日本では、今や「2人に1人ががんになる時代」と言われており年間100万人以上が新たにがんと診断されています。
がんと診断された本人、あるいはがん患者の家族が治療やその後の生活において取り入れたいセルフケアをまとめた『がん患者が自分らしく生きるためのセルフケア大全』(CEメディアハウス)が6月10日に発売。
本記事ではがんサバイバーがいかに希望をもって自分らしく生きていくかについて考えたいと思います。
※この記事は『がん患者が自分らしく生きるためのセルフケア大全』(CEメディアハウス)から一部を抜粋・編集してお届けします。
主治医から正しい情報を得るために
がんの告知を受けたとき、多くの人は頭が真っ白になり、冷静ではいられません。ただ、医師は患者さんが落ち着いてがんを受け入れるまで待ってはくれません。告知に引き続き、すぐに今後の治療についての説明があるかもしれません。
このとき、「頭が真っ白になって何も考えられなかった」、「主治医の話をほとんど覚えていない」ということが起こります。これでは正しい治療選択ができませんし、当然ですが、納得のいく治療を受けることができません。
がんを受け入れ、できるだけ早く前向きに治療に取り組むためには、まず医師からがんについての正しい情報を得る必要があります。
このためには、主治医からの説明を聞き漏らさないことが大切ですし、わからないことは遠慮せずに質問しましょう。また、自分ひとりだけでは自信がない場合には、家族の誰かに立ち会ってもらうと良いでしょう。
主治医に必ず確認すべき10 項目とは?
1.がんと診断した根拠(細胞や組織の検査までしたのか)
一般的に、がんの確定診断には、細胞や組織の検査(顕微鏡によるがん細胞の証明)が必要ですが、画像の検査だけでがんと判断する場合もあります。
また、細胞や組織の検査を行っても、がんだと確定できない場合もあります。その場合は、「がんの疑い」ということで今後の治療方針を話し合うことになります。
2.がんの部位(臓器)
がんがどの臓器のどこにできているのか(原発巣)について確認します。その臓器にあるからといって、必ずしもそこから発生したとは限らないのです。
例えば、肝臓に腫瘍がある場合、肝臓から発生したがんと、他の臓器(胃や大腸など)から転移(飛び火)したがんの場合があり、治療法がそれぞれ異なります。
3.がんの進行状況・ステージ(腫瘍の深さ、リンパ節転移、遠隔転移など)
一般的に、がんの進行具合はステージで分類します。がんの種類によっても違いますが、一般的にがんのステージは、腫瘍の大きさや深さ(腫瘍因子:T)、リンパ節転移の有無(リンパ節転移:N)、離れた臓器への転移(遠隔転移:M)の3つの因子の組み合わせで決定されます。
ステージ1(または0)が最も早期で、がんが進行するにつれてステージが上がります。ステージ4は遠くの臓器などに転移し、がんが最も進行した段階のことです。
まずは、主治医に自分のステージを確認しましょう。その際、どうしてそのステージと診断したのかについても説明を受けましょう。
4.標準的な治療法について(ガイドライン〈診療指針〉ではどうなっているか?)
現在のがんの状況に対応したガイドライン(標準的な診療についての指針)がすすめる、最も一般的な治療法はどんな内容なのかについても説明を受けましょう。最近では、日本ではほとんどのがんについて、ガイドラインが作られています。
なかには患者さん向けのガイドラインがある場合もありますので、ご自身で調べてみるのも良いでしょう。
5.治療の目標(がんの根治・延命・緩和)
主治医に、治療の目的をどこに設定するのかを聞きます。がんに対する治療の場合、主に次の3つのケースが考えられます。
がんを完全に除去あるいは全滅させる治療(根治または完全寛解)
完全に治すことは難しいが、がんをこれ以上進行させないようにして少しでも長生きすることを目指す治療(延命治療)
がんに対する積極的な治療はせず、患者さんの苦痛を和らげる治療(緩和治療)
また、そこに目的を定めた理由についても尋ねましょう。
6.主治医のすすめる治療法とその理由
主治医から、病状の説明に引き続き治療法についての提案があると思いますが、その治療をすすめる理由を聞きましょう(例えば、ガイドラインで推奨されているからなど)。
もしその治療法がガイドラインに沿ったものでなかったら、ガイドライン通りに治療を行わない理由を確認してください。
7.治療に伴う合併症、副作用、後遺症
どんな医療行為にも、必ず合併症、副作用、後遺症といったデメリットがあります。医療行為による効果(メリット)が、これらのデメリットを上回ると予想される場合のみ、治療として成立します。
しかし、ときとしてデメリットがメリットを上回る場合があります。高齢の患者さんの場合や、もともと持病がある場合には、リスクが高まります。
例えば手術の場合、手術後に起こる可能性のある合併症(手術に伴って起きてくるさまざまな症状やトラブル)や頻度、また手術によって死亡する確率などについて事前に医師に確認しましょう。
8.予定される治療期間
手術の場合には「手術後どのくらいで退院できるのか」、抗がん剤治療の場合には「どのくらいの治療期間が予想されるのか」、放射線治療の場合には「何回(どのくらいの期間)の照射が必要か」など、予想される治療期間について確認しましょう。
9.標準治療以外に考えられる治療法について
標準治療以外の治療についても聞いてみましょう。また、必要ならばセカンドオピニオンについても検討してみてください。
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■BOOK:『がん患者が自分らしく生きるためのセルフケア大全』(CEメディアハウス)
■著者 佐藤典宏(さとう・のりひろ)
帝京大学福岡医療技術学部教授。福岡県生まれ。九州大学医学部卒。2001年から米国ジョンズ・ホプキンズ大学医学部に留学し多くの研究論文を発表。1000例以上の外科手術を経験し、日本外科学会専門医・指導医、がん治療認定医の資格を取得。多くの人にがんに関する情報を提供するため、公式YouTube「がん情報チャンネル・外科医 佐藤のりひろ」を開設。チャンネル登録者数は20万人を超える(2025年4月現在)。『専門医が教える最強のがん克服大全』(KADOKAWA)、『がんにも勝てる長生き常備菜』(主婦と生活社)など著書多数。