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文科省通知「性的マイノリティに配慮を」

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文部科学省は30日、「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について」と題する通知を出しました。標題は、「性同一性障害」とありますが、内容的には、初めて「性的マイノリティ」にも言及しています。これまで文部科学省は性的マイノリティは触れてきませんでした。その意味でこの通知は、注目に値するものだと言えるでしょう。

今回の通知の中で、「悩みや不安を受けとめる必要性は、性同一性障害に係る児童生徒だけでなく、いわゆる『性的マイノリティ』とされる児童生徒全般に共通するもの」との認識に立っています。

2012年に改定された自殺総合対策大綱でも、「性的マイノリティ」の人々への特別な配慮を求めています。たとえば、「教職員に対する普及啓発等の実施」の中で、「自殺念慮の割合等が高いことが指摘されている性的マイノリティについて、無理解や偏見等がその背景にある社会的要因の一つであると捉えて、教職員の理解を促進する」とあります。現在の日本では、性的マイノリティは、自殺リスクが高い層に入ってしまうのです。

大綱ではさらに、「関係者の連携による包括的な生きる支援を強化する」でも、生活困窮や児童虐待、性暴力被害、ひきこもりと同様に、性的マイノリティの分野でも、より多くの関係者による支援を展開することが重要と位置付けられています。

通知は、こうした自殺対策大綱の内容も踏まえているものです。

最近では、性的マイノリティを表す言葉として「LGBT」という言葉がよく使われます。Lは「レズビアン(女性の同性愛者)」、Gは「ゲイ(男性の同性愛者)」、Bは「バイセクシャル(男女ともに性愛の対象にする人たち)」、T(性同一性障害などのトランスジェンダー)」をいいます。しかし、性的マイノリティは、ほかにもたくさんあります。そして、セクシャリティは動的なものであって、変わりゆく可能性があるとの見方もあります。

もちろん、悩みや不安、生きづらさは、どんな性自認、性的指向でもあります。ゆえに、性的マイノリティだけではなく、ヘテロセクシャル(異性愛者)でもあります。しかし、性的マイノリティが存在することが前提とされているか、いないかでは、学校生活での悩みの質が変わっています。

性的マイノリティがいるという前提ではなかった日本の学校では、当事者が困っている場合、それをなかなか周囲に伝えられません。悩みが、性的マイノリティであることが要因である場合は、そのことを話さならないからです。しかし、言ってしまうことでの周囲の反応が気になり、悩みを増やしてしまいます。

当然ながら、自分の性的なことを言う、言わないは当事者本人で決めることです。トランスジェンダーは隠せないことも多いかもしれませんが、ほかの性自認や性的指向の場合は、隠そうと思えば、隠せる可能性もあります。言うことによって関係性が壊れてしまうのなら、言わないほうがいい、と思う当事者も少なくありません。

通知には配慮すべき事項が並べられています。ただ、学校生活の前提では、児童生徒の中には悩みを抱えながらも、言わないでいる当事者がいることを想像する必要があります。単なる配慮にとどまらず、性的マイノリティの児童生徒をどのように学校側が受け入れ、かつ、差別や偏見の対象としないことが望まれるのではないでしょうか。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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