都知事選「すベて雪のせい」なのか? | NewsCafe

都知事選「すベて雪のせい」なのか?

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東京都知事選は、都議会与党の自民・公明が推す舛添要一氏の圧勝に終わりました。「脱原発統一候補」が立てられなかったことで、舛添氏が勝つとしても、「脱原発」派とされた、宇都宮健児氏と細川護煕氏の票を足してどちらが多いのか?といったことが見所の一つでもありました。しかし、2人の票を足しても、舛添氏に勝てませんでした。少なくとも現段階では、「脱原発」というキーワードだけでは、都知事選での勝利はないことを示した結果でした。

選挙戦中、小泉純一郎・元総理の応援演説には多くに人が集まりました。そのため細川支持者の中には、「舛添氏に勝てるかもしれない」と思った人もいたようです。もちろん、演説に人がどれくらい集まるのかは一つの指標になります。しかし、それだけで判断できるものでしょうか。

新党日本代表の田中康夫氏が初めて長野県知事選に出馬したときのことを思い出してみましょう。演説や集会に集まった人数はそれほど意味がないこともわかります。2000年の長野県知事選ではミニ集会ばかりで、多くて20人ほどしか集まりません。しかし結果は当選したのです。舛添氏の演説を撮った写真がTwitterで出回りました。ほとんど聞いている人がいないのです。

ラストサンデーと言われた2月2日の銀座の遊説には、多くの人が集まりました。いわゆる主要4候補がそろってパフォーマンスをしたのです。そのとき、細川支持者の中の声として、「最も人を集めたのは細川さんの演説の時だ。細川さんは勝てる」と言っていた人がいました。

私もその場にはいました。たしかに、細川さんのときに多くの人がいましたし、交通整理をする警察官が最も動いたピーク時間でもあったような印象でした。しかし、細川氏の前に舛添氏が演説をし、応援に安倍晋三総理が駆けつけていました。これらの動員もかなりものですし、舛添氏と細川氏の両方を聞いていた人も多いように見えました。

また、日曜日の昼間の銀座に来ている人はどんな人たちでしょうか。都民とは限りませんし、階層から想像すると、中流以上のイメージです。その階層に、アベノミクスで恩恵を受けた層と合致し、決定的な不満が高まっているようには思えません。その意味では、「話題の都知事選のさなか、安倍総理と小泉元総理の演説が見れる」といったノリで足を止めた人もいるのではないでしょうか。

そんな想像をしていると、「細川さんが人を集めたんだ」と声高に叫ぶ細川支持者を見ると、選挙というのを誤解しているようにも見えます。私の場合、地方選の取材が経験的には多いのですが、選挙対策事務所からすれば、投票箱に名前を書いていれるまでは安心しないものです。いかに「勝ちムード」を作らないかが鍵なのです。気が緩んでしまうからです。

舛添氏は自民、公明、そして労働組合の連合の支持を取り付けました。ということは支持団体が組織の引き締めにかかります。名簿を作り、確実に「舛添」と書く人たちをリストアップし、その人数を増やしていくのです。そのため、「誰が確実に投票してくれるのか?」と具体化する作業を地道にやるものです。

組織戦を古いといったり、ないがしろにする風潮もあったりしますが、これがなかなか難しいものです。顔見知りの人に政治的にはたらきかけるのは相当大変です。それが日常の人間関係を反映します。「ネット選挙」の時代ですが、今回の結果は、こうした地道な努力の結果の成果とも言えます。Twitterで「舛添支持って見かけない」というつぶやきを見ましたが、わざわざ表明はしないものです。支持表明をするのは、ネットの中でも、政治的な関心がある「コア」ユーザーくらいです。

一方、多くのメディアで「主要4候補」の扱いをされた田母神俊雄氏は、石原慎太郎・元東京都知事やデヴィ夫人などが応援演説をしていました。そのこともあいまって、得票を伸ばす健闘ぶりを見せた。そして、各社の出口調査では20代からの得票が多くなっているのも特徴です。女性票も集めたのですが、「専業主婦に優しい政策を訴えているのは田母神さんだけでした」と言っていた女性がいました。

もちろん、大雪のために投票率が下がったことで、組織戦をしている候補が有利に働いたことは間違いないでしょう。「すべて雪のせいだ」と言いたくなる気持ちも分からなくはありません。しかし、本当に雪のために「脱原発」票が減ったとしたら、「脱原発」を願う人々がその程度の思いでしかないということになります。「脱原発」は社会のあり方を変えるものだとよく言います。だからこそ、社会のあり方を提示して、その上での「脱原発」という政策提言をしないといけないのではないかと思った、今回の選挙でした。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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