【時間制限食ダイエット】は本当にやせるの?「試す価値はある」一方で、死亡リスクが91%も高まってしまう人とは? 【医師に聞くダイエットの「真実」】 | NewsCafe

【時間制限食ダイエット】は本当にやせるの?「試す価値はある」一方で、死亡リスクが91%も高まってしまう人とは? 【医師に聞くダイエットの「真実」】

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【時間制限食ダイエット】は本当にやせるの?「試す価値はある」一方で、死亡リスクが91%も高まってしまう人とは? 【医師に聞くダイエットの「真実」】

健康診断のとき「もっと痩せなきゃ!」と、かたく誓ったはずなのに……。年齢とともに痩せにくくなり、昔のようにはダイエットができないという話はよく聞きます。

この30年間で、日本の糖尿病や肥満といった代謝疾患は増加の一途をたどっているそうです。年齢を重ねると持病を抱えることも多く無理はできない中、どんなダイエットをすればよいのでしょう。

最近の話題のダイエットといえば、「時間制限ダイエット」ではないでしょうか? 「絶食時間を設けるだけで、食べる内容は変えずにOK」という方法は、本当に痩せるのでしょうか? 体への負担は?

今回は、岡本 卓医師が著書『持病を悪化させない生き方』(徳間書店)の中で紹介している、この「時間制限ダイエット」に関する驚くべき調査結果と、先生のご意見をご紹介いたします!

★この記事は『持病を悪化させない生き方』(徳間書店)から、一部を抜粋・編集してお届けします。

「時間制限食」を58人で試してみた結果は? 体重減少のほかにも意外な効果が

「食事制限なしでもダイエットできる方法」──そんな夢のような話があるといいですね。

実は、最新の研究で「食事制限なしで痩せられるかもしれない方法」が報告されました。「時間制限食」と呼ばれるダイエット法で、簡単に言うと、食べる時間帯を制限するだけで、体重が減るというシンプルな方法です。

2020年、アメリカの研究チームが58人の肥満の方を対象に、この時間制限食の効果を検証しました。

参加者は、3つのグループに分けられ、1つは「食事は午後3時から7時までの4時間のみで、残りの20時間は絶食」。そして、「食事は午後1時から7時までの6時間のみで、残りの18時間は絶食」のグループと、「食事時間は自由」のグループです。

8週間後、それぞれのグループの体重や健康状態を比較すると、4時間の時間制限食と6時間の時間制限食のグループは、どちらも体重が約3%減り、かつ自然に食べる量が減っていったというのです。

さらに、どちらもインスリン抵抗性(糖尿病のリスクを高める要因)や体に悪い影響を及ぼす活性酸素も低下していました。

時間制限食は、体重を減らすだけでなく、健康にも良い効果があることが判明したわけです。

「食べる時間を制限したらお腹が空いて我慢できないかもしれない」と思うかもしれません。研究では、時間制限食をしても空腹感や疲労感に特に影響を及ぼさなかった、と報告されています。

生活パターンや食嗜好など個人差も気になるところですが、時間制限食は試す価値はありそうです

【次ページ】「時間制限食」でやせる秘密は、絶食時間中に「腸の中で起きていること」

「時間制限食」でやせる秘密は、絶食時間中に「腸の中で起きていること」

この研究では、1日の摂取カロリーが550キロカロリーも減少したという結果を得ていますが、このメカニズムには腸内細菌が関与していることを示唆する別の論文が発表されています。

時間制限によって生じる絶食時間に、腸内の酸性度が上がり粘液の分泌量が抑制され、腸の容量が減少します。

絶食は生体のサーカディアンリズム(=体の中に備わっている、約24時間周期リズム。体内時計がその役目を司つかさどり、睡眠、体温、ホルモン分泌を調節している)にも影響し、腸内細菌の顔ぶれを替えて、腸から出る代謝物が変化することになり、食欲低下をもたらし、体重減少に寄与するというわけです。

絶食がもたらす腸内細菌叢の多様性は、もともとの体脂肪率や肥満などの個体差によってもその効果の種類や度合いに違いがありそうです。今後の研究によって、個体差に応じた最善の断続的絶食療法が展開されるのではないかと思います。

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「時間制限食」によって「死亡リスク」が91%も高まってしまう人とは?

ただし気になるニュースもあります。

米国心臓協会の「疫学と予防・生活習慣と心臓代謝に関する科学セッション2024」で発表された予備研究では、1日の食事時間を8時間未満に制限する時間制限食は、12~16時間かけて食事をする人に比べて、心血管疾患による死亡リスクが91%も高いことがわかったというのです。

そこでは2003〜18年にわたる2万人以上のアメリカ人成人の食事パターンと、2003〜19年12月までの死亡データが比較されました。

時間制限食が短期的な利益をもたらす可能性がある一方で、長期的には悪影響がある可能性が指摘されたのです。特に、心臓病やがんの患者は8時間の食事時間と心血管死亡リスクの増加との関連性に注意する必要があるようです。

この研究には、自己申告による食事記録や食事時間以外の健康に影響を与える要因が考慮されていないなどの問題がありますし、精査されていない学会報告である点も考慮しなくてはなりません。

食事記録不要の「時間制限食」は魅力的ですが、自分とって安全か、そして適切な方法かどうかは、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

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■BOOK:糖尿病・高血圧・認知症 持病を悪化させない生き方 60歳過ぎを楽しく生きる』和田秀樹、岡本 卓・著 1,760円(税込み)/徳間書店

■著者 

和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年、大阪府生まれ。精神科医。東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長、川崎幸病院精神科顧問、一橋大学経済学部非常勤講師、立命館大学生命科学部特任教授。主な著書に、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)、『80歳の壁』(幻冬舎)、『どうせ死ぬんだから』(SB クリエイティブ)、『長生きはメンタルが9割』(徳間書店)、『70歳を過ぎたら飲んではいけない薬とサプリ』(かや書房)、『医者にヨボヨボにされない47の心得』(講談社)など多数。

岡本 卓(おかもと・たかし)
1960年、京都生まれ。医師、医学博士。東京大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院第3内科、自治医科大学附属病院などを経て、92年より博士研究員としてハーバード大学医学部へ。95年に同大医学部講師、97年クリーブランドクリニック財団ラーナー研究所助教授就任。98年オハイオ州立大学助教授兼任。99年理化学研究所脳科学研究センター、チームリーダー就任。2001年K&Iオホーツク海病院勤務の後、09年に北海道北見市で、愛し野内科クリニックを開業。主な著書に、『薬が減らせて、血糖値にもしばられない 糖尿病最新療法2』『アルツハイマー病とは何か』(以上KADOKAWA)、『腎機能がよくなる方法を1冊にまとめてみた』(マキノ出版)。


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