車掌への処分をめぐる署名活動 | NewsCafe

車掌への処分をめぐる署名活動

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人身事故があったため、乗客の対応に当たっていた車掌(26)が、制帽と制服の上着を脱ぎ捨てて、ホームから線路に侵入し、高架になっていた駅から約5メートル下の地面に飛び降りたことが報道されました。車掌は負傷をしましたが、この件をめぐって、処分をせずに、心のケアに当たってほしいとする、ネット上の署名活動が話題になっています。すでに4万人が賛同しています。

車掌が飛び降りたのは近鉄奈良線東花園駅。ここはラグビーの聖地でもある「花園ラグビー場」(東大阪市)の最寄り駅です。9月21日午前11時ごろ、別の駅で起きた人身事故の対応に当たっていた男性車掌が突然、制帽と制服の上着を脱ぎ捨てました。そして、線路に入り、高架になってる同駅から約5メートル下の地面に飛び降りたというのです。

近鉄は報道の取材に対して「社内規定にのっとって車掌の処分を検討する」とコメントを発表していました。

近鉄では「被害者等支援計画」(2014年6月制定、15年4月改定)があります。それによると、事故が発生した場合、その規模に応じて対策本部を設置する。また、乗客の救護を最優先にすると、あたり前のことが書かれています。そのために、事故災害対応訓練、異例事態対応訓練、被害者等支援教育をするという、一般的なガイドラインとなっています。しかし、鉄道事故の形態によっては、車掌も心に大きなダメージを受ける場合がありますが、そのことは触れていません。

今回、約5メートル下の地面に飛び降りた車掌には何があったのでしょうか。署名活動の説明には、「飛び降りる直前の精神状態が極めて不安定であったのは明らかであり...」とあります。このあたりの心理について、新潟青陵大学の碓井真史教授はヤフー個人で「車掌はなぜ制服を脱ぎ飛び降りたのか?」という記事を配信しています。「今回の行動は常識的には理解できません」としながらも、心因反応の可能性を指摘しています。

衝撃的な出来事やストレスによって心に強いダメージを受けたときに、常軌を逸したように見える反応をしてしまうのです。当の車掌が、事故対応に当たっていたのを目撃した人がツイッターで、<40~50代の人が取り囲んで「はよ再開させろや」.,「タクシー代出してくれ」、「声ちっちゃいわボケ」>と書かれており、クレーマーがいたことを示唆する書き込みがありました。

車掌にとって、このクレームが直接、心理的に影響を及ぼしたのかどうかわかりません。事故処理以前の心理状態に何かがあり、クレームによって誘発させたという可能性もなくはないでしょう。

署名活動の説明は以下のようになっています。

<近年、鉄道職員に対する暴力や暴言が横行していると聞きます。実現不可能な過大要求をするクレーマーや大声で暴言を浴びせるクレーマーなど悪質なクレーム行為が後を絶たず、多くの鉄道職員を悩ませているとのことでです。まさに今、鉄道会社には悪質なクレーム行為から職員(大切な社員)を守るといった強い態度が必要かと思われます。

このキャンペーンの目的は、車掌さんの人事処分を一旦白紙とし、事件の原因およびその背景など事実関係を十分に調査し、車掌さんに対する寛大な処遇ならびに心のケアを優先的に行うよう求めた嘆願書(賛同者名添付)を近鉄本社に提出することにあります。>

「クレームが横行している」かどうかはわかりません。しかし、悪質なクレームがあれば、鉄道職員を悩ませることは想像ができます。ツイッターにあったように、「はよ再開させろや」、「タクシー代出してくれ」、「声ちっちゃいわボケ」と言われたのであれば、心理的圧迫を受けたかもしれません。

人身事故が起きれば、乗客は苛立ちします。午前11時となれば、午前中の仕事の真っ最中です。ビジネスによっては時間的な猶予がない場合もあるでしょう。そのため、思わず、クレームを言ってしまう乗客の心理も理解できます。一方で、車掌を困らせることが目的だった可能性もゼロではありません。

鉄道トラブルは一朝一夕で解決するわけではありません。人身事故がゼロになることはないでしょうし、乗客のクレームもなくなることは考えにくいです。そのため、鉄道会社としては、トラブルを前提とした乗客対応が求められます。その意味では、クレーム対応の訓練の必要性を明るみにさせたと言えるでしょう。と、同時に、車掌のメンタルチェックも大切になってきます。
[執筆者:渋井哲也]
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