みなさん、こんにちは。インテリアアートスタイリストの胡桃(くるみ)です。このコラムでは、絵のある生活の提案をしてみたいと思います。
今回は、なんと画家のアトリエ訪問です。アートの溢れる創作の現場へお邪魔してきました。
【インテリアアートスタイリストが教える「アートのある暮らし」#6】
画家のアトリエってどんなところ?創作の熱気 溢れる空間へ!
今回は、洋画家・宮崎次郎氏のアトリエに訪問してきました。
普段、素敵な画廊やカフェなどで目にする絵画。その創作の場はどのようなところでしょう。
宮崎氏のアトリエに訪問すると、まずその創作の熱気に圧倒されました。
扉を開けた瞬間、絵の具の香りと鮮やかな色彩に思わず息をのみます。
「僕はその日の気分でいろんな絵に少しずつ筆を入れていくんだよ」
大切に筆を入れている作品が所狭しとアトリエに並んでいます。一枚一枚に独特の世界観があり、見入っているとあっという間に時間が過ぎてしまいそう。
作品のテーマとは
宮崎さんが作品のテーマとされているのは「サウダージ」
文化庁派遣芸術家在外研修員として渡仏して以来、一貫してその詩的な画風は多くの絵から感じ取れます。
—宮崎さん、「サウダージ(懐旧の情)」をテーマに描かれているとありますが、「サウダージ」とはどのようなものなのでしょう?
「サウダージ(Saudade)」は、日本語で表現するのは難しい。ノスタルジーとは別の詩的なニュアンスを含んだ言葉なんです。ポルトガル語由来の言葉で、僕の作品ではサーカスや旅芸人、黄昏の風景など、儚さと美しさの同居するモチーフがよく登場する。単なる懐古ではなく、夕暮れ時の曖昧な情景を表現しているのかな。
—確かに、この作品から漂う夕暮れの気配は、失われゆくものへの眼差しを宿している気がします。
アトリエについて
—こちらのアトリエは長く使われているのですか?
そうだね。アトリエの空間が肌に馴染むのには時間がかかる。僕はパリでのアトリエの記憶がとても大きくて、雰囲気はそれに似ているかもしれない。鎌倉でも活動しているけれど、鎌倉のアトリエは殆ど使っていない。(笑)
打ち合わせに使うこともあるけど、滅多に人は呼ばないな。画家にとってはアトリエは神聖な場所なんだ。
作風の変化
—イーゼルの傍にある素材、古新聞や包装紙、切手などが意外です。細かく切って絵に合わせている様子に驚きます。
最近は、紙や古い切手を組み合わせるコラージュが楽しくて、絵が変わり始めているんだよ。細かい作業だから大変だけど、あっという間に時間が過ぎてしまうんです。古い新聞も、日本語だとどうしても意味が飛び込んでうまく使いにくいから、フランスから取り寄せたり。包装紙も変わったものがあればつい買ってしまうよ。
あと、写真も楽しい。かなり撮り溜めた写真があるので、今度の個展では絵と一緒に皆さんにみていただこうと考えています。
アトリエ空間の飾り方
創作意欲溢れる宮崎氏のアトリエでしたが、こんな可愛らしいオブジェがたくさん飾られています。絵のモチーフとして購入することもあるそうですが、旅行中に買い集めたものが大半を占めていました。
「僕の絵はかなり色を重ねているから、光をちゃんと当てないと色が沈んじゃう。きちんと色を当てるとその深い色味が出てくるんだよ」
確かに!女優並みに光を欲しがる宮崎氏の絵は、ライトを当てるとスウっと奥行きが増します。絵を飾るときに少し光を工夫するだけで、こんなに違うんですね!
宮崎氏は、この秋、東京神楽坂で個展を予定しています。
油画だけでなく、写真なども展示する予定だそうで、このアトリエの空気に触れられる機会です。お時間が合えば、ぜひ足を運んでみてください。
宮崎 次郎(みやざき じろう)洋画家。第30回昭和会賞受賞者。
https://www.jiromiyazaki.com/
宮崎次郎 絵画と写真
Exposition de peintures et de photographies de Jiro Miyazaki
AYUMI GALLERY(Produite par la Galerie Mésange)
Ouverture : 10:00〜18:00
Accès :〒162-0805 新宿区矢来町114
(東京メトロ東西線神楽坂駅より徒歩1分 都営大江戸線牛込神楽坂駅より徒歩10分)
Dates de l’exposition :2025年10月25日(土)〜11月4日(火)
Vernissage:10月25日(土)17:00〜