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九州の雄、復活へ

スポーツ ニュース
J2プレーオフ決勝で勝利し、J1昇格を決めた大分トリニータ。その昇格報告会が24日夜、サポーター、選手ら約3千人が集まり大分銀行ドームで開かれ、全員で昇格を祝った。奇跡のJ1昇格に導いた田坂和昭監督。「選手たちには心で動け、心で走れ、と言ってきた。プレーオフで、気持ちのあるプレーを見せてくれた」と選手をたたえた。ジェフ千葉の猛攻を耐えて耐えて耐え抜いて後半41分のカウンターでのJ1への扉をこじ開けるゴール。喜びも一入だっただろう。
ここまではまさに波乱万丈だった。2005年季中でブラジルの若きシャムスカ監督を起用。17位と低迷した大分はベテラン、若手の選手掌握術に長けるシャムスカ監督により、奇跡の巻き返しを見せ、シーズン11位で終えた。06、07年は中位にとどまったが、08年は金崎夢生らの台頭により快進撃を見せ終盤まで優勝争い。結局4位だが、ナビスコ杯は清水を決勝で破り優勝。九州チームで初の栄冠獲得の快挙だった。09年は優勝またはACL出場を掲げたチームだったが、シーズン前のコンディショ調整の失敗、ホームのスタジアムの芝の問題やらで怪我人が続出。14連敗などあり、シャムスカ監督は季中で交代。リーグ戦4試合を残しJ2降格が決まった。さらにそれ以上の問題が露呈。不安定な経営が続いていたが、メインスポンサーの撤退、観客動員の減少などで累積赤字は膨らみ、債務超過が5.5億円。シーズン最後の3試合は開催不能の事態になりJリーグ基金から緊急融資で乗り切った。しかし最終的に債務は11.8兆円。チームの生みの親といわれた溝畑社長。しかし10億円前後の事業でこれだけの負債は溝畑経営の重大な責任だったが、さっさと退任した。
負債の中で5億円をJリーグ基金から借り入れ、今年1月2億円を返済。しかし今季中に残高3億円を返済できなければ、例えJ2で優勝しても昇格できない枷が課せられた。5月、3億円のうちの1億円を目標に、市民・団体などから1口5000円、上限なしの寄付を募る「J1昇格支援金」の募集を開始。田坂監督はじめ選手らが街頭に立った。もともとは平松元知事の肝いりで市民チームとしてスタートしたトリニータ。県民、市民のトリニータに対する思いは熱く支援金は、最終的には約1億2,380万円に。これに地元経済界が支援約1億920万円、大分県等の行政が1億円。支援の総額は約3億3,300万円となり10月12日に基金からの融資を完済。13年度からのJ1昇格が可能となり、今回の昇格に間に合った。
清水時代にはコーチとして岡崎真司、本田拓也、大前元気などを育てた実績をもつ田坂和昭は11年から大分の監督に就任。チーム弱体化、昇格権を獲得しても昇格できるかわからない状況で、選手のモチベーションは最悪。田坂はまず選手に規律を守ることを徹底させた。そして戦術の浸透や選手の成長もあり、今季6位に滑り込んだ。昇格争いでは失うもののない強さを発揮し見事勝ち抜いた。降格後もチームに残り昇格の原動力となった森島はインタビューで支援してくれた行政や県民に感謝の言葉を述べた。「来季は厳しい戦いになるが、今季やったことを生かして頑張る」と田坂監督は決意を述べた。FORZA!!


[ビハインド・ザ・ゲーム/スポーツライター・鳴門怜央]
《NewsCafeコラム》
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