結婚したいけど…~年収300万円の壁~

結婚したいけど、なかなか結婚できない──。

そんな若者たちが増えているといいます。2011年版「子ども子育て白書」によると、20~30代の男女では8割超え。なかでも30代では、およそ6人に1人は「すぐにでも結婚したい」と考えているとか。私の周りでも「結婚したい」という20~30代が最近、多くなっています。東日本大震災後に「結婚したい」という人が増えた、とも言われていますが、その影響かもしれません。

特に「すぐにでも結婚したい」は20代で11.4%でおよそ10人に1人、30代では18.6%でおよそ6人に1人に増えます。男性だと、20代では7.5%でおよそ13人に1人、30代で14.7%とほぼ倍になります。女性だと、20代では15.9%でおよそ7人に1人、30代では24.9%とおよそ4人に1人。しかし、未婚率(一度も結婚していない人の割合)を見てみると、なかなか理想と現実はうまくいっていません。

男性の場合、「25~29歳」は1975年に48.3%、およそ半数が未婚でした。しかし2005年には71.4%となり、およそ4人に3人が結婚していないようです。また、「35~39歳」は75年には6.1%でおよそ15人に1人が未婚でした。05年には30.3%で、およそ3人に1人となり、30代後半でも結婚経験がないことが珍しくありません。

女性の場合でも、「25~29歳」の未婚率は75年では20.9%およそ5人に1人、05年には59.0%で、およそ5人に3人となりました。「35~39歳」では75年には5.3%で20人に1人でしたが、05年には18.4%と6人に1人が未婚となったのです。

もちろん、結婚だけが人生ではありません。しかし、「結婚したい」と思っている人が多いのに結婚が遠のいているのは何故でしょう。

理由の1つは「恋愛結婚の増加」です。
1965~69年には恋愛結婚が48.7%、見合い結婚は44.9%と、ほぼ同数でした。しかし、2000~05年には恋愛結婚が87.2%でほぼ9割。見合い結婚は6.2%で、1割ありません。恋愛ができるかどうかで、結婚が決まってしまいます。私の周りでも、見合い結婚はいません。

ちなみに、なかなか恋愛ができないという傾向もあるようです。結婚準備総合サイト「ゼクシィ」のリサーチ(2011年4月28日~5月9日、398人女性)の結果ですが、「彼氏いない歴」で、「2年」と「1年」に続いて、「10年以上」が3位です。「つきあっている男性がいない時」にした行動で、1位は「『そのうちできる』と何もしなかった」です。「どうしたらいいか分からず、何もできなかった」も4位でした。恋愛に消極的だと、相手が見つからない間が長くなってしまいがちです。

恋愛と結婚が結びつくのが現代。だとすれば、恋愛の先に結婚がある。そう考えなければならないのでしょう。

また、年収も大きな要因です。男性の場合が顕著で、20代で300万円未満で9.3%。400~500万円未満で36.5%、500~600万円未満で39.2%、そして600万円以上で29.7%です。30代では300万円未満で8.7%、300~400万円未満で25.7%、400~500万円未満で29.4%、500~600万円未満で35.3%、600万円以上で37.6%なのです。つまり、年収300万円がひとつの壁となっているのがこのデータから分かります。

「年収300万円の壁」といいますが、300万円以下の人はどのくらいいるのでしょうか。「民間給与実態統計調査結果」によるますと、2009年には男女合わせて42%。男性は25.1%、女性67.7%となっています。男性でみると、04年は20%で、5人に1人。それが4人に1人と増えました。

雇用形態で考えてみます。「賃金構造基本統計調査(10年)」によると、非正規雇用では、「25~29歳」では248万円、「35~39歳」では290万円で、300万円に届きません。一方、正規雇用では25歳で350万円を超えます。雇用形態で差があるのです。

恋愛、年収、雇用形態。

これらの要因が結婚を決めてしまう現実があるようです。少子化や晩婚化、未婚率の増加を「社会問題」とするのなら、結婚に関する「不利」な点を克服する政策が必要です。最近は「子ども手当」の廃止が話題になりました。しかし、その是非だけでなく、子育てにまつわる保育、教育、医療、福祉などをどのように国民が負担し、国としてカバーしていくのかも議論されなければなりません。

[ライター渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://foomii.com/mobile/00022)を配信中]