安保法案審議、いよいよ大詰め | NewsCafe

安保法案審議、いよいよ大詰め

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集団的自衛権の一部容認を含む、安全保障関連法案の審議がいよいよ大詰めになっています。自民・公明の与党側はなるべく多くの党の賛成を得ようと、参議院段階で修正協議に応じています。維新との修正協議は決裂しましたが、次世代の党・日本を元気にする会・新党改革の3党と大筋合意ができ、3党は賛成に回る可能性が出てきており、強行採決の印象が薄まる見込みになってきました。

維新との修正協議とのポイントは、アメリカ軍への攻撃が日本への攻撃につながる危険がある場合に限って、武力行使ができるとするものですが、与党側は「越えられない一線がある」として、法案の修正には応じないが、国会答弁で武力行使ができる要件を明確にすると伝えました。結果、維新は「国会答弁では不十分」として、修正協議は決裂しました。

一方、次世代の党・日本を元気にする会・新党改革の3党は、自衛隊を海外に派遣する場合は、国会の関与を強めるように要望していました。与党側は、存立危機事態で、自衛隊を派遣する際は例外なく国会の事前承認を求めることを付帯決議を参議院で行うことや、それを尊重する閣議決定をすることを提案。3党は受け入れ、法案の採決で賛成することを表明しました。

これにより、与党側だけで採決し、賛成をする、いわゆる「強行採決」はなくなりました。

それにしても、中央公聴会や地方公聴会が行われたばかりで、すぐに委員会採決というスケジュールですので、いったい、何のための公聴会なのかわからなくなっています。もちろん、これまでも、公聴会は事実上、形式的なものが多く、公聴会によって法案が修正されたということは記憶にありません。その意味ではこれまで通りではあります。

しかし、憲法解釈をめぐって、違憲性を指摘されている問題が含まれています。閣議決定だけで解釈変更がなされたものがベースにある安保関連法案です。2014年12月の衆議院選挙のときは、安倍総理自らが「この解散はアベノミクス解散だ」と述べていたものの、他の争点についても「すべてにおいて国民に訴えていきたい」としていました。

そもそも衆議院選挙はどんな場合でも「政権選択」の選挙です。そのため、「アベノミクス選挙」と言われようが、与党の全般的な政策が問われています。もちろん、投票してもらう側からすれば、わかりやすく、また、イメージがよく写りたいための、どんな党であっても、旨味のある政策を全面に出すのが当たり前です。

よく、「前回の選挙はアベノミクス選挙であり、安保法案のことは言っていなかった」という声は聞きますが、選挙は一つの政策で判断する信任投票ではありません。その意味で、前回の選挙で何を中心に訴えていたかだけを持って、「もう一度選挙を!」という意見には賛同できません。ただ、安保に関して、正面から論戦をしかけてこなかった政権与党側にも非があることは間違いありません。

ただ、仮に、今解散総選挙が行われても、現段階で政権交代の可能性はありません。自民公明以外の野党の支持率は伸び悩んでいます。NHKの最新の世論調査でも、自民支持率は0.4ポイント増の34.7%ですが、民主支持率は1.1%減の9.8%となっています。これだけの差を埋めるには、「特になし」の36.2%の動向が焦点になりますが、自民支持率そのものが増えているのです。

かといって、安保関連法案の評価がよくなっているわけではありません。NHK調査では「今国会で成立させること」について、賛成は19%、反対45%、「どちらとも言えない」30%となっています。同様の朝日新聞調査でも、「成立させる必要がある」かどうか聞いていますが、「ある」は20%、「ない」が68%です。今国会成立を認めているのはNHK調査とほぼ同じです。賛成は自民支持層と仮定しても、支持層の約半分だけしか「今国会での成立」に賛成していません。自民支持層にも、法案に納得していない人が多いことを示しています。

きょう16日は地方公聴会が行われますが、同日深夜か、17日午前中にも特別委員会の採決が行われる可能性が高い情勢です。17日に参院本会議で採決。ずれ込んでも18日には法案の成立を目指しています。野党は問責決議案や不信任案提出で対抗する構えです。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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