オトナサローネ世代にとっては「美の神様」でもある、藤原美智子さん。2022年に突如ヘア&メイクアップ アーティストを引退し、経営していたマネジメント事務所もクローズ。現在は東京と下田の二拠点生活を楽しみながら、充実した日々を過ごしています。
2025年5月に発売された最新の著書「何歳からでも輝ける秘訣」(主婦の友社)では、現在67歳である藤原さんのライフスタイルや考えていることがあますことなく綴られています。
後編では、オトナならではの知っておきたいメイクルールや、短い人生どう生ききるかといった人生哲学まで、たっぷりとお話をうかがいました。
40代を過ぎたら「ラインメイク」に切り替えましょう
―――メイクに関する質問です。オトナサローネ世代が陥りがちな失敗、またオトナサローネ世代に伝えたいメイクの極意はありますか?
まず、コスメ選びについてです。アイシャドウや口紅など、何年も前のものを使っている人は、できる範囲でいいので、最新のものに買い換えてみてください。たとえば、最新の4色入りアイシャドウパレットをひとつ買えば、そこには最新トレンドが詰まっています。多少テクニックがなくてもそのまま使うだけで、トレンドを取り入れたおしゃれなメイクに仕上がります。
また機能面の進化もあなどれません。パール感やテクスチャーなど、数年前と今とでは全然違います。より使いやすく簡単にキレイなメイクができるようになっています。
一方で、スキンケアやファンデーション、マスカラ、アイブロウなどは、自分に合ったお気に入りのものを見つけておく方がいいですね。肌質やまつ毛、眉毛の色や生え方は人それぞれなので、いろいろと試して自分に合ったものを探してください。
―――メイクのやり方についてはいかがですか?
年齢を重ねた肌は、輪郭がたるんできたり、まぶたが下がってきたりと、全体にぼやけています。だからこそ、大人のメイクでは「ライン」でピシッと引き締めることが大事。
具体的には、アイラインはペンシルではなく、メイク効果の高いリキッドタイプを使ってほしい。入れ方は一直線に引くのではなく、まつ毛の根元を埋めるようにスッスッと細かく引くのがポイントです。目の印象がハッキリとするだけでなく、黒目も大きく強調されて、目元がひと回り大きな印象になりますよ。
眉に関しては、優しく見せようとして明るい色の眉にするのはNG。大人がやると顔がぼんやりして老けて見えてしまいます。眉もパウダーではなくペンシルを使い、毛が薄くなっている部分などを丁寧に埋めていきましょう。最後にスクリューブラシで輪郭をなじませるのを忘れないでくださいね。
―――大人には大人のメイク作法があるんですね。
残念ながら好きなメイクを好きなようにしていいのは20代半ばまで。若いアイドルの人のメイクは色をちょっとのせるだけでもかわいくなるんですけどね(笑)。
オトナ世代のメイクにはある程度のテクニックはどうしても必要なんです。普段すっぴんの人でもいざという時にきちんとしたメイクができるように、普段から練習をしてくださいね。
できない言い訳を考えるのではなく、今できる少しのことに目を向けて
―――40代50代女性の多くは、仕事に育児、そこに介護が加わったりして、毎日忙しい日々を過ごしています。そんな日々の生活に追われて「やりたいことがあるのにできない」とあきらめている人も多くいます。一方で藤原さんは、多忙な日々の中でもストレッチや食事へのこだわり、二拠点生活など、やりたいことをすべて実現してきたように思えました。そこについてはどう思われますか?
できない理由・やれない理由に目を向けがちな人たちに伝えたいのは、「難しく考えすぎずに、今できること、あるものに目を向けてみて」ということ。
例えばストレッチなら、ジムに通わなくても自宅や職場でもできます。美容にかける時間やお金がないのなら、自宅でストレッチをするだけでも血流がよくなるので、美肌効果につながります。
―――ついできない言い訳を考えてしまうんですよね。
よく「やりたいと思ったら何歳からでも始められる」とはいいますが、50歳から新しいことを始めるのと、60歳から新しいことを始めるのはやっぱり違う。50歳なら頑張れることでも、60歳になると頑張れないことが出てくるかもしれません。それを思えば、早く始めるに越したことはないと思います。
それにやりたいことを後回しにしていると、あっという間に5年や10年経ってしまいます。最近つくづく思うんです。人生は長いようで短い、と。本当にあっという間。言い訳したり、文句を言っている時間がもったいないと思います。
考え過ぎて行動に移せない人は、「考えなくてもいいことは考えない!」と決めてみてはどうでしょうか。時には直感を頼りに行動してみるのもよいものですよ。
―――人生は短いので、やりたいことをやり尽くしたいですね。
皆さんよく「時間がない」と口にしますが、「十二分に時間はある」と感じている大人は少ないのではないのでしょうか。私も忙しい日々を送っていますが、締め切りがあるものは前日までに送るように心がけていますし、集合時間にも遅れないようにしています。ちょっとしたことでも自分に決めごとを作ると逆に時間は生まれるようです。それに、それらは訓練でできることですから。
したいことをして、最後は「自分の人生、よく生ききった」と思えたらいいなと思っています。
「川の流れに任せながら行きたい方向に流れていく」の真意
―――著書「何歳からでも輝ける秘訣」の中で、藤原さんの人生の指針として「川の流れに任せながら行きたい方向に流れていく」という言葉があります。この真意をうかがえますか?
この言葉が心に浮かんだのは27・28歳の頃です。
スキューバーダイビングに行った時のことなんですが、その日の海は少し荒れていました。海の中も流れが強くて、最初はインストラクターの指示に従って流されないように岩にしがみついていたんですが、それでも海の中では飛ばされてしまうんですね。
でも、その時、フッとひらめいて、岩をポンと手で押してみたんです。そうしたら体がフワーッと浮かんで、自分の行きたい方向に簡単に動いたんです。
流れに身をゆだねながらも、ただ流されるのではなく自分の行きたい方向に流れる。そんな体験をしたとき、自分の中にインスピレーションが湧いて浮かんだのがこの言葉でした。
―――自然の流れには乗るけれど、そこにちゃんと自分の意思は反映させてていくということですね。
はい。そうやって自分軸を持って生きていくと、人を羨むことは減っていくように思います。もちろん、参考にするのはいいんですよ。人のいいところを参考にして、取り入れてみようという気持ちは前向きにさせますから。
私も若い頃、「ヘア&メイクアップアーティストとしての自分の個性はなんだろう」と悩んだことがありました。それで売れている人のセンスを真似してみたんですが、やっぱり自分らしくないし、好きじゃない。それがはっきりとわかったとき、「こんなことに無駄な労力をかけるなら、自分の芝生をもっと青くすることに時間をかけよう」とハラをくくりました。
―――ヘア&メイクアップアーティストをしている時に、自分の評価や噂話などは気になりませんでしたか?
本当に不思議なんですが、そういった話は全然私の耳に入ってこなかったんです。周りから「え、藤原さん、この話知らないんですか?」って驚かれたことが何度もあります。
それはきっと、私がそういう話は好きではないという空気をかもし出していたからかも。だから、周囲の人たちも私の前では話さなかったんだと思います。
私、人が集まって噂話をしている時の顔ってあまり美しくないし品がないなと思うんです。今はSNSの誹謗中傷が社会的な問題となっていますが、それらの情報に踊らされていると自分がすり減ってしまうのではないでしょうか。
まずは自分で判断して、取捨選択する力を持つこと。それが今の時代にはさらに必要なことだと思います。
ランニングを始めてホットフラッシュが気にならなくなった
―――更年期症状のようなものは、藤原さんにはありましたか?
ホットフラッシュの症状は多少ありました。ですが、50歳でランニングを始めたら、いつの間にかなくなっていました。運動したことで血流や代謝がよくなったりして、気持ちが軽くなったからなのかもと自分では考えています。
今思えば、周りにも悩んでいる同世代は少なかったかも。私がメイクを担当していた女優さんやモデルさんは皆さん、エネルギーに溢れている人ばかり。エネルギーがあるから症状が少ないのか、症状があまりないからお元気だったのかはわかりませんが(笑)。
それを思うと、今更年期症状で悩んでいる読者の方には、「無理のない範囲で外に出たり、運動したりしてみて」とアドヴァイスしたいですね。そして、ちょっとだけでいいので、昨日よりも頑張ってみる。そうするうちに体と心が変化していって、いい方向に流れていくかもしれません。
つづき>>>超激務ヘアメイク藤原美智子さんが「42歳で思い切って変えたこと」その顛末は?「顔も体も片側だけ引き攣った状態になるまで」働いて
『何歳からでも輝ける秘訣』藤原美智子・著 1,870円(10%税込)/主婦の友社
藤原美智子(ふじわら・みちこ)
ビューティ・ライフスタイルデザイナー。多くの雑誌や広告撮影のメイクアップアーティストとして活躍後、2022年に引退。現在は、執筆、化粧品関連のアドバイザー、講演、テレビ出演などで幅広く活躍。食や健康、ファッション、ライフスタイル、内面の磨き方などを提案している。2025年5月「何歳からでも輝ける秘訣」(主婦の友社)を発売。