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政治に新しい風はふくのか

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今年の夏の参院選挙を控えて、与野党の攻防が国会の内外で繰り広げられています。はてなブログで書かれた「保育園落ちた、日本死ね」というエントリーが話題を呼びましたが、衆院予算員会で指摘された安倍晋三総理は「匿名である以上、実際本当かどうか確認しようがない」と述べました。これについて、「匿名」であることは問題ではなく、待機児童問題の深刻さについて注目すべきといった声が上がりました。

このブログを使った質問をしたのは山尾志桜里議員(民進党、当時民主党)です。しかし、「週刊新潮」(3月31日発売)で、<奇妙な政治資金>として、ガソリン代疑惑が指摘されています。つまり一年間で230万円分のガソリン代を使っていることになっているのです。地球5周分にもなるとの試算もあります。

山尾氏は東大卒の元検事。保育園のブログでも注目を浴びたこともあってか、民進党の政調会長に任命されたばかりでした。山尾氏ばかりか、民進党にとっても出鼻をくじかれた感じがします。

一方、政策面で、自民党は、待機児童対策を打ち出しました。緊急対策は、1)人員配置などで国の最低基準を上回る自治体は、受け入れ人数を増やす、2)19人以下の小規模保育の上限を22人にする、といったものです。この提案については、野党が反発しています。保育士一人あたりの子どもの人数を増やすということは、安全面でも心配になりますし、保育士の過重労働を強いるものになります。

保育園で働く側にとってはきつい話ですが、保育園に子どもを預けたい人たちにとっては、何も事故がなければ、子どもを預かってくれるという安心感は得られます。予算をそれほど増やさずに、現状での苦肉の策として、政府が打ち出したのです。その内実はどうあれ、ワンフレーズやイメージが重要な選挙です。政府与党は、参院選に向けて、待機児童対策をした、というイメージ戦略を打つことができます。

また、自民党と公明党は「給付型奨学金」の創設を検討することにしました。大学生を対象に、返済不要の奨学金を安部総理に提言したのです。自民党案では、最初の5年間は基金を活用し、6年目以降は、当初予算で対応するというのです。

先進国では給付型が多いなか、日本の奨学金は利子付きの割合が多く、実質的な教育ローンになっています。そのため、給付型の創設を望む声も多くありました。これまで、どちらかといえば、安部政権に批判的だった北海道新聞や沖縄タイムスなどでは社説で給付型奨学金の創設に歓迎しています。

さらに、文部科学省は4月1日、性同一性障害や性的指向・性自認に関して、児童生徒に対するきめ細かな対応をするための教職員向けの資料を作成し、配布しました。これまで文科省は、性同一性障害を除いては、性的指向・性自認の問題は避けてきた印象があります。しかし、馳浩文科大臣は、LBGTに関する課題を考える議員連盟の会長も務めています。研究者や市民グループで勉強会を行った成果でもあります。

選挙前ということもありますが、民主党政権でもできなかった政策を打ち出すことによって、「安部政権は弱者に冷たい」というイメージを持っている保守層にきちんと訴え、浮動票に加え、かつて民主党に流れていた有権者を自民・公明に取り戻そうとしています。

では、野党はどうでしょうか。民主党と維新が合併してできた民進党ですが、自民党との対抗軸としての政治思想が曖昧に見えます。そのためもあり、期待していない人が多数います。二つの党を合わせた合併前の支持率より、合併後の支持率が下がりました。世論調査をしなければ「民主党という名前のマイナスイメージを自覚できなかった」というセンスのなさに加え、党幹部のメンバーには新しいイメージが全くありません。

これでは、自民党の一人勝ちではないかと思えてきます。自公で3分の2を獲得して、憲法改正の発議ができる数となるのではないかと予想されます。それを阻止するためには野党のイメージを回復させる起爆剤が必要です。しかし、現状ではそのような動きはありません。よりましな候補者を自民党に送り込んで、党内で改革をさせるといった手段もあるでしょうが、党運営を見ていると、それも期待できません。

いずれにせよ、閉塞感を打開するためには、野党がきちんと政治理念を持ち、他党と共闘するのなら、きちんと政策合意をつけていく。それだけでなく、新しい候補者を発掘し、政治に新しい風を吹き込むことが必要なのではないでしょうか。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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