「なぜ自殺はいけないのか?」。その答えは... | NewsCafe

「なぜ自殺はいけないのか?」。その答えは...

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今月は「自殺対策強化月間」です。一年間で「3月」が最も自殺が多くなるという統計をもとに毎年設定しています。東日本大震災があった2011年は、3月に地震や津波、原発事故による被害が大きかったためか、例年とは違い、自殺者は減り、ピークが5月となりました。これは異例の傾向でした。

さて、震災前はそれなり広報がされていたと思いますが、今年はあまり見聞きしません。広報していないわけではありません。内閣府自殺対策推進室はポスターを掲示し、その中で、全国一斉こころの健康相談統ーダイヤル(0570-064-556、地域によって開設時期、曜日、時間が異なります)やよりそいホットライン(0120-279-338、24時間対応、外国後も含む)を載せています。

また、Yahoo!JapanはPR企画として、『「ココロの黄色信号」、見逃していませんか?』という特設サイトを内閣府と協力して作成しています。『「ココロの黄色信号」診断テスト』があり、自己診断ができます。また、苦しいときに身近な人や街で出会った人からの支えられた一言が載っています。

その中で私が共感したのは、

保健室の先生からの言葉として、23歳の女性が投稿してしたものでした。

<みんなが「がんばって」という中で、先生だけ「がんばったね」と迎え入れてっくれました。その一言で私は救われました>

また、救命センターの看護士からの言葉として、33歳の男性が投稿した言葉にも、ホロリとくるものがあります。

<ただ、穏やかに、カーテンを引いて外を見せてくれて「今日、クリスマスですよ^^」って^^ それに気がつかずに、毎日心身をすり減らして、激務をずっとこなしていたのかもしれないのに。>

何があったのかは想像するしかありませんが、苦しいときに、そんなこと言われたら、ほっとするのだろうと思わせます。もちろん、人によって、またはタイミングによっては「支える言葉」ではないこともあるでしょう。しかし、そうした「言葉」と出会えたことで、彼女も彼も今があったのかもしれません。

ただ、なぜ自殺はいけないのか?と聞かれたらなんと答えるのでしょうか。朝日新聞の(悩みのるつぼ)で、いじめを体験した18歳の女性が「なぜ死んではいけないのでしょうか?」と聞いています。それに評論家の岡田斗司夫さんがこう答えています。

<自殺とは「この世の中に生きる意味や価値がない、ということを、私の命を投げ捨てることで証明してやろう」という主張です。なので死ぬことによって「世界の無意味さ」を訴えてしまう。
こんなことされたら、生き残った側の人はすっごく迷惑です。「いや、この世は生きる価値があるんだ」と反論したくても、相手はもう死んじゃってるんですから、とんでもなく気まずい気分がいつまでも晴れません。
自分とは縁もゆかりもない人が自殺した時に感じる不安や不快感の本質は、この「究極のノーサイン」です。自殺とは、残された人全員にとっては「呪い」なんです。>

たしかに遺されたものにとってはそうでしょう。しかしこれはあくまでも遺された側の論理で、当事者に響くのかはわかりません。そのため、岡田さんは<「死にたい」と真剣に悩んだことのない私には、以上のような「論理的な回答」が限界です。>と書いています。これを読んで、岡田さんは正直だな、と思いました。

私は「自殺」をテーマに取材を続けていることもあり、「死にたい」という数多くの人たちと接しています。なかには亡くなった人もいます。そのため、私は自殺を否定はしません。が、同時に肯定もできません。自殺を止めるとしても、選択肢の提示がなかなかできないことがありますし、専門家につなげても、状況が改善されるとはかぎりません。仮に「生きる」選択を提示するとすれば、その苦しさの中で、すぐには改善されないとしても、生きることの動機があるか、となると思うのです。

もちろん、自殺の直前は、ネガティブな思考となり、抑うつ状態になっている可能性が多いにあります。そのため、論理的な選択肢の提示にどのくらい意味があるのかは疑問です。また、状況が改善されたとしても、その直後に自殺をするケースも多々あります。たとえば、借金を返済し終わってからの自殺もあります。

身近に「死にたい」と思うような人がいて、死んでほしくないと思うのなら、ヒントを共に探す関係になれればよいと思います。そのために、自分の時間を少しだけ相手に与えることができるか。また、複数の人たちで支えることで、1人の相談者の負担も減らすことができるかもしれません。

「なぜ自殺はいけないのか」。その答えは当事者の中にしかないと思います。周囲の人たちは、当事者にヒントを与え続ける、あるいはヒントや答えを一緒に考え続けることで、見つけていくしかないと思うのです。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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