られて、余計に不安が増えることもありました。

——不安を煽って商品を売ろうとするものも多いですからね。私の経験上、性の悩みは下記の「タイプ」に分けられると思います。

  • 反応が安定しない(疲労・ストレス型)
  • 早く終わってしまう(焦り・呼吸型)
  • 性欲が湧かない(メンタル・関係性型)
  • そもそも性が怖い(自己評価・経験型)

こんなふうに、原因のあたりをつけて、やることを絞ります。その方が回復が早いんです。佐久間さんは、どのタイプに近いと感じましたか?

最初は「疲労・ストレス型」かなと思いました。でも読み進めると、「自己評価型」の要素もあるなって。「失敗したら終わり」みたいな考え方をしていたので。

>>妻が「離婚届け、書こうか」とつぶやいた…

「離婚届、書こうか」——妻の言葉に凍りついた夜

——悩みを抱えていた時期、一番つらかったのはいつですか?

……去年の秋です。今でも忘れられません。

その日、珍しく娘が祖父母の家に泊まりに行っていて、久しぶりに夫婦二人の夜でした。妻も「たまにはゆっくりしようか」という雰囲気で。でも僕は、その時点でもう緊張していました。「今日こそ」と思えば思うほど、プレッシャーで頭がいっぱいになって。結局、その夜もダメでした。

妻は何も言いませんでした。でも、しばらく沈黙が続いた後、ぽつりと言ったんです。

「……ねえ、私たち、離婚届、書いたほうがいいのかな」って。

——それは、衝撃でしたね。

頭が真っ白になりました。妻は続けて、「私のこと、もう女として見られないんでしょ。わかってる。あなたが悪いんじゃない。でも、このままだと私、おかしくなりそう」って。泣いてました。僕は何も言えなかった。

その夜、妻は別の部屋で寝ました。僕は一人でリビングにいて、「ああ、終わったな」と思いました。性の問題が、人生を壊すんだって、そのとき初めて本当に実感しました。

——その後、どうされたんですか?

翌朝、妻は普通に朝食を作っていました。「昨日はごめん、言い過ぎた」って。でも僕は「言い過ぎ」じゃないと思っていました。妻の本音だと思った。そこから数週間、家の中がぎこちなくて。会話はあるけど、目を合わせられない。そんな時期に、たまたま山下さんの記事を見つけたんです。

——タイミングだったんですね。

藁にもすがる思いでした。読み始めたら止まらなくて、その日のうちに全部の記事を読み終えました。

テクニックより先に、整えるべき3つの土台

——これまでの記事の中で繰り返し書いてきたんですが、大事なのは「土台」なんです。3つあります。

コンディション(睡眠・疲労・飲酒・運動)
認知(「失敗したら終わり」など極端な考え方)
コミュニケーション(パートナーに言えない・察してほしい問題)

性の悩みは、この3つが絡み合って起きます。逆に言うと、派手な解決策はいらないんです。小さく整えるだけで変わることが多い。

それを読んで、まず睡眠を見直しました。仕事が忙しいと削りがちだったんですが、とにかく「まず寝る」。あとは飲酒を控える。

——どうでしたか?

たったそれだけで、”波”が減りました。調子の悪い日が明らかに減った。もちろんゼロにはならないですけど、前より安定してきた感じがあります。あと、「ゼロか100かで考えない」が重要だと思いました。ダメな日があっても、「今日はコンディションの問題」って捉えられるようになりました。前は「またダメだった、俺はダメだ」って自分を責めてたんですけど、そう考えると、すごく楽になりました。

本編では、仕事の忙しさがきっかけで夫婦生活で満足させられなかったら…と、自信を失っていった夫・佐久間さんの苦悩をお届けしました。

▶▶『「男として終わり」なんかじゃない!病院に行くほどでもない…が、悩みをこじらせていた』

では、希薄な夫婦生活に耐えかねた妻から離婚を切り出されたものの、どのように関係修復をしていったかをお伝えします。

《OTONA SALONE》

特集

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