人間を点と見た非人間性 | NewsCafe

人間を点と見た非人間性

ビックリ ニュース
兵士の命を危険にさらさず、遠隔操作で戦場の任務を遂行する無人機。これまでアメリカやイスラエルが積極的に開発を進めてきたが、最近は中国も無人機開発に手をつけ、尖閣諸島付近の上空に現れるなど、無人機の運用が世界的に広がっている。さらには、「自律型」のロボット兵器開発も進んでおり、近い将来、攻撃の判断すら無人化された「殺人ロボット」が戦場の主役となる日も考えられる。しかし、こういった無人化される戦場に対し、国連が人権への影響に強い懸念を示すなど、大きな問題となっている。

■無辜(むこ)の民を巻き込む空爆
アフガニスタンとの国境に接するパキスタンの部族地域は、タリバンと国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力の拠点であり、2004年から米・無人爆撃機の最大の標的となっている。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によると、2009~13年にあった無人機による6件の空爆を検証した結果、死者82人のうち57人が市民だったと発表した。無人機の脅威は、常に部族地域を脅かす存在であり、パキスタン首相は、米軍による空爆の停止をオバマ大統領に厳重抗議している。しかし、テロリストと一進一退の攻防を続ける米としても揺るがない姿勢をみせ、平行線を辿っているのが現状だ。自国の政府に不信感を募らす市民らは、世界へ訴えることを意識し始める。

■アートで世界に訴える試み
現在、最も注目されているフランス人アーティスト「JR」。地域・社会が内包している問題を巨大な写真で表現し、ところ構わず張り出すことで「世界で最も大きな展示場を持っている」との呼び名を持つ新進気鋭のストリートアーティストだ。JRは、パキスタンでの米軍による無人機誤爆問題に憤りを感じ、ある試みで世界にこの問題を訴えた。

■巨大なポートレート
JRらは、無人機が放ったミサイルで肉親を失った子どもを写した巨大なポートレート(肖像画)を、パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州にある農村に設置した。その目的は、操縦士らがビデオカメラを通してポートレートを見ることで、無差別に攻撃ボタンを押す前に巻き込まれる民間人のことを考えてほしいと呼び掛ける為だ。SOSサインを上空から識別するパイロットの役割を上手く利用した試みだ。JRの主張では、最終的には米政府に対話を作り出すことが希望であると語っている。しかし、市民を人質にとるようなテロリストらをも保護してしまうとの懸念の声も上がっている。

■なぜ有人機ではなく無人機?
気になっていた方もいるかと思われる。なぜ米は有人機ではなく無人機にこだわるのか。米とパキスタンは戦争状態がなく、テロリストの身柄を拘束するにはパキスタン政府に依頼するしか手段がないのだ。しかし、それは不可能。パキスタンの軍や警察には反米的な人物が混じっており、容疑者に情報が漏洩して取り逃がす可能性があるからだ。米軍が有人の戦闘機でパキスタン領内を攻撃すると、戦争状態のないパキスタンに攻撃を仕掛けることになるので、超法規的な手段にでているのだ。しかし、無人機ではオペレーターの、「人間を点と見た非人間性」が生じ、こういった誤爆などが多発してしまう。

テロはNOだが、ピンポイントの誤爆なら良いのか?

米によるピンポイントの誤爆が黙認されるのは、米の敵が何かをすると「非人道的」であり「テロ」と呼ばれているだけであり、世界最大のテロ国家の罪をごまかすただの方便だと筆者は考えている。米・パキスタン・国際テロ組織に板挟みされる市民の救いは、この問題を知った世界の人々の小さな行動にかかっている。WEBでホワイトハウスに抗議したり、国際人権団体に署名するなど、様々な方法がある。子どもや、武力を持たない人々が殺害されてゆく現状にあなたはどのように考えますか?

画像: Drone Art Project
参考元: THE WORLD POST(英語ページ)
【執筆者:王林】
《NewsCafeコラム》
page top