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ミイラ取りがミイラになる

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「ミイラ取りがミイラになる」。そうしたケースがあったりします。盗撮や痴漢行為でも起きました。警察官や報道に携わっていると、一般の人よりも、手口を詳しく知ってしまう立場にあります。事件を取材していると、私を含めて記者としては、「どうして犯人は、こんなことをしたんだろう?もっと、こうすれば、証拠を残さなくて済んだかもしれないのに...」などと思うこともあるものです。警察官であれば、なおさらでしょう。

最近、警察官が盗撮をしたことで処分されました。神奈川県警は、女性を盗撮したとして男性警官2人を停職3カ月の懲戒処分とし、発表したのです。2人は依願退職しています。取り締まる側の警察官が中高生に対して罪を犯したのです。

1人は大和署の巡査部長(37)です。9月28日、相鉄線の車内で座席に座ってデジタルカメラをタオルで隠し、向かい側の女子高校生(16)を盗撮したというのです。自宅などからは女性の全身が写った約600枚の写真が見つかったのです。2005年から出勤途中の電車で盗撮を繰り返し、以前にも同じ高校生を盗撮したとして追送検されていたというのです。

もう1人は藤沢北署の巡査(25)です。10月6日、同県平塚市の書店で女子中学生(15)らのスカートの中をかばんに隠したビデオカメラで盗撮したとして、同月16日に同条例違反容疑で書類送検されました。女性の下着などが映った動画40ファイルが自宅から見つかった。警察官になる前から盗撮していたというから、盗撮魔が警察官になったという意味で驚きです。もちろん、発覚しなければ、どんな犯罪者でも警察官になれるわけですが。

2人の警察官のケースは、あきらかに確信犯です。繰り返し盗撮が繰り返されていました。大和署の巡査部長は2005年から盗撮をしていたのですから、もう7年もしていたのです。一方、藤沢北署の巡査は、警察官になる前から盗撮を繰り返していました。犯罪の捜査をするということは、警察官は最も手口を知り得る立場になります。捜査していくうちに、手口を覚えこともあり、ある警察官は「こうすれば見つからなくていいのに」と考えたこともあるとか。しかし、そう考えたとしても、ほとんどの警察官はしないものです。警察官もたくさんいますから、もともと犯罪予備軍のような人もいるかもしれません。そんなことを思ってしまいます。

また、報道する側がニュースのネタになるという意味で「ミイラ取りがミイラ」となるケースもありました。NHKアナウンサーで、「おはよう日本」の土日祝日を担当していた森本健成(たけしげ)容疑者(47)が強制わいせつ容疑で逮捕されたのです。11月14日、東急田園都市線の電車内で、女性(23)の下着の中に手を入れて胸を触った疑いです。女性が社内で森本容疑者を取り押さえ、110番通報しました。玉川署の調べに「覚えはない」として容疑を否認していましたが、東京地検は処分保留のまま釈放しています。

ときおり、報道する側が「ネタ」になってしまうことがあったりします。痴漢や薬物といった事件で多いような気がします。もちろん、痴漢の場合、冤罪の可能性がありますが、森本容疑者の場合、強制わいせつ容疑です。迷惑防止条例とは違って、被害者の被害届が必要になります。酒に酔っていたということですが、類似のケースは何度もニュース原稿で読んでいるはず。酒に酔っているのなら、電車に乗らない手段を考えられたのではないでしょうか。前出の警察官のケースとは違いますが、「こういうことはありえる」と知っていたはずで、視聴者に注意を促す立場です。

もちろん、こうしたケースは、罪を犯した場合、かっこうの「ネタ」になりやすいから、警察も発表するし、報道側も追いかけるものです。とはいっても、人間が行なうことですから、ケースによっては「魔が差した」ってこともありえます。森本容疑者の場合はどうなのでしょう。報道の通りで、下着に手を入れるまでの行為をしているとなった場合、出来心以上のことをしているのではないかと思えてくるのです。

社会的立場があるからこそ、あるいは様々な情報を仕入れることができる立場だからこそ、求められる倫理があります。もちろん、その倫理観が高すぎると、子育てでも大変な苦労をすることがあります。親の社会的立場を気にしすぎて、子ども自身がプレッシャーになって、萎縮することもあります。倫理観をプライベートに持ち込みすぎるのも別の問題が出てきます。ただ、他者との関わりのある社会生活では、身を引き締めなければならず、そのバランスを保つことが重要なのだと思います。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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