「学童保育」の壁 | NewsCafe

「学童保育」の壁

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知り合いのキャリア女性は「子育ての為の会社の制度を利用して午後3時までの時短・早引け勤務」を選択している。能力も十分な女性であり「時短勤務内で役割をキチンとこなしている」ので、同僚たちの理解もあり「飲み会に参加できない…」が唯一の問題点のようである。本人に聞くと『幼稚園時代のほうが「いざとなれば保育園が夜の9時まで預かってくれる」ので楽だった。小学生になるとようやく見っけた学童保育も午後6時までが原則である。小学生で「鍵っ子」と言うわけにもいかず、6年生までが大変。当分時短勤務をせざるを得ない』とのことである。「女性の社会参加・幹部職への登用」と言うアベノミクスの経済活性化?策で女性支援策としての「保育所の拡充→待機児童をゼロにする施策」が注目を浴びている。

横浜市の女性市長が『2010年に全国最多の1552人の保育所待機児童を抱えていたが株式会社などを活用した認可保育所の増設やきめ細かい情報提供に取り組んだ結果、2013年4月1日時点の待機児童がゼロになった』と発表した。政府は「株式会社による保育所の拡充」を全国のモデルにしようとしている様である。「果たして民間企業に安定的な運営はできるのか?」などの意見はあるが「100年間河が澄むのを待つ」よりましと思うのである。そんな「待機児童ゼロ」の掛け声の下で隠れているのが「学童保育施設不足問題」である。

識者は『学童保育施設は共働き世帯の小学生以上の子供に放課後の生活の場を提供する施設のことである。主に小学1年生~4年生を対象に午後7時ごろまで開館しているところが多い。子供はおやつを食べたり・宿題をしたり…。80%が公立。運営費の50%を国・都道府県・市町村が等分で負担、50%を利用者が負担し、利用者負担はおおむね4000円~8000円である。絶対数が足りず「潜在的な学童保育への待機児童は50万人」と言われる。同一年の児童は概ね120万人×3学年=360万人だから小学3年生まででも「約15%が待機児童」なのである。「子供が小学生になると仕事が続けられなくなる」が現実で「いくら保育所を増やしても女性の働きは拡大しない」のである。巷間「小1の壁」と言われている』と言う。厚労省の調べでも「学童保育所を整備していない自治体も多く、最初から入所をあきらめる人も多い。保育所を終えた児童のうち学童保育所に入れるのは60%程度。子供が小学生になると仕事を辞める女性が大量に発生している」と言う実態が明らかになっている。

女性の労働力を見ると「30才代~40才代が極端に低い」のは、このような子育ての保育環境が原因と思えるのである。識者は『放課後の教室の解放を嫌がる学校も多い。また学童保育の職員の年収は150万円程度と言われている。この金額では「なり手」がいないのである。また株式会社による運営はほとんどの自治体が認めていない。場所・人材…すべてに問題があるのは保育所と同じである』と言う。保育所だけの整備は「小1の壁」をかえって高くするのである。雇用均等法が施行されて約40年になるが「女性がビジネスの場で頑張るにはまだまだ障壁がある」のである。「育休を3年」もよいが、もう少し「女性の身になった取組みが望まれる」のである。

[気になる記事から時代のキーワードを読む/ライター 井上信一郎]
《NewsCafeコラム》
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