
日々が飛ぶように過ぎていくなか、自分のあり方に漠然と迷う40代50代。まるでトンネルのように横たわる五里霧中ですが、そんななか「ほんのちょっとしたトライ」で自分のあり方を捉えなおすには、「最初の一歩」に何をしてみればいいのでしょうか。
ライター野添ちかこがオトナサローネ読者にインタビューを行い、リアルな女性の人生をお届けする本シリーズ。パート主婦だった45歳のトモコさんが正社員として就職後に離婚。自立を果たしたお話をお届けします。
◾️トモコさん
兵庫県神戸市在住の48歳、会社員。23歳と20歳の娘、元夫と別居し、現在は一人暮らし
【私を変える小さなトライ#42】
43歳、母が他界したのを機に、離婚を考え始める
トモコさんが離婚を意識するようになったのは、最愛の母が亡くなった43歳のとき。お金のことや子育てのこと、そして、何よりも夫婦2人の関係性……。結婚生活を営むうち、日々の小さなすれ違いがやがて大きなほころびとなり、フラストレーションが澱のように溜まっていきました。
そんな家庭内の悩みを聞き、サポートをしてくれていた母という大きな存在を失って、トモコさんの中でプツンと糸が切れたように感じたのです。
「母も夫婦関係ではいろいろあって、母なりに立派に人生をまっとうしたと思いますが、私も母のように頑張れるかというと、ちょっと違うかもしれない……」
我慢を重ねてきた母の姿と、自分自身がだぶりました。
「これまで離婚を言い出せなかったのは、親のため、体裁を保つためもあったと思います」
振り返ると、結婚を機に務めていた会社を退職し、2人の子どもにも恵まれました。周囲からは幸せだと思われる結婚生活でしたが、出張の多い夫で、子育ては今でいうワンオペ。「大丈夫?」と気にかけられることもなく、心の交流がない夫婦関係に、トモコさんをずっと苦しんできました。
「旦那にはお金があるのに、私はないのはどうして?」
夫は感情をあまり表に出さないタイプ。決まった生活費は家に入れるけれど、いくら収入をもらっているか、教えてくれませんでした。若い頃には女性の影もちらつきました。過去の女性問題は乗り越えましたが、そんなこともずっとしこりになって残っていました。
「私は子どもの生活に合わせて、家の近くでパートに出るだけ。対して、旦那は「自分の稼いだお金を使うのは当たり前」とばかりに自由に趣味や旅行に使っていて、「家庭内貧富の差」が激しいことにも納得がいっていませんでした。
「家のことは妻がやるから、夫は何の心配もなく外で仕事ができるのに、平等ではないのは、どうしてなんだろう……」
長年、連れ添ってきた夫婦だけれど、そんなお金に関するモヤモヤを解消できないまま、月日が過ぎていました。
子どもありきの人生だった私。正社員になって、46歳で離婚
そんな結婚生活に終止符を打つべく、トモコさんは、「生活を安定させるには正社員」と考え、45歳で就職活動を開始。無事、希望していた販売の仕事に就くことができました。
子どもありきの人生を送ってきたため、離婚にあたっては、子どものケアを第一に考えました。
「子どもを傷つけないよう、どのように伝えたらいいだろうと心を砕き、時間をかけて丁寧に話をしました」
「パパとママと一緒に過ごすのが居心地がいい」と感じていた繊細な娘の気持ちを思うと、心揺さぶられる思いもありましたが、「子どもはいつか離れて行く存在だから……」と、娘ともよく話し、納得してもらったうえで、人生をやり直すことを決意します。
いっぽうで、夫は「あー、そうなるんですね……」と他人事のような反応。これまでも会話のラリーが続かないことにしびれを切らし、反応がないことにもすっかり慣れていたトモコさん。最後も、夫の本心が見えないまま、結婚生活は終わりを迎えました。
これまで、収入がいくらあるのか聞いたことはなく、いざ離婚となっても、共有財産について公開されることはありませんでした。財産分与の話は一切なし。言ってきたのは「年金分割」についてだけでした。
「いくらか、用立てしてほしい」と話すトモコさんに、夫が渡したのは、引っ越し代と数カ月の生活費のみでした。
「そんな人間性にも、すっかり嫌気がさしてしまって……。これからは自分の稼いだお金で生活していくんだ」と決意を新たにしたといいます。
後編▶▶「48歳女性。離婚後、口腔ケアに挑戦!マウスピース矯正できれいな歯並びを手に入れた」
では、一人暮らしを始めたトモコさんが気になっていた歯並びを治したお話をお届けします。




