日本語を習い始めた外国人が最初に驚く点として「代名詞の多さ」がよく挙げられる。なかでも一人称代名詞の数には戸惑うのだそうだ。ざっと思いつくだけでも、私(わたし)、私(わたくし)、僕、俺、自分、儂…。現在では使われないような古風な言葉、地方独特の言葉まで含めると、おら、おいら、おいどん、我、わらわ、我輩、小生、拙者、某(それがし)…と、枚挙に暇がない。時代小説などを教材に選んでしまった外国人は、さぞかし困惑することだろう。漢字と平仮名、表記を変えるだけでも趣が変わってくる。
この多様性は日本語の面白さだ。しかし「自分の名前」を一人称として使う行為については、多言語圏の人には非常に奇異にうつるらしい。確かに、例えば英語圏ではどんなに小さな子供でも自分を「me」と表現する。日本人の間でも、これには賛否両論あるはずだ。
そこでNewsCafeのアリナシコーナーでは「自分のことを名前で言うのってアリ?」という調査を実施した。結果とともにさまざまな意見をご紹介しよう。
【アリ…17.5%】
■家族・親類、気の置けない間柄などの前限定で使います。
■本人の自由でしょ!
■つい言っちゃってる。
■2~3歳くらいまでならあり。
■自分のこと昔から名前でいいます。否定する人はかわいくない。
■人前では言わないが、旦那君とふたりだけなら。
■家では。私なんて気色悪くて今更言えない。外では、カレシの前でも私。
■姪が生まれてから、時々言っちゃいますね…。
■「○○ちゃんトイレ行ってこよーっ」って言う(笑)。
■環境・相手で必要でしょう。
【ナシ…82.5%】
■大人がやるのは、みっともない。
■小さい子はいいが「あゆ」「うの」…って名前で言う芸能人は嫌。
■本人はかわいいつもりだろうが、かわいくないから(笑)。
■47歳にもなってもいるよ。会社に。気持ち悪っ!
■方言以外で一人称が「ウチ」もナシ。バカっぽいだけで、カワイくないぞ(笑)。
■会社の新人女子にいたが、言わせないよう注意した。
■なんかむかつくけど人による。
■3歳の孫が自分の事を名前で言うのはウルトラカワイイぞ。
■聴いてる方は恥ずかしいから…。
■丸い頬っぺたした小さい子だからかわいいんだよ。
8割超の人が【ナシ派】に投票と、かなり圧倒的。【アリ派】でも、TPO・年齢・人柄によるとした上でアリ、もしくは「ナシだとは思うが、つい…」というコメントが多かった。大半の人が「自分のことを自分の名前で呼ぶのは子供っぽい」印象を受けている。心理学的には、自己愛が強いと評価することもあるという。
国産フィクション、特に漫画やアニメでは、一人称代名詞でキャラクターの役割を表現している場合が多い。破天荒なキャラクターなら「俺」、年老いたキャラクターは「儂」、という感じだ。ギャグ漫画の名作、赤塚不二夫の「おそ松くん」から例を挙げれば、外国かぶれキャラ"イヤミ"の一人称は「ミー」、銃を撃ちまくる警察官の一人称は「本官」とわかりやすい。自分を自分の名前で呼ぶことに、その人なりのキャラクターアピールがあると判断されるのは自然なことだろう。そして、その"幼い"アピールを良しとしない人が多いという結果になった。
[文・能井丸鴻]
《NewsCafeアリナシ》
page top