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賃上げはどこまで波及する?

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春闘(企業への賃上げ要求)の時期ですが、時事通信などによりますと、自動車や電機などの大手企業が、高額のベースアップを労働組合に回答した、と報じられました。労働者側にお金が回ると、景気の好循環が期待されます。

報道によりますと、組合の組織率の低下の中で高額回答が得られたのは、政府からの賃上げ要請や円安が大きいようです。トヨタ自動車が02年以降では最も高い月額4000円(要求6000円)のベースアップ、一時金は6.8ヶ月を回答したとのことです。

電機では日立製作所やパナソニック、東芝などでも3000円のベースアップ(要求6000円)で、現行の方式では過去最高となっています。三菱電機では一時金は過去最高の6.03ヶ月分となっています。

しかし、大手企業が高額回答をしたとしても、日本全体の景気循環から考えれば、中小企業の賃上げ回答がどうなるのかも焦点です。さらにいえば、非正規雇用や社外への外注費などがどうなっていくのかも気になるとことです。

労働組合の組織率は20%を切っています。組織率が低下したのは正社員が減ったこともあります。また、組合員になったとしても、春闘などで得られた成果が非組合員にも及ぶことが多いため、組合員でなくても、基本的には差はありません。ただし、正社員のための組合という考えがまだ強いと思われます。

私も新聞社の社員だったとき、ユニオンショップ制だったために、入社をすれば、組合員でした。そのため、100%組合員です。職場ごとに要求事項を決めて、全体でそのときの要求事項で何を出すかを考えます。私の頃は、なかなかベースアップが叶わなかったため、他の手段を考えました。たとえば、誕生日休暇(実際には誕生月なら取得可)が実現できたのはよかったと思います。

ただ、今から考えてみると、パートタイマーの労働条件については一度も話し合ったことも、要求したことはありませんでした。社内にはパートタイマーがゼロではありません。その意味では、やはり、正社員のための労働組合だったのでしょう。

しかし、今の時代、正社員だけ回っている会社は少なくなっています。たとえば、正社員のほか、契約社員や派遣労働者、パートタイマーなどの多様な雇用形態があります。もちろん、大手の労働組合の中には正社員以外の労働者も組合員になれるためもあって、正社員以外の労働者の賃上げ要求も議題にあがっています。

厚生労働省の調査によりますと、14年6月末の時点で労働組合の組織率は17.5%となり、過去最低を記録しています。組合員は984万9000人に減っています。とはいえ、アメリカ(11.9%、2008年のOECD調査)や韓国(10.9%、同)、フランス(7.7%、同)よりは高いのです。

組織率が低くても、影響を与えられている国もあります。労働協約のカバー率で見ますと、日本では、労働者全体の16.0%(2008年のOECD調査)ですが、フランスは90.0%(同)と高水準となっています。

現在は都市部や大手企業だけが「アベノミクス」の効果があると言われています。大手企業での高額のベースアップ回答の流れを、日本の大多数を占める中小企業や、増加している非正規雇用の労働者、また、都市部だけではなく地方でも、さらに言えば、自営業者やフリーランサーへの外注費まで波及させたいところです。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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