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女性器の3Dデータを配布

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自分自身の女性器の3Dデータを配布したとして、「わいせつ電磁的記録媒体頒布罪」の疑いで、ろくでなし子さんが逮捕された事件で
7月18日、拘留に対する準抗告を東京地裁が認めました。そのため、ろくでなし子さんが釈放されました。
続いて、都内の弁護士事務所で記者会見が開かれました。会見の詳細は「おたぽる」の記事(「改めて逮捕の不当性を表明」 http://otapol.jp/2014/07/post-1284.html )が詳しいです。

警視庁は7月12日、「わいせつ電磁的記録媒体頒布罪」の疑いで、ろくでなし子さんこと、五十嵐恵容疑者(42)を逮捕しました。
自身の女性器の3Dスキャンデータをインターネット上に公開したというものです。
ろくでなし子さんは漫画家で芸術家。自らの女性器を型どりしたアート「デコまん」は話題となりました。

事件の発端は、「女性器は手足と同じであり、わいせつだとは思わない」との信念を持っているろくでなし子さんが、
女性器をかたどったボートを作ったことです。そのプロセスでクラウドファウンディングを利用し、資金を集めました。
寄付をした人には女性器の3Dスキャンしたデータを配りました。そのデータは「作品の素材」だといいます。

争点は、不特定の者に対して、インターネット上に公開し、ダウンロードできる状態にした「自身の女性器の3Dスキャンデータ」がわいせつか?です。
18日の釈放後に会見をしましたが、同席した山口貴士弁護士によると、わいせつ基準にはチャタレイ判決があると言います。

イギリスの作家D・H・ローレンスの作品「チャタレイ夫人の恋人」の日本語訳に露骨な性描写があったことを知りながら出版したことで、
翻訳した作家と出版社が起訴されました。最高裁判所が以下の「わいせつの三要件」を示しました。

1)いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、
2)かつ普通の正常な性的羞恥心を害し、
3)善良な性的道義観念に反するもの

チャタレイは小説でしたが、今回は3Dのスキャンデータです。作品(今回の場合は「作品の素材」)が、通常人から見て「性欲を興奮」または「性欲を刺激している」のかが、
あるいは「性的羞恥心を害し」たかどうか。さらには「善良な性的道義観念に反したのか」を判断することになります。

わいせつと表現との関係が問われたことは過去にもあります。

松文館事件(2007年)では、成人向け漫画の単行本「蜜室」を生殖器の部分を40%網掛け修正しましたが、わいせつ物と認定しています。
メイプルソープ事件(2008年)では、一審と二審では、被写体の男性器が露出した写真が掲載されていたため、輸入禁止とされました。
しかし最高裁では「写真芸術の全体像を概観するもの」と判断。最高裁でわいせつ物認定が取り消された初判断となりました。

本人から女性器だけを切り離した場合、その女性器の「形」が問題となると思われます。
個人的には、「形」そのものが、周囲の文脈から切り離された場合、わいせつではないと思えるのです。
その「形」がわいせつになるためには、そうなるための「物語」が必要です。ボートは「わいせつ」と結びつく物語としては弱いのではないかと思えるのです。

わいせつというのは時代によって変化しています。法によりきちんと定義づけれにくいものです。
ろくでなし子さんはまだ起訴されたわけではないので、今後、どのような争点が持ち上がるのかは未知数です。
みなさんはどのように考えるでしょうか。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]

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