日々が飛ぶように過ぎていくなか、自分のあり方に漠然と迷う40代50代。まるでトンネルのように横たわる五里霧中ですが、そんななか「ほんのちょっとしたトライ」で自分のあり方を捉えなおすには、「最初の一歩」に何をしてみればいいのでしょうか。
ライター野添ちかこがオトナサローネ読者にインタビューを行い、リアルな女性の人生をお届けする本シリーズ。今回は、子どもの頃から生きづらさを抱えていたクミコさんが、自分の本心と向き合うことで心のわだかまりが解け、やりたかったアパレルの仕事に就けたお話をご紹介します。
◾️クミコさん
大阪府在住の44歳。単身赴任中の47歳の夫、19歳の大学生の長男、高2の次男、中2の長女と4人暮らし
【私を変える小さなトライ】
「アパレルや美容の仕事がしたかった」でも、心にずっと蓋をしていた
スーパーのレジパートを6年間続けてきたクミコさん。しかし、「本当にやりたいこととは違う」というモヤモヤが大きくなり、思い切って若い頃から興味のあったアパレルの仕事の面接を受け、無事に合格しました。
「仕事は自己表現だと思っていますが、私は小さい頃から集団に入ることが苦手でした。卒業アルバムでも、写っているかいないか分からないくらい、人の輪に入れなくて……。自分を表現することも下手で、『自己表現できない=仕事もできない』というレッテルを自分自身に貼ってしまっていたんです」。
新卒当時は就職氷河期だったこともあり、保険営業の仕事に就いたものの、わずか7カ月で退職したという苦い経験もありました。本当はオシャレが大好きで、「アパレルや美容の仕事をしてみたい」という気持ちを持っていたものの、「キラキラした仕事は、きれいな人や自己表現ができる人だけのもの」と思い込んでいて、挑戦することすらできなかったそうです。
自分の心にずっと蓋をし、もどかしさを抱えながら、これまでの人生を生きてきたと振り返ります。
「私は私のことをどう思っているの?」 本心と向き合った時間
毎日、「このままの人生ではいけない」と思いながらも、行動に移すことはできず、朝が来るたびに「憂鬱な1日がまた始まる」と感じていたクミコさん。そんな気持ちを変えるきっかけとなったのが、心のあり方を見直す「マインドシフト講座」でした。受講を決めた理由は、子どもの頃から折り合いが悪かった母親との関係性を改善したかったからだといいます。
7カ月間の講座を通して、「自分を知ることがいちばん大切なんだ」と強く感じるようになりました。「自分は自分のことをどう思っているのか」「仕事に対してどんな考えを持っているのか」……。心と向き合ううちに、薄皮を一枚ずつ剥がすように、少しずつ本当の自分の気持ちが見えてきたと話します。
たとえば「自分の思いをノートに書き出す」というワークでは、ネガティブな感情が出てきても否定しないことを意識しました。講座の最後には「両親に手紙を書く」という課題があり、それを母に渡したところ、「子どもの頃、勉強を強制したのは悪かったと思っている。私も当時は必死だったのよ」と母から本音を聞くことができ、長年のわだかまりが溶け、心が軽くなったそうです。
自分の夢を思い出し、思い切ってチャレンジ。そして…
講座の受講中、講師の先生に「アパレルの仕事をやってみたかった」という気持ちを打ち明けたクミコさん。すると、先生から「やるだけやってみたらいいよ」と背中を押されました。それまでなかなか踏み出せずにいましたが、「失敗しても死ぬわけじゃない。まずは行動してみよう」という気持ちが芽生えたといいます。
求人に応募したのは、自分自身もよく購入していたお気に入りの洋服ブランドを扱う、某グループのショップでした。1店舗目の面接では緊張でいっぱいでしたが、回を重ねるうちに「自分を必要としてくれるブランドはどこだろう?」と考える余裕が出てきて、面接を楽しむ気持ちさえ芽生えてきました。そして3店舗目で見事に合格! 1カ月もかからずに、求職活動が実を結びました。
すでに研修を終え、初日の接客もスムーズにできたそうです。お客様と会話することが楽しく、お店で洋服を眺める時間さえも、クミコさんにとっては「幸せな時間です」と笑顔で話してくれました。
本編では、考え方を変える講座を受けたことで、憧れていたアパレルの仕事を始めることができたクミコさんのお話をお届けしました。
▶▶40代の仕事探しで気づいた、“自分らしく働く”ということ。ずっと心の中が辛かったけど、やっと正解にたどり着けた気がする
では、実際にアパレルの現場に立ったクミコさんが見つけた喜びと、新たな気づきについてお届けします。