もうすぐ3月11日 | NewsCafe

もうすぐ3月11日

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もうすぐ3月11日です。東日本大震災から2年目を迎えることになります。私は2月、被災地の取材を続けていました。3回忌の法要が各所で営まれています。2月の中旬にあった3連休には法要が集中しました。また、先日は、児童74人、教職員10人が亡くなった石巻市の大川小学校の遺族らが参列した法要がありました。

最近の被災地で耳にするのは「2年目が過ぎると、ますます震災、復旧、復興に関心がなくなるのではないか」という声でした。その切実な訴えは、展望が見えないことといらだちもは見え隠れしました。撤退していくボランティア団体も増えていきました。たしかに緊急支援という時期ではないのですが、いつもいた人たちがいなくなるのは置いて行かれるような寂しさがあるのでしょう。

沿岸部を歩くと、まだ、道がきんちんと完成していないところが多くあります。浸水エリア、およびその周辺に住民が戻ってくる気配はありません。行方不明者の捜索はまだ続いています。先日、文科省の福井照・副大臣が大川小学校跡を視察に訪れ、「(行方不明児童の捜索を)諦めないことが大切」と遺族たちに話をしていました。まだ、震災は終わっていないのです。

被災地の復興商店街では訪れる客が徐々に減って来ています。内陸部に引っ越しをする人もいます。また、被災地を観光で訪れる人や被災地でのボランティア活動をする人たちが減っているのです。いわば、市場が小さくなりつつあるのです。先日、ある飲食店で聞いた話では、当初よりも客の数が減って来ており、将来への不安を抱えているといった様子でした。もともと、高齢化している地域でしたが、震災でさらなる高齢化が進んでいるのも影響しているようです。

もちろん、明るい話もあります。私が取材した被災者の中には、新しい命が誕生してきています。先日、ある被災者を仮設住宅に約1年ぶりに訪ねると、見たことのない赤ちゃんが部屋の中にいました。事前に知らされていなかったのは、「びっくりさせようかな」と思ったとのことでした。復興関連の仕事が見つかり、地元で頑張っていこうと決意をする人も出始めています。今春卒業する高校生の中には、積極的に地元に残って、家族を支えようとする人もいます。

ただ、まだまだ被災地は複雑な心境を整理できない人たちが多いことはたしかです。「被災格差」も目立つようになりました。家を失ったか、家族を失ったかなど被災の程度で受けている心理的、経済的なダメージの差が出て来ているのです。ダメージが大きい被災者ほど、2年目の3月11日が過ぎたら、震災は忘れられ、訪れる人が減り、取り残されるのではないかという不安があるような気がします。

もちろん、みんなが忘れないような努力をしても、日々の生活のほうが大変ですし、いつも被災地のことばかり考えていられない現実もあります。「風化」は止められないとは思います。生活問題を抱えているのは被災地だけではないはずです。しかし、人口減少・高齢化という被災地の現実は、将来の日本の縮図のような気がします。その意味でも、今後も一年に一度ぐらいは、震災のことを思い出す機会を作ってみてはどうでしょうか。そして、一度は足を運んでほしいと思っています。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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