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新幹線で手荷物検査をすべき?

社会 ニュース
6月30日、東海道新幹線「のぞみ」225号(東京発新大阪行き、16両編成)の一両目で、乗客だった男が自ら油の油のような液体を体にかけて、火をつけました。男は死亡しました。また、逃げる際に煙を吸ったと思われる女性も亡くなりました。新幹線は緊急停止しました。

電車と自殺という言葉で思いつくのは、駅のホームや踏切などでの飛び込み自殺ですが、車内で焼身自殺をするというのは過去にないわけではありません。2003年8月に、JR中央線の普通列車(中津川発松本行き、3両編成)で、長野県南木曽町内を走行中に男が焼身自殺をしたということがありました。被疑者死亡のまま長野地検松本支部に書類送検されています。

電車に乗るときに持ち込める荷物(手回り品)は決まっています。JR東海のウェブサイトによりますと、「危険物、暖炉・コンロ、動物、死体、不潔なもの、臭気を発するもの、他のお客さまに危害を及ぼすおそれのあるもの、車内などを破損するおそれのあるもの」は持ち込めないことになっています。

ただし、小量の小鳥、小虫類、初生ひな、魚介類でケースに入れたものは持ち込み可能です。また、小犬、猫、鳩またはこれらに類する小動物(猛獣やへびの類をのぞく)は、タテ、ヨコ、高さの合計が90センチ程度のケースに入り、合わせた重さが10キロ以内のものは有料で持ち込み可能です。

とはいっても、電車に乗る際、海外では手荷物検査をする国もありますが、日本では検査はありません。客自身がそれらを自ら管理することになります。そのため、バックの中に、可燃性のものが入っていても、特にチェックはありません。報道されているように、10リットルのポリタンクであった場合、事前に目視でチェックできるのではないかと思うのですが、駅員のチェックをスルーしたのです。

テレビで見たときは、当初、テロか、あるいは、何かを訴えたいための自殺なのかと思い、自殺関連の電子掲示板を探しましたが、まったく話題になっていませんでした。今のところ、遺書も発見されていません。なぜ、新幹線を止めることになる焼身自殺を図ったのかは、今の所動機は不明です。

焼身自殺といえば、14年9月29日、JR新宿駅南口付近で、集団的自衛権の行使容認や安倍政権への抗議をしていた男が焼身自殺を図ったということがありました。このときは救助が早く、未遂となりました。同年11月11日には、日比谷公園で男が焼身自殺をしました。やはり、集団的自衛権の行使容認と、沖縄県の辺野古・高江の基地親切への抗議が理由でした。焼身自殺はこうした社会的なメッセージと結びつくことがありますが、今回は、こうした背景は、伝えられていません。

いずれにせよ、今回の件で、新幹線の弱点を世界に晒しました。新幹線の「安全神話」が崩れたことを意味します。かといって、新幹線の乗降客のすべての手荷物検査を実施するのもコスト面で考えれば、現実的ではありません。

利用者が多くなければ手荷物検査も現実的になります。たとえば、東京地裁は現在、弁護士以外の人が入る場合、X線や金属探知機による手荷物検査を受けます。これは1997年3月の地下鉄サリン事件以降の処置です。

手荷物検査をしないことは、駅に着けばすぐに新幹線に乗れるという利便性とセットです。ただ、今回のようなリスクと背中合わせということがわかりました。これまで通りに利便性を追求するのか。飛行機のように、手荷物検査を十分に行い、利便性を下げるのか....。

私も新幹線をよく利用します。たしかに、なんらかの原因で電車が止まったことがあります。しかし、ほとんどの場合はダイヤ通りに発着します。今回もその日のうちに運行再開したのは、鉄道マンとして素晴らしいと思います。

今回のような焼身自殺によって緊急停止することはレアケースです。それを前提とした手荷物検査はしてほしくありません。ただし、今回のようなことを想定したJR側の心構えと訓練、設備やマニュアルの改善はできるのではないかと思います。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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