盲愛の成れの果て…(前編) | NewsCafe

盲愛の成れの果て…(前編)

社会 ニュース
「NewsCafeユーザーによる犯罪コラム」第五回
新橋ストーカー事件
「なぜ彼の恋は殺意に変わったか」

・相次ぐストーカー被害、法改正後も歯止めかからず

今年6月に「ストーカー行為等の規制等に関する法律」、いわゆるストーカー規制法が改正されたのは記憶に新しい。長崎県西海市、神奈川県逗子市でストーカー殺人事件が相次いだことを受けての、言ってしまえば"対処療法"だった。執拗なメール送信を"付きまとい行為"として対処できること、被害者が住む地域の警察だけでなく加害者の住所地の警察も警告・禁止命令を出せるようにすることなど…。過去の事件に見られた警察の怠慢や、警戒が後手になる弱みを解消する内容が盛り込まれた。
しかし、そうした動きをあざ笑うかのように起こったのが、先月の「三鷹ストーカー殺人事件」である。東京都三鷹市に住む女子高生が元恋人に殺害されるというショッキングな事件は、一般市民に「まだ規制が甘い」と思わせるのに十分であった。

<ストーカーと被害者の関係性を探る>

"ストーカー被害"を被る危険性は誰にでもある。法での規制が追いつかない以上、各人が自衛に努めなければならない。そこで注目したいのが「ストーカーと被害者の関係性」だ。
警察庁統計を見ると、両者は「現在または過去の交際相手」が51%と約半数を占めており、さらに「現在または過去の配偶者」も14%と少なくない。つまりストーカー関係被害の65%は、もともと深い間柄の相手によるものということだ。可能ならば話し合い、諭す、仲が拗れるに至った原因を見直す、関係性を再構築する、共通の知り合いに相談するなどの対策を打てる可能性は残されている。
一方、まったく面識のない相手からの犯行は約1割…こちらは被害者の打つ手はないに等しい。早急に警察に相談するしかない。
では、そのどちらにも当てはまらないケースとは何なのか。データでは職場関係者が約1割、その他の知人が約1割となっていた。ここで思い出されるのが「新橋ストーカー殺人事件」…通称「耳かき店員殺害事件」である。

<ない交ぜの慕情と憎悪…その結末>

2009年8月、東京都港区で耳かき専門店の女性従業員(21歳)とその祖母(78歳)が襲われる事件が発生した。ふたりは顔や首などを刃物で刺され、祖母はその場で死亡、女性従業員は意識不明の状態で病院に搬送されたが1カ月後に死亡。逮捕されたのは事件現場にいた41歳の会社員・林貢二…被害女性が勤める耳かき専門店の常連客であった。
当時、事件概要とともに大きく報道されたのが、この「耳かき専門店」の存在やシステムである。若い女性と会話しながら膝枕で耳かきしてもらうというサービスがメインだが、店舗によってはボディータッチやマッサージが加わり、準風俗色が濃くなる。被害女性は多い時には1カ月に65万円の収入を得ていたといい、この"疑似恋愛商法"にスポットが当てられた。
林は被害女性を目当てに店に通い200万円以上を費やすが、店外で会うことを要求したとして店を出入禁止になる。その後は女性にストーカー行為を繰り返すようになり、ついには自宅を強襲、応対した祖母までも巻き込む惨劇を起こした。
前述の警察庁統計によると、ストーカーの犯行動機は「好意の感情から」が54%、「好意の感情が満たされなかったことに対する怨恨の感情から」は38%…9割超の事件が"過ぎた愛情"から起こっていることがわかる。しかし事が殺人となれば「好意の感情から」では済まされない。
NewsCafeでは「なぜ彼の恋は殺意に変わったのか」というテーマで、ユーザーのコメントが募集されたようだ。当記事では賛同の多かった意見や印象的なコメントを紹介していきたい。
※コメント総数…130件

まずは賛同が多く集まったコメントから掲載していこう。無関係の祖母に手をかけている点、裁判員裁判にかけられた上で無期懲役刑が確定したことへの異議…。加害者のストーカー心理を考察する以前に、人ふたりの命の重さに言及する声が多く届いている。

■判決に違和感あり。ふたり死んだんだぞ。[40代男性]

■自分の感情を押し付け、うまく行かなければ恨みを抱く…自分勝手もいいところだ。恋愛はうまく行かない事の方が多いし、多くの人はそれを糧にして前に進む。それを、袖にされたからといって殺意を抱くなどと、結果実際に殺人を犯すなどと、卑劣きわまりない。被害者の職業が、もし裁判の判決に手心が加わった要因ならば、被害者の人権はつくづく無視されたという事だ。しかも命が奪われたのは彼女の祖母の方で、加害者の動機など、全く判決に考慮されてはいけなかったのだ。いつも思う。この国の裁判は被害者よりも加害者に優しいと…。[40代女性]

■人をふたりも殺しておいて極刑には当たらない・…? ふたりに限らず、人を殺したら死をもって罪を償うべきではないだろうか? どんどん凶悪化していく犯罪に対して刑罰がゆるすぎるのも原因のひとつではないだろうか? 無期懲役の極悪非道の罪人を何故私達は税金という名で養っていかなければいけないのだろう? 被害者遺族もこの加害者を養う訳だ。なんて残酷な仕打ちを被害者は受けなければいけないのか?[50代女性]

一方、少数ではあったが被害女性の"仕事内容"が事件の一因であることは否めないという意見も届いている。

(続きは後編へ)

[文・能井丸鴻]
《NewsCafeコラム》
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