虐待死を想定した人員と予算を | NewsCafe

虐待死を想定した人員と予算を

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また子どもが親に虐待され、死亡するという悲劇的な事件が起きていまいました。 埼玉県警は1月11日、狭山市の無職の女性(22)と、同居する内縁の夫で、工員の男(24)を保護責任者遺棄の疑いで逮捕しました。同県警によると、顔になんらかの原因でやけどを負っていた次女(3歳)を病院に連れて行くなどの必要な対応を行わずに放置した疑いです。 この事件をめぐっては、昨年6~7月、近隣住民から「子どもが外に出されている」「泣き声がする」などと2回の通報があったといいます。その際、県警狭山署員が駆けつけましたが、目立った外傷は確認されなかったということです。 産経新聞Web版(1月13日付)によりますと、内縁の夫は「昨年秋口から虐待がエスカレートした」など供述しているということです。また、次女の体には顔全体のやけど以外にも、虐待によるとみられる傷が十数カ所あり、自宅の押入れには金具を使って人を中に閉じ込められる仕掛けがあったといいます。 また毎日新聞web版(1月13日付)によりますと、狭山市は昨年5月までに5回以上、母子と接触していました。しかし、虐待の兆候は確認できなかった、といいます。死亡した女児は、4ヶ月、1歳6ヶ月、3歳の乳幼児健診を受診しませんでした。そのため、2012年から職員が自宅を訪問していたのです。女児は母親におびえる様子はなかったといいます。ただ、最後の訪問は、逮捕された女が対応せずに、祖母が応じていました。 厚生労働省の「子ども虐待による死亡事例等の検証結果(第11次報告、15年10月8日)によりますと、児童虐待の結果、子どもが死亡した事例は、13年度では心中以外で36例、36人。前年度の49例、51人を下回りました。子どもの年齢が0歳というのが16人(44.4%)で最も多く、3歳未難が24人で、66.7%を占めています。 「主な加害者」は実母が16人(44.4%)で最多となっています。ついで、実父が9人、22.2%でした。実の両親による虐待死が大半を占めます。しかし、これまではよりも実父の割合が増えました。 「地域との接触」では、「ほとんどない」が11例。「乏しい」が11例。合わせて8割となっています。孤立気味の家庭で虐待死が起きていることになります。ただ、今回の事件では、地域との良好な関係がなかったかもしれませんが、近所の人が通報しています。地域の眼差しがあったことになります。それが活かせなかったのは残念です。 03年から厚生労働省は虐待死の統計を取っていますが、心中事件をのぞくと、毎年、50人前後の子どもたちが虐待死で亡くなっています。各年度ともに3歳未満が多いことがわかります。今回の事件では3歳の子どもが亡くなりました。乳幼児の子育てはノイローゼになるリスクはありますが、多くの人たちはその時期を乗り越えています。もちろん、今回の事件では、単に育児不安だけだったかどうかはまだわかりません。しかし、市でも警察でも、把握はしようとしていたようには思いますが、把握の仕方に課題があることを示しました。 虐待死というと、児童相談所や保健所、警察などとの接点がまったくなかったといったケースを想像してしまいます。しかし、今回のように、なんらかの接点があるケースも少なくありません。ただ、妊婦健診未受診10人(27.8%)、望まない妊娠(あるいは計画してない妊娠)が8人(22.2%)で、一定の傾向があるようです。前年度で11回の統計が出されていますので、傾向が見えてきています。 そのため、妊娠期からの支援を必要とする養育者の早期把握と切れ目ない支援の強化、児童相談所および市町村職員の資質の向上および体制の充実強化、虐待対応における児童相談所と市町村の役割分担・連携強化、要保護児童対策地域協議会の活用の徹底と設置の促進を提言しています。しかし、これらを実現するには、人材と予算の確保が必要です。 NHKの世論調査では、今年の夏の参議院選挙で重視している政策課題を聞いたところ、社会保障と景気対策が23%、消費税が15%、安全保障と憲法改正が13%、TPPが3%でした。 社会保障というと年金問題がクローズアップされることがありますが、虐待死対策にも目を向ける政党が出てきてほしいと感じています。もちろん、虐待死をふせぐには虐待の把握とケアの充実が求められます。そのため、児童虐待への対応全般の向上になるのではないかと思います。 [ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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