英語圏において【Pay it forward】という言葉がある。日本語訳では、「恩送り」という意味だ。「恩」とは、めぐみ、いつくしみ。誰かから受けた恩を自分は別の人に送る。そして、その送られた人がさらに別の人へ渡す。そうして「恩」が世の中をぐるぐる回ってゆくことを「恩送り」という。2000年製作のハリウッド映画「ペイ・フォワード/可能の王国」で恩送りの概念が再認識され、社会現象化したのはもう十数年前の話。十数年の時を経て、アメリカの男の子の素晴らしい行いが今、話題を呼んでいる。
マイルスくんの父は米陸軍軍曹であり、彼が生後5週間頃にイラクで亡くなっていた。「生後5週間」といえば、まだ1人で立つこともままならず、ましてや父の記憶はないに等しいだろう。しかし、この出来事の後、彼はインタビューを受け、父の存在について「とてもいい人で、本当に面白い人なんだ!!」と語っている。マイスルにとって、戦地という命がけのフィールドで仕事をしていた父の姿は、尊敬すべき人物であり、また、憧れの存在でもあるのだろう。さらに、思いもよらぬギフトを受け取ったフランク中佐は「信じられない行動だ。この手紙は毎日見返しているよ」と語り、深く感心していた様子だ。マイルスくんの手紙の中には、冒頭に話した「Pay it forward=恩送り」が使われている。彼は、父から貰った愛情と幸福を、フランク中佐に形を変え「恩送り」したのだ。