終わらない3.11 | NewsCafe

終わらない3.11

社会 ニュース
東日本大震災で復興は進んでいるのでしょうか。三陸鉄道の北リアス線(久慈ー宮古間)と南リアス線(釜石ー盛間)の全面開通のニュースは、明るいニュースでした。NHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」で知られることになった三陸鉄道の復活は、沿線住民にとって悲願達成でありました。

三陸鉄道は、明治三陸津波で陸の孤島となったことで鉄道の建設が始まりまりました。当時の物流は鉄道が中心だったためです。一時期は国鉄の路線でしたが、財政悪化により、第三セクターでの開業となったのです。当初は黒字でしたが、次第に慢性的な赤字経営となっていました。そんな中で、東日本大震災が起きたのです。赤字路線とはいえ、沿線住民にとっては馴染みの路線です。震災から5日目に陸中野田ー久慈間だけでも再開したことは、復興への希望を見ることができたでしょう。

しかし、三陸鉄道の開通で、岩手県沿岸部が鉄道でつながったわけではありません。北リアス線の宮古駅と南リアス線の釜石駅を結ぶのはJR山田線ですが、復旧の見通しがありません。この区間が現在、代替バスが走っています。また、沿岸部から内陸部へ移住している人も多く、乗客を確保できるかどうかは不透明です。どんな路線が住民にとってよいものなのかを話し合う人たちもいます。

津波被災地では、行方不明者がまだ多数います。統計上は、頭蓋骨が見つからなければ、遺体として計上しないことになっています。そのため、頭蓋骨以外の人骨の発見では行方不明のままです。死亡と見なすこともでき、失踪宣告を出せば、死亡扱いとなり、たとえば、生命保険が下りたりする。もちろん、あきらめ切れずに探し続けている人もいます。

21日にも宮城県名取市の閖上港で乗用車が沈んでいるのが見つかった。朝日新聞によると、中からは人骨と思われる骨を発見した。福島県南相馬市の神社の交通安全ステッカーが貼られていた。給油カートや名刺もありました。頭蓋骨が見つかれば、宮城県内では1年2ヶ月ぶりの震災犠牲者の遺体が発見されたことになります。

名取市ではかさ上げの計画があり、元の土地を土で埋めることになる。しかし、遺体捜索がまだ不十分と思っている遺族にとってみると、このままかさ上げをしてしまうと、家族が見つからないことになるとの思いがまだある。このニュースは、遺体捜索を続けている遺族たちには"朗報"となったはずだ。

一方、東京電力・福島第一原発は汚染水処理のトラブルが相次いでいます。14日には、普段は使わない仮設ポンプ4台が稼働し、約203トンの汚染水が本来の送り先ではない建て屋に流れ込んでいた。汚染水には1リットルあたり数千万ベクレルのセシウムとβ線を放射性物質が含まれていたという。原因は警報の故障と、閉じておくはずの弁が空いていたというヒューマンエラーが重なったのです。

またまだ東日本大震災は終わっていないことを実感します。そんな中で、筆者らが編者になった「震災以降 終わらない3.11 三年目の報告」(三一書房)を出すことができました。フリーライターやジャーナリスト、写真家、新聞記者、学生ら24人が執筆に参加しています。執筆者たちがこだわりをもって継続取材している人たち、現場のルポ集となっています。風化は絶対的なものです。決して派手ではないのですが、忘れないために取材し続ける人たちの仕事には頭が下がります。

正直言えば、私は「震災は3年経てば、ある程度復興への道筋が見えるだろう」と思っていました。しかし明るい兆しはほとんど見えません。人口流出が激しい地域があるばかりではなく、被災地を訪れる人が減り、仮設商店街の客足が少なくなっています。ボランティアでも、仕事でも、観光としてでも、被災地を訪れてほしい。それができない場合でもできるけの応援をしてほしいと思っています。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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