減少目標は達成したか?....自殺対策基本法が改正 | NewsCafe

減少目標は達成したか?....自殺対策基本法が改正

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年間自殺者は1998年以降14年間、3万人を超えていましたが、6年連続で減少し続け、2万3971人となりました。2万5千人を下回ったのは18年ぶりとなります。そんな中、改正自殺対策基本法が22日、衆議院本会議で全会一致で可決、成立しました。06年6月に基本法が成立して以来の改正となりました。

年間自殺者3万人台から約2万4千人になったということは、6千人以上も減少したことになります。しかし、これまでの日本の自殺者数を見てみると、バブル崩壊以後の年間自殺者3万人台のほかは、ピークは1958年の2万3641人、86年の2万524人の2回あります。これらの数字を前提にすると、約2万4千人は、過去のピークとほぼ同じです。

基本法が成立した時期の自殺対策の数値目標は、2005年の自殺死亡率を20%以上、減少させることでした。警察統計で見てみると、05年の自殺者は3万2552人、人口10万人あたりの自殺死亡率は25.5でした。15年の自殺死亡率は18.9。当初の数値目標を達成しました。

もちろん、自殺対策基本法それ自体の効果があったのかどうかは検証の必要があります。もっとも減少幅が大きかったのは50代です。05年50代の自殺者は7586人でしたが、15年は3979人で3600人減少させました。自殺死亡率で39.7から25.5になりました。

60代も31.7から21.8に減っています。警察統計では05年当時の統計では60代以上という数値になっているため、60代と70代、80代以上とした07年を参考にすると5710人。15年は3793人で約2000人減っています。

50代と60代だけも約5600人減少したことになります。もっとも大きかった対策は、06年1月に最高裁が「グレーゾン金利を認めない」旨の判決を下し、貸金業規制法を改正したことではないかと考えています。ただ、これは経済状況の改善や借金・多重債務の規制強化とのセットです。何か特別な自殺対策が効果的だったのかどうかは未知数です。

生前の思考や行動を遺族らから聞き取る「心理学的剖検の症例対照研究」では、「借金の有無」だけを見れば、自殺死亡率に有意差がありません。しかし、多重債務の経験では「ある」方が「ない」方に比べて25倍のリスク、なかでも「返済困難な借金」がある場合、ない場合と比べるとある場合が38倍のリスクがあるとのデータもあります。

一方、若者層はどうでしょうか。19歳以下は05年では2.5ですが15年も同じです。20代は05年の21.7から15年は18.5でやや減少でした。30代も24.8から19.7と増減を繰り返しながらも昨年は減っています。40代は31.9から22.0と60代とほぼ同じ減少幅でした。一方で、中学生は101人で、昨年の74人から27人増えています。「学生・生徒等」の合計ではやや減少ですが、中学生だけ増えました。中学生の問題は、今後の課題となるでしょう。

なぜ自殺者が減ったのか。専門家の中でも議論があるところです。「自殺死亡リスクの高い人たちが3万人台の時代に亡くなってしまったのではないか」という見方をする専門家もいます。もちろん、先ほども述べたように、約2万4千人の自殺者数は過去のピーク時と変わりません。それだけ遺族(もしくは、大切な人を亡くした人)となる人がいるということです。そのため、効果的な対策は何かを見極め、探し、活用していくことが求められるでしょう。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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