福島県の中学生の自殺、背景はいじめだけか? | NewsCafe

福島県の中学生の自殺、背景はいじめだけか?

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福島県須賀川市の教育委員会は2月7日、市立中学校1年の男子生徒(13)が1月末に自宅で自殺していたと発表しました。また、亡くなった男子生徒に対していじめがあり、10数人が関与していたことも明らかにしています。市教委は、外部の有識者らによる調査委員会で、自殺といじめの因果関係を調べます。

市教委の発表では、男性生徒は1月27日、自宅で首をつって死亡していました。遺書はありませんでしたが、16年7月の学校生活に関するアンケートで「からかわれたり、バカにされたりする」と回答していました。11月の三者面談でも「悪口を言われる」と訴えていました。12月の調査でも「いじめられている」としていました。いじめには10数人の同級生が関与していたとのこと。学校側も把握しており、加害生徒を指導して、いじめは解消したと判断していました。

この件で私は二つのことが気になります。一つは、いじめ後遺症です。いじめられていた場合でも、いじめの渦中では「死んでしまいたい」などと思わないことがあります。しかし、いじめが止んだ後、たとえば、卒業や進学をした後でも、過去を思い出して、「死にたい」と思うようになったり、フラッシュバックなどが発症することがあります。その場合、いじめの時期と自殺衝動の時期が違います。指導をして、いじめは解消しても、その後に発症することがあるのです。そのため、いじめが解消したかどうかだけで、指導やケアが終わりではないのです。

もう一つは、須賀川市は、東日本大震災の被災地の一つです。須賀川市は「震度6強」を記録しました。この周辺は液状化の被害は大きかったのです。藤沼湖(藤沼ダム)が決壊し、下流域に死者を出しました。4月11日の土砂災害をあわせると死者・行方不明者は11人でした。全壊1249件、大規模半壊418件など、家屋被害は1万5千件を超えています。市庁舎も使用不能になりました。

ただ、内陸部だったために津波被災はなく、沿岸部ほど注目されませんでした原発事故のあった東京電力福島第一原発から直線距離で約60キロ付近でもありますが、どんな被害があるのか曖昧な地域で、現在でも不安は解消されていません。ただ、支援やケア、取材は、沿岸部に比べてれば少なかったのです。私も震災一年目は、年間の3分の2は被災地での取材をしていましたが、須賀川市では取材をしていません。東北道で事故があり、雪が降ったりして、迂回路として国道4号線を通過したことが何度かあるくらいでした。

現在の中学1年生は、震災当時小学1年生でした。小さな体でどんな風に周囲を見ていたのでしょうか。震災から1週間後、埼玉県に避難して来たいわき市四倉の小学4年生(当時)は「四倉は終わった」と言っていました。地震被害と津波被害は、小学生にとっては終末のように感じることでしょう。また、相馬市の小学6年生は卒業を前にして「もう終わった。地震に、津波に、原発だよ」と話していました。

須賀川市でも震度6強です。地震だけでも恐怖を感じたでしょうし、液状化被害、家屋や道路の被害を見ているはずです。沿岸部では多くの支援が入りましたし、須賀川市の北、郡山市は沿岸からの避難者も多かったので、支援やケアが入りやすかったと思いますが、須賀川市はそこまで多かった印象はありません。

支援がまったくないわけではなりません。被災自治体ごとに支援をする自治体が割り振られました。阪神大震災の教訓を考えれば、震災によるPTSDのリスクができるのは5年後だと言われています。亡くなった中学生が嫌がらせやいじめを訴えていたのも震災から5年目でした。偶然かもしれませんが、加害者や被害を訴えてた生徒たちに、震災によるPTSDが影響したのかどうかも気になってしまいます。

もうすぐ東日本大震災から6年が経とうとしています。震災によるケアを再点検する時期になっているのかもしれません。
[執筆者:渋井哲也]
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