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他人事ではない介護殺人

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「自由に使える金が欲しかった」

兵庫県赤穂市で、19歳で会社員の少年が、60代の養父母を殺害したとして兵庫県系に逮捕され、神戸地検姫路支部に送検されました。少年の供述通り、勤務する土木建設会社のある佐用町内の参道脇で、一つの袋に入っていた血の付いたハンマーと包丁が見つかったといいます。

報道によると、少年は、夫婦の娘の子ども。数年前に養子になり、3人で暮らしていました。高校卒業後、建設会社に勤務していました。少年は高校時代から家の農作業を手伝っていました。夫婦の代わりに町内の水路掃除や土手の草刈りにも加わっていたといいます。近所の人の話を総合すれば、おとなしく、事件を起こすような印象はなかったといいます。

何があったのかはわかりませんが、「遊ぶ金が欲しくてやった」と供述しているといいます。少年は「家の跡継ぎのために養子になった」と話しているようで、給料は、自分の小遣い1万円を除いて、全額を渡していた。友人が多くはない、と勤務している会社の社長はいっています。

もちろん、どんな理由があろうが、殺人は絶対的に良くありません。しかし、何が少年に殺害衝動のきっかけになったのでしょうか。少年は仕事をするかたわらで、養父の介護をしていました。1月ごろ、自分の病気も重なって、約20日官、連続で欠勤したといいます。そして、事件数日前、養父から「働きに行け」と言われたことで口論になったといいます。

小遣いの1万円を除いて給料の全額を養父母に渡し、養父の介護もして、近所からは寡黙な良い子として見られている。友人も多くないということは、ほどよいストレスのはけ口がなかなか見つからないのではないかと思えるのです。小遣いが1万円ということは、ほとんどが家と職場の往復だったのではないかと想像できます。それ自体、理不尽に感じてもおかしくはありません。

特に複雑な家庭環境というわけでもありません。そのため、それ自体が福祉の対象ではないのでしょう。もちろん、家族ですので、どこの家族とも同じように、世代間のギャップによるストレスが多少なりとも感じていたことでしょう。しかし、そうした感覚は彼だけに訪れるわけではありませんが、特に男性は、SOSを発しにくいとも言われています。誰かに相談したるが苦手なのです。

警察庁によると、殺人の理由に「介護疲れ」を取り入れたのは2007年。年間50件前後で推移しています。また、2014年に「介護疲れ」を理由に自殺した人は246人(男性136人、女性110人)となっています。介護疲れはまさに、殺人や自殺のリスク要因になっているのです。

2012年6月、明治安田生活福祉研究所が「介護生活の実態と意義に関する調査」を公表しました(Webアンケート調査、マイクロミルの登録モニター対象。40歳以上79歳以下の男女、回収数1032人)。それによりますと、「介護をしていて苦労を感じる(感じた)か」を訪ねたところ、男性の89.3%、女性の93.8%がなんらかの苦労をkなじています。もっとも多いのは男女ともに「精神的な負担」で、4人中3人です。ついで「時間が拘束される」「四諦的な不安」が続きます。、

まだまだ遊びたい盛りの19歳。そんな年代の子どもが主たる介護をするようになれば、負担を感じないはずがありません。

「家族介護者の実態と支援方策に関する調査研究事業報告書」(2011年11月調査)によると、「介護ストレスと解決策」に聞いてるが、男性の場合、「ストレスがあるが解決策があった」が58.3%、「ストレスはなかった」が17.8%。「ストレスがあった」場合の解決策は、男性の場合、「趣味や遊びで気分転換すること」が52.3%、「要介護者を一時的に預かってもらう」が37.7%でした。

日本福祉大学の「介護実態に関するアンケート」(2007年、8486人が回答)によりますと、約4人に1人がうつ状態で、65歳以上の3割が「死にたいと思うことがある」と回答しています。

19歳の少年はうまく気分転換する方法も見つけられず、また、介護疲れを感じたときに、一時的に預かってもらうということをしなかったように思われます。つまり、ストレスを感じたときの解決策が見つけられなかった、のではないでしょうか。今回は、たまたま、祖父母が孫を養子縁組したこともあって、少年事件となりました。しかし、こうした問題は、高齢者社会を迎えている現代では、他人事ではありません。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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