特別のニーズがある避難者への支援 | NewsCafe

特別のニーズがある避難者への支援

社会 ニュース
熊本県熊本地方などで発生してている地震で、14日以降、震度1以上の地震の発生回数が800回を超えたと、気象庁が発表しました。そんななかで、死者は49人、行方不明者1人、関連死の疑いは16人となりました。避難所では不自由な生活が続いており、余震が続く中でも不安を抱えている人も多いと思います。

多くの人たちは、避難生活がいつまで続くかわかりません。また、余震が続くだけでも、ストレスがたまってきていると思います。通常では、家族だけで住み、その上で、家族がそれぞれの部屋を持ち、一定のプライバシーが守られています。しかし、こうした緊急時は、家族単位でまとまり、避難所ではプライバシーが制限されます。

こうした中では不安を抱えたり、眠れなかったり、気持ちが張り詰めたりします。こうした心の動きは誰しもが起きることで、異常なことではありません。自然災害と心の揺れ動きについては、4つの段階を取ると言われています。東京都福祉保健局が発行する「災害時の『こころのケア』の手引き」によりますと、

1)災害直後の、恐怖体験による無感覚、感情の欠如になるなどの「茫然自失期」
2)災害の体験を共有し、被災者同士が強い連帯感が結ばれる「ハネムーン期」
3)直後の混乱が治り始め、復旧に入るが、援助の遅れなどで不満が噴出する「幻滅期」
4)復旧が進む、生活のめどが立ち始める「再建期」

があります。支援者は、こうした心理的な動きを理解しながら、現地に入ることが求められます。一方、特別なケアが必要になる人がいるのです。

避難所で子どもたちは自由に遊ぶことができません。東日本大震災では、子どもの遊時間や場所を確保した支援がありました。遊ぶ時間が確保されると、ときおり、子どもたちは「津波ごっご」や「葬式ごっこ」、「お化けごっこ」をしていました。こうした擬似的な再体験をすることで、心のバランスを保っていた姿がありました。

国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」は「心理的応急処置」を紹介するサイトを開設しました。サイト内では、子どもたちの日常生活での習慣を大切にするように提言をしています。その上で、「地震ごっこ」のような遊びは「ストレス対処法」として、止めないようにしてほしいとしています。

NPO法人「ここねっと」は東日本大震災の被災地(主に七ヶ浜町や石巻市)で子どものケアをしていました。活動の中では、遊ぶこと、食べること、学ぶことの三つを大切なこととして、一時的であっても支援の場では守り続けました。そして、子どもたちと接する際は、「否定しない」「強制しない」「丁寧にかかわる」の原則を守ってきました。避難生活では、子どもたちは我慢を強いられ、時には周囲の人に怒られ、ないがしろにされがちです。子どものストレス・マネージメントをすることが求められるのです。

一方、被災者のニーズを把握せず、独自の強い考えのもとに"支援"や"援助"をする団体や個人もいます。もちろん、それが被災者のニーズとたまたまマッチしていることもあります。しかし、ニーズは、災害の規模や種類、避難生活の長さ、その地域の文化、支援対象になる人たちの個性などによっても変わってきます。それをわからずに活動してしまうのです。

たとえば、東日本大震災で子どもを遊び場を提供した活動がありました。そこに別の支援者が、遊びの支援と称して、手伝いにきたのです。「歌ってください」「手をつないで!」などと言い、まるで学校の授業のような時間を作ったのです。その場では子どもたちは支援者の期待に答えました。しかし、その活動に子どもたちは集まらなくなったのです。ケアの押し付けが起きると、拒否反応を示します。

福祉のニーズがある人のため、福祉避難所に指定されている施設があります。たとえば、熊本市内では8つの施設・学校と、益城町では5つの施設と協定を結んでいます。ただ、福祉避難所があったとしても、福祉避難所に行けるとはかぎりません。また、福祉避難所でも、一般の住民の人たちもきます。福祉施設の場合は、もともとの利用者にも支援をしなければなりません。

東日本大震災でも、学校の体育館に避難した自閉症の子どもは、知らない人と一緒にいるだけでも落ちつきませんでした。余震による不安が増したために、極度のストレス状態におかれました。そのため、過ごすスペースを体育館内にある小さな部屋に移したため、落ち着き始めたといいます。

内閣府の調査(15年3月、1251施設が回答)では、要配慮者(福祉のニーズがある人)のみを受け入れるのは698施設ですが、要配慮者以外の「家族や付き添い」も受け入れるのは838施設、また、近隣住民も受け入れるのは505施設です。熊本地震で考えると、益城町の保健福祉センター「はぴねす」は、玄関先まで近隣住民が避難してきました。そのため、福祉避難所としては不十分な点があります。

緊急時で、かつ初期ならば、一定の不自由さは仕方がありません。しかし、中長期の避難生活が予想されるならば、なるべく早めに、福祉避難所の充実が求められるのではないでしょうか。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中

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