清野菜名の“人生経験”が生んだリアルな演技「日曜の夜ぐらいは...」プロデューサーが語った「奇跡」のキャスティング秘話 | NewsCafe

清野菜名の“人生経験”が生んだリアルな演技「日曜の夜ぐらいは...」プロデューサーが語った「奇跡」のキャスティング秘話

芸能 モデルプレス/ent/wide/show3
生見愛瑠、清野菜名、岸井ゆきの「日曜の夜ぐらいは…」第2話より(C)ABCテレビ
【モデルプレス=2023/07/01】女優の清野菜名が主演を務めるABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ『日曜の夜ぐらいは...』(毎週日曜よる10時~)が、2日に最終話を迎える。同作のプロデューサーである清水一幸氏がモデルプレスのインタビューに応じ、タイトルに込められた意味や作品の魅力を語った。

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◆清野菜名主演「日曜の夜ぐらいは...」

女優の清野菜名が主演を務める同作は「人生とは、家族とは、愛とは」をテーマにした、あたたかな物語。足の不自由な母を支えるためバイトに励む岸田サチを清野、元ヤンキーで現在はタクシー運転手をしている野田翔子を岸井ゆきの、両親との縁が浅く借家暮らしをしながら祖母と工場勤務を続ける樋口若葉を生見愛瑠が演じている。

離れた場所に住み、お互いの存在も知らない3人は、あるラジオ番組のバスツアーきっかけに運命的な出会いを果たし、バスツアーの際に購入した宝くじが1等の3000万円に当選したことで物語が動き出す。その後3人は、それぞれが問題を抱えながらも友情を育み「カフェを開く」という共通の夢に向け奮闘していく。

ABCテレビは今年の春、単独制作では28年ぶりとなる全国ネットドラマ枠を新設した。本枠のコンセプトである「見る人の背中を押す作品」の第1弾となったのが『日曜の夜ぐらいは…』。本作の脚本を務めたのは、数々の名作ドラマ・映画を世に送り出してきた岡田惠和氏。そして企画・プロデュースを務めたのが『のだめカンタービレ』(2006年)『最高の離婚』(2013年)など、数多くの人気作を手掛けてきた清水氏だ。そんな清水氏から本作が生まれるにあたって岡田氏と交わした会話やキャスティングの秘話などを聞いた。

◆「日曜の夜ぐらいは...」に込められた思い

― 単独制作では28年ぶりとなる全国ネットの連続ドラマ枠を新設。第1作品目をこの題材にした理由はなんでしょうか?

清水:題材について考えていく上で視聴者の大半は女性だと思いまして、女性が見たいなと思う作品が良いと思いました。オリジナリティを大事にしたいという思いが大きくあり、それならば大御所の脚本家さんと一緒に組んで物語を作りたいなと。その中でまず、岡田惠和さんにご快諾をいただき話しをしました。ちなみに次の枠も脚本家の野島伸司さんのオリジナル作品『何曜日に生まれたの』が放送されます(笑)岡田さんは『ビーチボーイズ』 『若者のすべて』『彼女たちの時代』など多くの名作を作られていますが、中でも現代版の『彼女たちの時代』を作るのはどうかという話になったのが『日曜の夜ぐらいは...』誕生のきっかけです。

でもそれを売りにはしたくなかったため、情報出しのリリースを出す際には触れませんでしたが、1話放送後の視聴者からのお言葉で「『彼女たちの時代』みたい」との声があり、コンセプトは間違っていなかったと感じています。

― 確かに昔のドラマに近い雰囲気がありますよね。でも内容は、現代の子が共感できる部分もあるように感じました。

清水:そうですね。若い人たちに見ていただきたいということで、キャスティングは20代の方を中心に選びました。でもドラマが好きな視聴者の方は上の世代も多いですし、岡田惠和さんの名前で見ていただくのはドラマ好きの方が多いと思うので、その辺りのテイストは大きくずらさないようにした方がいいと思っていました。

― 『日曜の夜ぐらいは...』というタイトルに込めた思いはありますか?

清水:“日曜の夜ぐらいはテレビを見よう”とか、“日曜の夜ぐらいは楽しもうよ”とか、“日曜の夜ぐらいはちょっと贅沢しようよ”とか、見る一人ひとりが「...」の先に何か考えてくれればという思いがありました。また、4月から始めたばかりの枠ですから、日曜の夜に「日曜の夜ぐらいは...」を放送しているとわかりやすいと感じ、タイトルにさせていただきました。

― 第2弾の『何曜日に生まれたの』も、曜日繋がりなのは意味がありますか?

清水:特に理由は無いです。『何曜日に生まれたの』は、世の中にあまり知られていない“曜日占い”がテーマになるのですが、それを流行らせたいなと思い、このタイトルにしました。また、サチたちが開業する『サンデイズ』というカフェは、日曜の夜だけ遅い時間まで営業します。この店名には独りぼっちになる寂しさを紛らわせることができたらいいなという思いが込められており、それは最後まで一貫してこの物語の中で伝えていきたいと考えています。タイトルに“日曜日の夜”があるのもそれが理由です。

― 偶然リンクしていたんですね。

清水:そうなんです。次は多分曜日ではありませんが、10月も曜日になっていたらごめんなさい…(笑)

◆“リアル”を描いた理由

― 新ドラマ枠のコンセプトは「見る人の背中を押す作品」ですが、このコンセプトにした意図を教えてください。

清水:テーマは“今時の若者たち”です。生きづらさや閉塞感があったり、思っていることと違うと感じる出来事があったり、身近でありそうな話であり、ファンタジーであり…というギリギリの線を描いた作品です。当然のことながら宝くじが当たることなんて、なかなか無いでしょうし、親との関係は人それぞれですが、あそこまでデフォルメされた親や家族は普通ではなかなかないかもと思います。何もない日常の中にある刺激というのはドラマだから出来ることだと思いますし、視聴者の皆さんが「あの毒親出てくるな!」「とにかく幸せになって欲しい」と一喜一憂してくださる声を聞くとありがたいなと思います。

― 「日曜の夜に死にたくならない人は、幸せだと思う」など重く深みのある言葉が胸に刺さっている視聴者も多いと思います。日曜日に感じる「次の日が来ないでほしい」という現実やリアルな部分をドラマに取り入れた理由はありますか?

清水:この枠のドラマで何を見せたいかという話になった際、背中を押すことや頑張ろうと思わせるコンセプトが一番にありました。昔は「サザエさん症候群」という言葉があったと思いますが、日曜の夕方に放送されている「サザエさん」を見る時間になると、月曜日が始まるカウントダウンを感じて憂鬱な気持ちになってしまう子どもたちがいるのですが、台本を作る打合せの中で私達も実際に同じ感情を抱いたことがあるという会話になりました。岡田さんの「日曜の夜に死にたくならない人は、幸せだと思う」というセリフは的を射ていて見事だと思っていて、もちろんすべての人がそうではないと思いますが、日曜の夜から月曜の朝は憂鬱になり考え込む人が多いと感じます。この作品が完全に背中押せているかはわかりませんが、明日から頑張ろうと感じてもらえたら嬉しいです。

― ファンタジー要素もありつつ、視聴者に寄り添ったリアルな部分がこの作品の魅力ということでしょうか。

清水:そう思ってくださったら成功だと思います。フィクションなのでリアリティを突き詰め、追求し続けることが本当に正解かはわかりませんが、遠い世界の話になるのも違うと思います。視聴者の方が彼女たちを応援したいと思ってくださるのは、作品に感情移入してくださっているからだと感じていて、ファンタジーを織り交ぜたとしてもスパイスだと思って見てくださると思っています。

― 確かに、普通なら宝くじの当選金を分けるという発想にはならないですよね。

清水:当選金を分けることが彼女たちの友情の始まりになりますが、2話が終わった時に「当選金が300円で100円ずつ分けるでもいいじゃん」という声がありました。そうなると物語がどう転がっていたのかなと考えることもありますが、サチが会ったばかりの二人とそれだけの大金を分けたいと思うからこそ生まれた友情関係であり、各自持ち帰るのではなくみんなで使いたいと思う部分はリアリティとファンタジーをうまく織り交ぜることができたのではないかと思います。自分だったら3000万持ち逃げしているんじゃないかと思う人も世の中にはいると思いますが…(笑)

◆清野菜名・岸井ゆきの・生見愛瑠“アカデミー女優”揃いは「奇跡」

― メインキャストの清野菜名さん、岸井ゆきのさん、生見愛瑠さんのキャスティング理由をお聞きしたいです。

清水:清野さんが演じるサチには強さや明るさ、快活さがありますが、車椅子の母と2人暮らしで生活を支えるため必死にバイトに励んでいて、自分の楽しみがなく実は一番幸せではないはずですが、暗いわけではなく明るさやリアルさも兼ね備えています。そういった意味での存在感や雰囲気、お芝居の上手さも含めて清野さんがいいという話になりました。清野さん本人はあまりお話されないことですが、ご結婚されてお母さんにもなられたりと様々な人生経験をされてきた彼女の演技は、この作品においても非常に説得力あるのではないかと思う部分がありました。今回のサチという役柄は、明るい部分がだんだん出てきますが初めは、自身が背負っている事も含め、何もない日常をどういう風に生きるかという部分が重要でした。彼女であればできるだろうと思いお願いしたところ、ご快諾いただいたという流れです。

岸井さん演じる翔子という役は、ものすごく難しい役で。リズムが違うと言いますか、自己主張するときもあれば一歩引いて周りを見ることもできます。岸井さんも本当にお芝居がお上手であの方じゃなければできない役ですし、今年のアカデミー賞を取るほどの大変素晴らしい女優さんですから、清野さんが決まった上で岸井さんくらいの女優さんが演じてくださったら本当にいいなと思いオファーした中で「こういう役やってみたい」と言ってくださりました。間違いなく彼女でなくてはいけない温度感が画面によく出ているなと感じていて、翔子も辛い日常を送っていますが、無理してはいないのだけどもどっちつかずの明るさを演技で出す部分がさすがだなと思います。

― アカデミー賞を受賞された女優が揃ったのは偶然ですか?

清水:偶然です。キャスティングはアカデミー賞受賞以前にしているのでツイているなと思いました(笑)

生見さんはほかのドラマに出演されている時も、メインの役ではなくてもバチっと決めて、存在感を出すすごいお芝居だなと思わせる魅力があると思っていました。普段の明るい“めるる” とは全く違う、背負った演技を見事にできるというのは岡田さんといいよねと話していたんです。最初は若葉という役がどんな風になるかまで考えずにキャスティングしましたが、彼女が引き受けてくれたおかげで早口で喋ったり、ひとり語りのように緩急つけながら喋ったりする若葉という役柄ができました。

清野さん、岸井さんと一緒に3人で演技できることに対して気概を感じてくれましたし、それを楽しんでくださっているのが伝わります。あと、宮本信子さんと普通にお芝居ができているといいますか、おばあちゃんと孫の関係を作れているのはすごいなと思います。あの3人があの役をやってくれたのは、僕としては奇跡です。結果的に言うと他の人が演じることは考えられないですね。

― 若葉の母を演じる矢田亜希子さんもとても印象に残っています。矢田さんはあまりあのような役柄を演じるイメージがありませんが選んだ理由などありますか?

清水:この人に擦り寄られたら男がダメになる人は誰だろうという話になった時に矢田さんだと思いました。僕らにとってあんな可愛い人いないですから(笑)偶然ですが『やまとなでしこ』の時に矢田さんが演じていた“塩田若葉ちゃん”が、今作で若葉ちゃんのお母さんになったわけです。

― そこもすごい偶然ですね!岡山天音さんや川村壱馬さんの男性キャスト陣のもいいスパイスだなと思いました。

清水:みねくんも天音くんじゃないと成立しないですし、川村くんもイケメンなのですが前にぐいぐい出ていくわけでもなく普通にいるイケメンという感じがとてもいいです。第5話で少女漫画みたいな展開がありましたが、自然演じられているのも彼だからできた部分だと思います。彼は最終回ですごい告白をしますのでお楽しみに。あ、ラブの告白ではないですよ!

― 清水さんの最初のリリースコメントで「岡田惠和さんの描くストーリーとキャスト同士の化学反応とを合わせてお楽しみいただければ」とおっしゃっていましたが、実際にどのような化学反応が起きていると感じていますか?

清水:最初から当て書きとして書いていたのもありますが、まさにあの人たちのために書いたみたいな物語だなと思います。本当にこの3人は仲良くなるの?と感じながら視聴者も見ていたでしょうけれども、物語が進んでいくうちに応援したくなる存在になっていき、嘘みたいな話が実話のように見えてくるのは化学反応の結果なのではないでしょうか。

今や視聴者の皆さんは3人のことを真の友達だと思っているじゃないですか。若葉が会社を辞める時に駆けつけてくれる場面とか、翔子のことが心配になり、サチが夜中に自転車で家まで行くとか…。実際に僕も周りの何人かに聞いたら、友人と連絡が取れなくなってしまい、心配になり家まで行ったという経験がある人がいて、僕の中ではファンタジー要素かと思いましたが、世の中でもそのような出来事があるのだなと思いましたし、彼女たちが演じても不自然じゃないというのは、岡田さんが書いたストーリーに対して素直に演じてくれている化学反応だと思います。

◆最終話は「みんなが幸せになるよう作っています」

― 最終話に向けて、注目して欲しいポイントやストーリーを通して伝えたい気持ちを教えてください。

清水:このドラマの台本が3話くらいまで完成しているタイミングでMrs. GREEN APPLEさんに書下ろしをお願いして、素晴らしい主題歌『ケセラセラ』を作っていただきました。逆にあの主題歌を聞いて、岡田さんが「あー!こういう結末にしたんだ」と最後に感じてくださるのではないかと思うので必見です。主題歌と脚本という意味でもいろんな化学反応が起きているなと思います。このドラマは、視聴者さんが思うように最後はみんなが幸せになるよう作っていますので安心して最後まで見てください。ただ大きな幸せを得るためには、少しの不幸が起きるのが人生だと思うのでそこはエンターテイメントと思い、見守ってくださればと思います。

ABCテレビ・テレビ朝日系日曜よる10時の枠は、「背中を押す枠にします」と僕らは大きな声で言いながらも本当に背中を押せているのかという不安もありました。でもこういう子たちがいて、こういう子たちを応援したいなと思い、こういう子たちの人生を一緒に見ることにより、明日からも頑張ろうと見た方も思ってくださるのがドラマを作っている人間としてのご褒美だと思います。そう感じてもらえるような作品に仕上がりましたので、最終話の7月2日の夜まで楽しんでいただけたらと思います。

― エンディングの明るい主題歌とヨシフクホノカさんの絵がとても素敵ですよね。

清水:昔からドラマを作っていて、主題歌のかかるエンディングまでをドラマだと思っていただいた方がいいなと感じていて、最後まで見てくれる方法はないかなと考えていました。1、2話あたりは、主題歌を本編中にかけることができない雰囲気でしたので逆にエンディングでは楽しそうな彼女たちの笑顔を見てほしいなと思い、明るいテイストにしました。そこにスパイスというかほっこりするヨシフクホノカさんの絵があり、毎週変化して「今回はどういう風になるの?」「今週はどこが変わるの?」と視聴者にも興味を持っていただけたらいいなと感じていたので取り入れました。

― 最終話まで楽しみにしています。貴重なお話ありがとうございました。

(modelpress編集部)

◆清水一幸(しみず・かずゆき)プロフィール

1973年生まれ。上智大学理工学部化学科を卒業後、1996年朝日放送に入社し、ドラマ制作に携わる。2005年にはフジテレビに移籍し、プロデューサーとして活躍。ドラマ『のだめカンタービレ』『大切なことはすべて君が教えてくれた』『最高の離婚』『ファースト・クラス』『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』『パパ活』『東京ラブストーリー』などの企画やプロデュースに尽力。2021年3月にはフジテレビを退職し、翌4月に再び朝日放送に復帰。その後は、ドラマ『OTHELLO』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』『サブスク彼女』などのドラマや映画の企画やプロデュースに携わっている。

◆「日曜の夜ぐらいは...」最終話あらすじ

「サンデイズ」オープンが迫った夜、サチ(清野)は翔子(岸井)、若葉(生見)と“一番高いアイス”を食べながら、「お客さんが一人も来なかったらどうしよう」と不安を打ち明ける。

みね(岡山天音)は賢太(川村壱馬)と初めて2人で晩酌を交わし、邦子(和久井映見)、富士子(宮本信子)はカフェの成功とみんなの幸せを祈りながら、それぞれに一夜を過ごす。

そして、開店当日。サチたちは「サンデイズ」の扉を開く…。

【Not Sponsored 記事】
《モデルプレス》

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