10代前半男性の死因1位は自殺 | NewsCafe

10代前半男性の死因1位は自殺

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 2016年度版「自殺対策白書」が発表されました。今年4月から、自殺対策が内閣府から厚生労働省の所管となりました。厚労省としては初めての「白書」です。すでに自殺統計は警察庁のものと、人口動態統計のものが発表されていますが、15年は、警察庁統計で18年ぶりに2万5000人を下回って、2万4025人となりました。白書では、「経済」を理由とした自殺がピーク時から半減したと分析しています。

 貸金業規制法の快晴によってグレーゾーン金利が制限されたことなどの多重債務対策によって、借金苦による自殺が減少してききていることがいわれています。09年に「経済・生活問題」を要因とした自殺が8377人で、ピークでした。それが昨年は4082人とほぼ半減しました。その意味では、法の整備や窓口の充実が「経済」を理由とする自殺者を減らしたことになります。ただ、「家庭問題」や「学校問題」、「男女問題」を理由とする自殺者はあまり変化はありません。

 他の点では、変化はないのだろうか、と思って、「白書」を読んでいると、ある変化に気がつきました。「人口動態統計」による、14年の「死因順位別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率・構成割合」の項目です。総数として「15~19歳」「20~24歳」「25~29歳」「30~34歳」「35~39歳」、つまり「15~39歳」の、死因の1位が自殺です。これはこれまでもあったことです。

 変わっていたのは男性だけで見た場合です。「15~39歳」の死因1位が自殺ですが、それに加えて「40~44歳」も死因の1位が自殺です。ただ、これも例年と同じです。しかし、「10~14歳」の死因1位も自殺でした。死亡者は67人、死亡率2.3、割合は21.1%。前年は1位ではなかったはずです。

 確認すると、13年は、「10~14歳」の死因一位は「悪性新生物」(97人、死亡率は1.7、割合は20.8%)でしいた。自殺は2位で、57人、死亡率は1.9、割合は20.1%だったのです。では、12年ではどうでしょうか。自殺は死因の3位で、55人、死亡率は1.8、割合は18.2となっています。11年も3位で、死亡者52人、死亡率1.7、割合は11,8でした。

 男性で「10~14歳」の死因一位が自殺というのは異例です。順位は他の比較対象の死亡数も増減もありますが、死亡数だけで見てみると、60人台となり、ここ5年では最高の数字となっています。死亡率が2.0を超えたのも14年だけです。自殺者数全体が減っている中で、この年齢階級だけが増えているのです。中学生の自殺者が増加傾向というのと符合します。

 ちなみに、警察庁統計による「年齢階級別、原因・動機別自殺者数」では、人口動態統計のように、10代前半と後半を分けていないので、「~19歳」で見てみると、15年中は529人(男338人、女191人)。もっとも多いのは「学校問題」で193人(男133人、女60人)、ついで「健康問題」で115人(男53人、女62人)、「家庭問題」は85人(男48人、女37人)などとなっている。

 また、自殺者の自殺未遂歴をみると、「あり」の割合は男性の場合、15年は14.0%、14年は15.2%、13年は15.2%、12年は14.9%、11年は15.1%,,,,を推移。自殺者の15%前後が自殺までに自殺未遂を経験している。一方女性の場合、15年は31.2%、14年は31.2%、13年は30.8%、12年は30,4%、11年は31.4%などとなっており、いずれの年も男性の倍の3割ほどが未遂経験者です。

 統計上の未遂にならないものもあるが、自傷行為や自殺未遂は、自殺のサインとなる可能性を秘めている一方で、自殺の意図がない自傷行為を繰り返した結果、亡くなってしまうこともある。私の取材でも、自殺の意図のない自傷行為で亡くなった人がいました。

 日本では男性の自殺者は景気に左右されます。バブル経済の崩壊によって高水準を推移していた。しかし、ここ数年は、その余波が薄まったのか、中高年男性の自殺者は激減しました。一方で、女性の自殺者は景気による大きな変動はありません。そのためもあり、減少率も低い。また未成年の自殺者全体に占める割合は、2000年から10年までは1%台だったが、11年以降、2%台を推移している。

 若年層でも、地域によってもばらつきがある。男性の場合、19歳以下の割合が多いのは福島県(5.2)。ついで徳島県(4.3)、愛媛県(4.2)、北海道(3.8)などとなっています。20代でもっとも多いは石川県(16.3)、ついで茨城県(14.1)、愛知県(13.0)、東京都(12.6)、宮城県(12.3)などとなっている。80歳以上では秋田県(15.7)で新潟県(15.1)、岩手県(14.7)...という順になる。

 女性の場合では、19歳以下で割合が多いのは島根県と徳島県(7.7)が並ぶ。そして富山県(6.0)、和歌山(5.9)、熊本県(5.4)など。20代の場合は東京都(14.5)。群馬県(11.0)、北海道(11.2)、栃木県(11.1)、大阪府(10.1)などが続く。80歳以上は島根県(40.0)。続いて山形県(35.7)、富山県(28.9)などだ。

 各年齢や属性、地域に応じた自殺対策が求められています。これまでの体制では不十分ということで、自殺対策の体制が変わりました。その成果が求められています。
[文:渋井哲也]
《NewsCafeコラム》
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