
現在のところは「不可逆」だと考えられている認知症。つまり、投薬等で「進み方をゆっくりにする」ことはできても、「元の状態に戻す」ことはできないとされる。しかし、認知症の初期、軽度認知障害(MCI)の段階で見つけ出し介入することで、認知機能の衰えそのものを遅らせることができるのではないかという研究が進められている。
この研究は東京大学大学院理学系研究科 合田研究室 細胞老化制御寄付講座の研究の一環で、松村寛行氏(東京大学)、篠原義康氏(東京リライフクリニック)らのグループによるもの。同グループは幹細胞・エクソソームを用いた老化や疾患の制御、再生医療における応用を手掛けるが、これらの分野はメカニズムや最適な応用方法については未解明の部分も多く、臨床的な実装に向けたエビデンスの確立が喫緊の課題となっている。
松村・篠原グループの研究は、世界から約400チームが応募した抗老化技術コンペティション「XPRIZE Healthspan」でTOP40に選ばれた日本6チームのうちの1つ「GODA LAB」の研究の一環。コンペティションではTOP40に選出されたチームが2026年3月末までに1年以内のセミファイナル臨床試験を実施し、その成績を元に2026年後半にTOP10(ファイナリスト)が選出される。ファイナリストは最終コンペティションのため4年の臨床研究を行い、優れた研究チームがグランプリとして選出される。
「XPRIZE Healthspan」は賞金総額が1億100万ドル(約150億円)と世界最大級であることが話題だが、狙いは人間を「10歳以上若返らせる」こと。人間の老化や長寿に対する治療アプローチに革命を起こし、健康寿命を積極的に10年以上延伸するという挑戦的な課題に取り組むことを目的とする。
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβとタウ蛋白の蓄積が数十年かけて進み、軽度認知障害(MCI)から中等度・重度へと段階的に進行するが、中にはMCIの段階で安定し、認知症へ進行しないケースも存在する。松村・篠原グループは「炎症の持続」がアルツハイマー型認知症の進行の鍵であると捉え、抗炎症作用・神経保護作用をもつエクソソームを用いて、この病理過程を抑制できる可能性を追求する。
松村・篠原グループの研究に関心がある場合、https://tokyo-relife.com/information/clinicaltest_01/を確認のうえ、要綱に当てはまる場合にアンケート(https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeCusoEMYKhqs170ZsXEF9KFePgo68_aEjwkA8F83e3ByWk5g/viewform)から応募を。
参加費用は無料だが、東京・銀座のクリニックに通えることが条件。




