もうすぐ震災から5年。消えゆく震災報道 | NewsCafe

もうすぐ震災から5年。消えゆく震災報道

社会 ニュース
11日はもうすぐ東日本大震災から5年目です。12日からは東京電力福島第一原子力発電所(1F)の事故による避難が始まりました。多くのテレビや新聞が震災のことを取り上げると思います。数日前、熊本県に出張していましたが、熊本の地元紙・熊本日日新聞でも取り上げられていました。7日付の社会面では、宮城県石巻市から熊本県に避難した家族の話や、1Fの現状の記事が掲載されていました。

震災報道が多くなる中で、週刊誌による報道は減っています。私が関わった週刊女性はおそらく、5年目の震災報道では最も多くのページを使っているのではないでしょうか。私も遺族のことや支援者のことで5ページを書いています。週刊プレイボーイも比較的多くのページを使っています。

この二誌以外では、週刊ポストや週刊現代、週刊アサヒ芸能がグラビアで見せています。アサヒ芸能は、震災後と最近の写真を比較して掲載しています。私も写真を提供しました。週刊現代の写真も「5年目の海」を掲載しています。震災後に海底を写した写真にテストの答案用紙があり、「私のだ」という持ち主の、5年後のインタビューが掲載されています。週刊ポストでは、毎年、高台から見つめるお年寄りの後ろ姿を写したものがあったのですが、今年はその写真はありません。

さて、震災に限らず、大きな事件・事故ではこうした記念日報道がされます。昨年は戦後70年ということもあり、いつもの年よりも8月15日は多くの報道がされたように記憶しています。阪神淡路大震災も小さいながら、毎年のように報道されています。ただ、阪神淡路大震災は、同じ年に起きた地下鉄サリン事件があったためもあり、報道の量は早い段階で減っていきました。

事件や事故の大小にかかわらず、記憶や経験は風化していくものです。そのため、3月11日が特別な日だと思う人が今後も減っていくかもしれません。忘れることによって生きていけると思う場合もあるでしょう。また、特に西日本では、地震そのものの共有体験がありません。他人事のように感じてしまったとしても、仕方がないことだと思っています。

ただ、伝える側のメディアは、事件や事故、災害から学んだ教訓を伝え続けることが大切です。東日本大震災でも同じことが言えます。復興がすすまない中で見えてくるものは、被災地特有の問題もありますが、被災地以外でも共通する問題が見えてくる部分もあります。

日本は少子高齢化を迎えています。いずれ超高齢化社会を迎えます。被災地の沿岸部では、もともと高齢化社会でしたが、震災によりさらなる高齢化が進んでいます。高齢化によって、コミュニティをどのように維持、運営をしていくのかが課題となっています。平成の大合併を経て、行政の効率化を図ってきました。しかし、それだけでは測れないものが多く残されています。

震災では多くの死者・行方不明者を出しました。思い出の風景や品物、さらに人間関係、仕事を失っていきました。そうした「喪失」による悲嘆(グリーフ)のサポートについて関心が高まりました。交通事故1万人時代や阪神淡路大震災、自殺者3万人時代などを経験し、グリーフへの関心が徐々に出てきていました。そうした素地があったため、グリーフに関連する団体が東日本大震災でも活躍しています。

ただ、原発事故の影響はまだ合意形成がなされるほどの"教訓"になっていないことが多くあります。現在でも、どのくらいの放射線量であれば、人が住むのに安全なのかは、もはや思想論争というほどになっています。福島県内でも他の地域でもそのあたりの対立は厳しいものがあります。そのため、福島産の農産物を食べるのかどうかも気にする人は過剰になっています。最終的には原発をこれ以上作るのか、再稼働をするのか、が対立軸になっています。

もちろん、すべての問題を考えることはできません。しかし2011年3月11日がもたらしたものがあります。「AERA」は、震災の経験で変わった人々を記事にしています。政治を考える人が出た一方で、被災地へのIターンUターンの事業に取り組んでいる人もいます。私の周りにも変化した人もいます。悲しみもありますが、失ったからこそ、得たつながりも多くあります。

「あの日、あの時間」。私は家の近くを歩いていて大きな揺れを感じました。目の前でお寺の外壁が崩れたのを見ました。まさか、あれほどの被害を出す震災になると思ってもみませんでした。あれから、3月11日はどこかの被災地で取材をしています。今年もどこかの被災地で時を過ごすことになりそうです。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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